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企業研修動画制作ガイド|効果的な教育コンテンツの作り方

2025年7月20日

企業研修動画制作ガイド|効果的な教育コンテンツの作り方

KUREBA

なぜ今、研修に「動画」が不可欠なのか?

働き方の多様化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速に伴い、企業の人材育成のあり方は大きな変革期を迎えています。従来の集合研修だけでは対応しきれない課題が増える中、その解決策として「研修動画」が急速に普及しています。本記事では、なぜ今研修動画が重要なのか、そして成果につながる効果的な研修動画をいかにして制作するか、その戦略から具体的な制作手順、効果測定までを網羅的に解説します。

拡大する企業研修市場と動画活用の現状

企業の人材育成への投資意欲は、コロナ禍を経てむしろ高まっています。ある調査によれば、企業向け研修サービス全体の市場規模は、2020年に一時的な落ち込みを見せたものの、2024年にはコロナ禍以前を上回る5,800億円に達すると予測されています。

この成長を牽引しているのが、eラーニングをはじめとするデジタル学習です。特に動画を活用した研修は、その中核を担っています。研修市場全体に占めるeラーニングの割合は、2019年の12.9%から2024年には20.2%へと大幅に増加しました。さらに、企業の動画活用を支える「法人向け動画・配信ソリューション」市場も、2024年度には前年比23.8%増の635.7億円に達する見込みであり、動画がビジネスのあらゆる場面で不可欠なツールとなっていることを示しています。

研修動画がもたらす5つの戦略的メリット

研修動画の導入は、単なる研修手法のデジタル化にとどまらず、企業経営に多くの戦略的メリットをもたらします。主なメリットは以下の5つです。

  1. 教育コストの大幅な削減:講師の派遣費用、受講者の交通費・宿泊費、会場費、資料印刷費といった物理的なコストを削減できます。一度制作すれば繰り返し利用できるため、長期的な視点での費用対効果は絶大です。
  2. 時間と場所の制約からの解放:受講者はPCやスマートフォンさえあれば、好きな時間に好きな場所で学習できます。多忙な社員や多拠点に分散する社員でも、業務への影響を最小限に抑えながら研修に参加可能です。
  3. 研修内容と品質の均一化:講師のスキルやコンディションによる内容のばらつきを防ぎ、全社員に同じ品質の教育を提供できます。これにより、企業全体の知識・スキルの標準化と底上げが図れます。
  4. 学習効果の向上と知識の定着:動画はテキストや静止画に比べ、視覚と聴覚に訴えかける情報量が圧倒的に多く、複雑な内容や手順も直感的に理解しやすくなります。繰り返し視聴できるため、個々のペースに合わせた復習が可能となり、知識の定着率が高まります。
  5. 学習進捗の可視化とデータ活用:LMS(学習管理システム)と組み合わせることで、誰がどの動画をどこまで視聴したか、テストの成績はどうかといった学習進捗をデータとして可視化できます。これにより、個別のフォローアップや研修プログラム自体の改善が容易になります。

第1部【戦略編】成果を生む研修動画の設計思想

効果的な研修動画は、ただ情報を映像化するだけでは生まれません。その根底には、学習者の行動変容を促すための戦略的な「設計思想」が必要です。

「目的の明確化」が成否を分ける

制作に着手する前に、最も重要な問いは「この研修動画で、誰に、何を達成してほしいのか?」です。目的が曖昧なままでは、焦点のぼやけた自己満足なコンテンツになりかねません。目的を具体化するためには、以下のフレームワークが役立ちます。

  • 対象者(Who):新入社員か、管理職か、特定の技術者か。対象者の現在の知識レベルや課題は何か。
  • 学習目標(What):研修後に受講者が「知っている」状態になることか、「できる」ようになることか。具体的な行動目標(例:新しいソフトウェアを操作できる、コンプライアンス規定を遵守した行動がとれる)を設定します。
  • 研修の背景(Why):なぜこの研修が必要なのか。解決したい経営課題や業務上の問題は何か。(例:新人営業の成約率が低い、情報セキュリティインシデントが多発している)
  • 活用シーン(When/Where):いつ、どこで視聴されることを想定するか。業務の合間のマイクロラーニングか、集合研修での補助教材か。

研修動画の目的は「視聴者が内容を理解し、業務に生かせること」であることを忘れてはいけません。目的を明確にすることで、伝えるべき情報が絞り込まれ、学習効果を最大限に引き出すことができます。

学習効果を最大化する教育設計の理論

プロフェッショナルな研修動画制作は、経験則だけでなく、教育効果を科学的に高めるための理論に基づいています。ここでは代表的な2つのアプローチを紹介します。

アンドラゴジー(成人学習理論)

アンドラゴジーは、子供の学習(ペタゴジー)とは異なる、成人の学習特性に基づいた理論です。成人は「なぜこれを学ぶ必要があるのか」という動機を重視し、自らの経験と関連付け、実務に直結する内容を主体的に学びたいと考えます。

この理論を研修動画に活かすには、単なる知識の伝達だけでなく、「このスキルがあなたの業務でどう役立つか」「この知識がキャリアにどう繋がるか」といった、学習者の動機付けに繋がるメッセージを組み込むことが重要です。

LXD(ラーニングエクスペリエンスデザイン)

LXDは、学習者を「ユーザー」と捉え、その学習体験(Learning Experience)全体をデザインするアプローチです。従来の「教える側」の視点ではなく、「学ぶ側」の視点に立ち、どうすれば学習者が没入し、楽しく、効果的に学べるかを設計します。

  • 学習者ペルソナの設定:対象者を具体的にイメージし、そのニーズや課題、学習スタイルに合わせたコンテンツを設計します。
  • インタラクティブ性の導入:動画の途中にクイズや質問を挟む、視聴者が選択肢によってストーリーを選べるようにするなど、受動的な視聴から能動的な参加へと促します。
  • 多様な学習リソースの組み合わせ:動画だけでなく、ディスカッションや実践ワーク、フォローアップのセッションなど、複数の学習方法を組み合わせた「ブレンド型研修」を設計します。

第2部【制作編】伝わる動画を作るための全ステップ

戦略が固まったら、いよいよ制作フェーズです。ここでは、高品質で効果的な研修動画を生み出すための具体的なステップを解説します。

制作フローの全体像:企画から配信まで

研修動画制作は、一般的に以下の5つのステップで進行します。各ステップを丁寧に進めることが、手戻りを防ぎ、スムーズな制作を実現する鍵となります。

  1. 企画・構成:動画の目的、ターゲットを基に、全体の流れや構成案を作成します。
  2. シナリオ・絵コンテ作成:セリフやナレーション、映像の具体的なイメージを文書化・図式化します。
  3. 撮影・素材準備:実写撮影、またはアニメーション用のイラストやグラフィック素材を用意します。
  4. 編集・仕上げ:撮影した映像や素材を繋ぎ合わせ、テロップ、BGM、ナレーションなどを加えて完成させます。
  5. 配信・公開:完成した動画をLMSや社内ポータルなどにアップロードし、受講者に届けます。

Step 1:企画・構成 ― 動画の骨格を作る

企画・構成は動画制作の設計図であり、最も重要な工程です。ここで役立つのが「ストーリーテリング」の考え方です。

単に情報を羅列するのではなく、物語性を持たせることで視聴者の感情に訴えかけ、より強い共感や印象を与えることができます。主人公(受講者)が課題に直面し、研修動画を通じて解決策を学び、成長するというストーリーは、学習内容を「自分ごと」として捉えさせ、学習意欲を高めます。

構成を考える際には、以下のようなフレームワークが有効です。

  • 問題解決型フレームワーク:「導入(注意を引く)」→「問題提起(共感を得る)」→「解決策(学習内容の提示)」→「締めくくり(行動喚起)」という流れで構成します。
  • PREP法:「Point(結論)」→「Reason(理由)」→「Example(具体例)」→「Point(結論の再確認)」の順で説明し、ロジカルで分かりやすい構成を作ります。

Step 2:撮影・素材準備 ― 品質の土台を築く

動画の品質は、視聴者の集中力や信頼感に直結します。特に音声は重要で、「画質はそこそこでも耐えられるが、音質が悪いと離脱される」と言われるほどです。内製する場合でも、外部接続マイクを用意するなど、クリアな音声を収録する工夫が不可欠です。

撮影にあたっては、以下のチェックリストを参考に準備を進めましょう。

  • 機材:カメラ(ビデオカメラや一眼レフが望ましい)、三脚、マイク、照明
  • 場所:静かで、背景が整理された場所を確保する。必要に応じてグリーンバックスタジオを利用する。
  • 出演者:講師役の社員や、必要に応じてプロの演者をキャスティングする。
  • 著作権:使用するBGM、画像、フォントなどが著作権フリーであるか、または使用許諾を得ているかを確認します。

Step 3:編集・仕上げ ― 学習効果を高める技術

編集は、撮影した素材に命を吹き込み、学習効果を飛躍的に高める工程です。以下のテクニックを効果的に活用しましょう。

  • マイクロラーニング化:1本の動画は5分~10分程度の短い時間に区切ります。これにより、受講者は隙間時間で学習でき、集中力も維持しやすくなります。
  • テロップとナレーション:重要なキーワードをテロップで表示し、視覚的に強調します。プロのナレーターによる聞き取りやすいナレーションは、内容の理解度を大きく向上させます。
  • アニメーションとグラフィックス:抽象的な概念やデータの推移などを説明する際に、モーショングラフィックスやアニメーションを用いると、直感的で分かりやすくなります。
  • インタラクティブ要素の追加:動画の途中にクリック可能なボタンを設置し、クイズに答えさせたり、関連資料へ誘導したりすることで、受講者の能動的な参加を促します。

研修動画の費用相場と内訳

研修動画の制作費用は、動画の形式や長さ、クオリティによって大きく変動します。費用の主な内訳は、「企画費(構成・台本作成など)」「人件費(ディレクター、カメラマン、編集者など)」「諸経費(スタジオ代、機材費、交通費など)」の3つで構成されます。費用を抑えたい場合は、動画の尺を短くする、撮影を自社で行う、アニメーションを活用するなどの工夫が有効です。

第3部【運用・評価編】研修効果を最大化し、次につなげる

動画を制作して終わりではありません。適切に運用し、効果を測定・改善していくサイクルを回すことで、研修動画は真の価値を発揮します。

配信プラットフォームの選定と活用

制作した動画を配信する方法はいくつかあり、目的やセキュリティ要件に応じて選択します。

  • LMS (Learning Management System):学習管理に特化したシステム。受講者の進捗管理、テスト実施、成績管理、アンケート収集などが一元的に行え、最も体系的な運用が可能です。
  • 社内サーバー/ポータルサイト:手軽に始められますが、視聴状況の把握やセキュリティ管理には別途工夫が必要です。
  • YouTube(限定公開):無料で利用でき、URLを知っている人だけが視聴できるため、手軽な情報共有に適しています。ただし、機密性の高い内容には不向きです。

研修効果の「見える化」:ROIとKPIによる効果測定

研修への投資がどれだけの成果を生んだかを客観的に評価することは、経営層への説明責任を果たす上で不可欠です。そのための代表的な指標がROIとKPIです。

ROI (Return on Investment)

ROIは「投資収益率」を意味し、研修に投じたコストに対してどれだけの利益が生まれたかを測る指標です。

ROI (%) = (研修によって生じた利益 ÷ 研修への投資額) × 100

例えば、営業研修後に売上が500万円増加し、研修費用が50万円だった場合、ROIは900%となります。利益を直接算出するのが難しい場合は、コスト削減額(例:クレーム対応時間の削減による人件費削減)などを利益として計算します。

KPI (Key Performance Indicator)

KPIは「重要業績評価指標」のことで、最終的なゴール(KGI: 重要目標達成指標)に至るまでのプロセスを定量的に測定する中間指標です。研修の効果測定におけるKPIの例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 学習プロセス指標:視聴完了率、テストの平均点、アンケートの満足度
  • 行動変容指標:研修で学んだツールの利用率、特定の業務プロセスの遵守率
  • 業績指標:営業成約率、顧客満足度スコア、生産性の向上率、エラー発生率の低下

これらのKPIを研修前後で比較測定することで、研修が具体的な行動変容や業績向上に繋がったかを評価できます。

PDCAサイクルによる継続的な改善

一度配信した研修動画も、定期的に見直しと改善を行うことが重要です。LMSから得られる視聴データやアンケート結果を分析し、「どこで離脱が多いか」「どの部分が分かりにくいと評価されているか」といった課題を特定します。

この「Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)」のPDCAサイクルを回し続けることで、研修コンテンツは常に最新かつ最適な状態に保たれ、その教育効果を持続的に高めていくことができます。

まとめ:戦略的な動画制作で、企業の成長を加速させる

本記事では、企業研修における動画制作の重要性から、戦略的な設計、具体的な制作ステップ、そして効果測定と改善のサイクルまでを包括的に解説しました。

効果的な研修動画は、単なる情報伝達ツールではありません。それは、学習者の行動変容を促し、組織全体のパフォーマンスを向上させ、最終的には企業の持続的な成長を支える戦略的投資です。

成功の鍵は、制作に着手する前の「戦略設計」にあります。誰に、何を、なぜ学んでほしいのかを徹底的に考え抜き、学習者中心の体験をデザインすること。そして、制作した動画の効果を客観的なデータで測定し、改善し続けること。このサイクルこそが、研修投資の効果を最大化する唯一の道です。

私たち合同会社KUREBAは、動画編集のプロフェッショナルとして、本記事で解説したような戦略的視点に基づいた高品質な研修動画制作をサポートします。企画構成のご相談から、伝わる編集テクニック、効果的な運用方法まで、お客様の課題解決に最適なソリューションをご提案いたします。研修動画の制作・活用でお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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