「未経験からインフラエンジニアを目指しているが、ネットで『やめとけ』という声を見て不安になっている」——。そんな悩みを抱える方は少なくありません。確かに、インフラエンジニアの仕事には厳しい側面もあります。しかし、その一方で高い将来性と魅力も兼ね備えた、やりがいのある専門職です。
この記事では、「やめとけ」と言われる理由を深掘りし、その上でインフラエンジニアが持つ本質的な価値と、未経験から成功するための具体的なロードマップを徹底解説します。ネガティブな情報に惑わされず、客観的な事実に基づいて自身のキャリアを考える一助となれば幸いです。
なぜインフラエンジニアは「やめとけ」と言われるのか?
まず、インフラエンジニアという仕事がネガティブな文脈で語られる理由を整理しましょう。主に以下の3つの点が「きつい」「やめとけ」と言われる要因となっています。
緊急対応と不規則な勤務体系
インフラエンジニアの重要な責務の一つが、システムの安定稼働を守ることです。サーバーやネットワークに障害が発生すれば、昼夜を問わず緊急対応が求められます。特に、システムの監視・運用を担当するキャリアの初期段階では、24時間365日のシフト制勤務(夜勤含む)や、休日出勤が発生しやすい傾向にあります。
経験の浅いうちは急な呼び出しやマニュアル通りでは解決できない問題にストレスを感じてしまう方も多いでしょう。オンとオフをはっきり線引きして働きたい方には、インフラエンジニアは合っていない可能性が高いです。
ただし、全てのインフラエンジニアが常に夜勤や休日出勤をしているわけではありません。ある現役エンジニアは「4年間で夜勤は2日、休日出勤は10日程度」と語っており、キャリアを積んで設計・構築といった上流工程に進むにつれて、勤務体系はカレンダー通りに近づいていくのが一般的です。
覚えるべき技術範囲が広く、継続的な学習が必須
インフラエンジニアが扱う技術は、サーバーOS(Linux/Windows)、ネットワーク、セキュリティ、データベース、そして近年ではクラウド(AWS, Azure, GCP)と非常に広範囲にわたります。IT技術の進化は速く、一度知識を身につければ安泰ということはありません。常に新しい技術を学び続ける姿勢が求められます。
特に未経験からこの世界に飛び込む場合、最初に覚えるべきことの多さに圧倒され、「きつい」と感じてしまうことがあります。 この「学び続ける」という特性を負担と捉えるか、自己成長の機会と捉えるかで、仕事への向き合い方は大きく変わるでしょう。
裏方仕事で成果が見えにくい
インフラは「動いていて当たり前」の存在です。問題なくシステムが稼働している間は、その働きが直接的に評価されたり、感謝されたりする機会は少ないかもしれません。アプリケーション開発者のように、目に見えるプロダクトをリリースしてユーザーの反応を得るといった華やかさとは対照的です。
縁の下の力持ちとして、社会や企業の活動を根底から支えることにやりがいを見出せるかどうかが、この職種への適性を測る一つの指標となります。
それでもインフラエンジニアを目指す価値がある理由
ネガティブな側面がある一方で、それを補って余りあるほどの大きなメリットが存在します。インフラエンジニアが依然として魅力的なキャリア選択である理由を見ていきましょう。
高い需要と将来性
現代社会において、ITインフラは電気や水道と同じく、ビジネスに不可欠な基盤です。企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進やクラウドサービスの普及により、インフラエンジニアの需要は増え続けています。
実際に、情報処理推進機構(IPA)が公表した「DX白書2023」によると、DXを推進する人材の量について83.5%もの企業が「不足している」と回答しており、インフラを支える人材の確保は各社の急務です。
さらに、経済産業省は2030年にはIT人材が最大で約79万人不足すると試算しており、インフラエンジニアは今後も極めて将来性の高い「売り手市場」の職種であり続けると予測されています。
安定した高水準の年収
インフラエンジニアは、その専門性と需要の高さから、比較的高い年収を得やすい職種です。厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、インフラエンジニアが含まれる「システムエンジニア(基盤システム)」の平均年収は約660.4万円です。
これは、日本の平均年収約443万円や、プログラマーなどの「ソフトウェア作成者」の平均年収約455万円と比較しても高い水準にあります。スキルや経験を積むことで、年収1000万円以上を目指すことも十分に可能な世界です。
未経験からでも挑戦しやすいキャリアパス
インフラエンジニアは、未経験者を採用して育てようという企業が多いのも特徴です。求人サービス大手dodaのレポートでも、サーバーエンジニアの求人動向について「採用枠の増加に伴い、未経験・微経験者採用へ舵を切る企業も増えている」とされています。
多くの未経験者は、まず「運用・保守」といった下流工程からキャリアをスタートし、実務経験を積みながら「構築」「設計」といった上流工程へとステップアップしていきます。この段階的なキャリアパスが確立されているため、未経験からでも着実にプロフェッショナルを目指すことが可能です。
未経験からインフラエンジニアになるための具体的な学習ロードマップ
では、未経験からインフラエンジニアとして成功するためには、具体的に何をすればよいのでしょうか。ここでは、3つのステップに分けて解説します。
ステップ1:学習方法を選択する
まず、自分に合った学習方法を見つけることが重要です。主な選択肢は「独学」と「ITスクール」の2つです。
- 独学:書籍やオンライン教材を利用し、自分のペースで学習を進めます。最大のメリットは費用を抑えられる点ですが、疑問点を自力で解決する必要があり、挫折しやすいというデメリットもあります。強い意志と自己管理能力が求められます。
- ITスクール:体系化されたカリキュラムと講師のサポートにより、効率的に学習を進められます。費用はかかりますが、未経験者向けの研修が充実しており、転職支援まで提供してくれるスクールも多いです。例えば、のように、受講料無料でCCNA資格取得と就職をサポートするスクールも存在します。
ステップ2:必須となる3つのコアスキルを習得する
インフラエンジニアとして働く上で、土台となる3つの技術分野があります。これらをバランスよく学ぶことが、市場価値の高い人材になるための鍵です。
- サーバー (Linux):企業のサーバーの多くはLinuxというOSで動いています。コマンドラインでの操作やサーバー構築の知識は、インフラエンジニアの基本中の基本です。
- ネットワーク:サーバー同士やインターネットとの通信を支える技術です。ルーターやスイッチの設定、IPアドレスの仕組みなど、データの通り道を理解することは不可欠です。
- クラウド (AWS):物理的な機器を持たず、インターネット経由でITリソースを利用するクラウドは、現代のインフラの主流です。特にシェアNo.1のAmazon Web Services (AWS) の知識は、多くの企業で求められています。
ステップ3:市場価値を高める資格を取得する
未経験者にとって、資格は「学習意欲」と「基礎知識」を客観的に証明するための強力な武器になります。まずは以下の3つの入門〜中級資格の取得を目指しましょう。
ネットワーク:CCNA (Cisco Certified Network Associate)
ネットワーク機器最大手シスコシステムズ社が認定する、ネットワークエンジニアの登竜門的資格です。ネットワークの基礎からセキュリティまで網羅的に学べるため、取得すればネットワークに関する知識を幅広く証明できます。
サーバー:LinuC / LPIC (Linux Professional Institute Certification)
サーバーOSとして広く使われるLinuxの技術力を証明する資格です。サーバーの構築や運用管理に直結する知識が問われるため、インフラエンジニアとしての専門性をアピールするのに非常に有効です。未経験者はまず「レベル1」の取得を目指すのが一般的です。
クラウド:AWS認定資格 (AWS Certifications)
AWSに関する知識とスキルを証明する資格です。未経験者は、まず基礎的な知識を問う「AWS Certified Cloud Practitioner」から始めるのがおすすめです。この資格を取得することで、クラウドの基本的な概念を理解していることを示せます。さらに、より実践的な「AWS Certified Solutions Architect – Associate」まで取得できれば、他の未経験者と大きな差をつけることができます。
【厳選】未経験者におすすめの学習書籍
独学でインフラエンジニアを目指す方のために、各分野の学習におすすめの書籍を厳選してご紹介します。これらの書籍は、多くの現役エンジニアや初学者から支持されています。
ネットワーク (CCNA) 分野のおすすめ書籍
CCNA Certification Study Guide: Volume 1 (Exam 200-301)
世界的に有名な著者Todd Lammle氏によるCCNAの定番教科書。ネットワークの基礎から丁寧に解説されており、実務的なシナリオや演習問題も豊富です。英語の教材ですが、正確で深い知識を身につけたい方におすすめです。
基礎からわかる!CCNA最短合格講義
日本の初学者向けに書かれたCCNA対策本。つまずきやすいポイントが丁寧に解説されており、無料の動画講義や問題演習サイトも付属しているため、この1冊で効率的に学習を進めることができます。
サーバー (Linux) 分野のおすすめ書籍
ゼロからはじめるLinuxサーバー構築・運用ガイド
Linuxのインストールから基本的なコマンド、Webサーバーの構築演習まで、手を動かしながら学べる実践的な入門書です。図解も豊富で、初心者でもつまずきにくい構成になっています。実務で役立つコマンドリファレンスも付属しています。
[試して理解]Linuxのしくみ ―実験と図解で学ぶOS、仮想マシンの基礎知識
Linuxが内部でどのように動いているのか(プロセス管理、ファイルシステムなど)を、豊富な図解と実際の実験を通して学べる一冊。表面的な操作だけでなく、本質的な理解を深めたい方に最適です。フルカラーで視覚的に理解しやすいと評判です。
クラウド (AWS) 分野のおすすめ書籍
AWS認定資格試験テキスト AWS認定 クラウドプラクティショナー
AWS初学者の登竜門である「クラウドプラクティショナー」の試験対策テキスト。AWSの主要サービスやクラウドの概念、料金体系などが体系的にまとめられています。この一冊で試験範囲を網羅的に学習できます。
AWS Certified Cloud Practitioner Study Guide: CLF-C01 Exam
こちらもクラウドプラクティショナー試験の有名な学習ガイドです。オンラインの学習環境や模擬試験、フラッシュカードなどが付属しており、多角的な学習が可能です。英語教材ですが、世界中の学習者に利用されています。
結論:計画的な準備が「やめとけ」を「天職」に変える
インフラエンジニアが「やめとけ」と言われる背景には、不規則な勤務や絶え間ない学習といった厳しい現実があります。しかし、それらはキャリアの特定の段階や、この職種が持つ専門性の一側面に過ぎません。
その裏側には、高い需要と将来性、安定した高年収、そして未経験からでも着実に成長できるキャリアパスという、計り知れない魅力が広がっています。
「やめとけ」と言われる理由を正しく理解し、それに対する備えをすること。そして、この仕事が持つ本質的な価値に目を向けること。
本記事で紹介したロードマップを参考に、基礎スキルを固め、資格という武器を手にすることで、未経験というスタートラインは決して不利にはなりません。計画的な準備と学び続ける意欲さえあれば、「やめとけ」という声を乗り越え、社会を支える不可欠な専門家としてのキャリアを築くことができるでしょう。

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