転職市場で頻繁に目にする「第二新卒」という言葉。なんとなく若手を指すことは分かっていても、「具体的にいつまでが対象なの?」「転職に有利って本当?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。特に2025年以降、企業の採用意欲はますます高まり、第二新卒は人材獲得競争の主役となりつつあります。
この記事では、第二新卒の明確な定義から、現在の転職市場における需要、企業側の本音、そして転職を成功させるための具体的な戦略まで、最新のデータと専門家の知見を基に網羅的に解説します。あなたのキャリアの次の一歩を、確かな情報と共に踏み出しましょう。
1. 第二新卒とは?「いつまで」を徹底解説
まず、最も重要な「第二新卒」の定義と、それが「いつまで」を指すのかを明確にしましょう。
1.1. 一般的な定義は「新卒入社後3年以内」
第二新卒に法的な定義はありませんが、転職市場では「学校を卒業後、新卒で一度就職し、社会人経験1~3年未満で転職を志す人材」を指すのが一般的です。dodaやマイナビ転職といった大手転職サイトも、この「3年以内」という期間を一つの目安としています。
第二新卒とは、学校等を卒業して一旦就職したが、短期間(主に1年未満〜3年)のうちに転職を志す者のこと。「第二新卒者」とも称す。
ただし、これはあくまで一般的な目安です。企業によっては「社会人経験のある20代の若手」といった、より広い意味で使われることもあります。そのため、「3年を過ぎたから応募できない」と諦めるのではなく、企業の募集要項を柔軟に解釈することが重要です。
1.2. 年齢の目安は?
「社会人経験3年以内」を年齢に換算すると、最終学歴によって異なりますが、以下が目安となります。
- 4年制大学卒の場合: 22歳で卒業した場合、25歳前後まで
- 大学院(修士)卒の場合: 24歳で卒業した場合、27歳前後まで
- 高校卒の場合: 18歳で卒業した場合、20歳代前半まで
特に社会人2~3年目は、基本的なビジネススキルと業務経験が身につき、企業からも即戦力に近い存在として評価されやすいため、転職に最も有利な時期と言えるでしょう。
1.3. 「新卒」「既卒」との違い
第二新卒と混同されやすい「新卒」「既卒」との違いは、「正社員としての就業経験の有無」です。以下の表でその違いを整理します。
| 区分 | 定義 | 主な採用枠 |
|---|---|---|
| 第二新卒 | 学校卒業後、一度就職したが3年未満で転職する人 | 中途採用(一部、新卒枠での募集もあり) |
| 新卒 | その年に学校を卒業し、初めて就職する人 | 新卒採用 |
| 既卒 | 学校卒業後、一度も正社員として就職していない人 | 新卒採用枠または既卒者向け採用枠 |
第二新卒は就業経験があるため、原則として「中途採用」の枠で応募することになります。しかし、そのポテンシャルを評価され、「第二新卒歓迎」として新卒採用枠で募集されるケースも少なくありません。
2. なぜ今、第二新卒は「売り手市場」なのか?
近年、第二新卒の転職市場は「売り手市場」と言われています。その背景には、深刻な人手不足と、企業の採用戦略の変化があります。
2.1. 企業の採用意欲が過去最高レベルに
少子化による若手人材の減少と、景気回復に伴う事業拡大意欲を背景に、多くの企業が採用難に直面しています。新卒採用だけでは必要な人材を確保できず、かといって即戦力となる中途人材の獲得競争も激化しています。
こうした状況下で、「社会人基礎力があり、かつポテンシャルの高い若手」として第二新卒に白羽の矢が立っているのです。実際に、マイナビの調査では驚くべき結果が示されています。
この調査によると、2025年以降に第二新卒を採用する予定のある企業は8割を超え、特に従業員1,000人以上の大企業では87.9%に達します。 かつては新卒採用が中心だった大企業までもが、本格的に第二新卒の獲得に乗り出していることがわかります。これは、第二新卒にとって大きなチャンスが到来していることを意味します。
2.2. 企業が第二新卒に期待する3つの理由
企業が第二新卒採用を積極的に行う理由は、単なる人手不足の解消だけではありません。マイナビの調査で「第二新卒採用を行う理由」を尋ねたところ、「新卒人材が充足できない」(53.4%)、「中途即戦力人材が充足できない」(45.4%)に次いで、「採用がしやすい」(37.0%)が挙げられました。企業は第二新卒ならではの価値を高く評価しているのです。
企業が第二新卒に期待する主なポイントは以下の3つです。
- 教育コストの低減
第二新卒は、電話応対やビジネスメール、報告・連絡・相談といった基本的なビジネスマナーを既に習得しています。企業にとっては、新卒社員のようにゼロから研修を行う必要がなく、教育コストと時間を大幅に削減できるという大きなメリットがあります。 - 高いポテンシャルと柔軟性
社会人経験が浅いため、前職のやり方や文化に染まりきっていません。そのため、新しい会社の文化や仕事の進め方を素直に吸収し、スムーズに適応できる柔軟性が期待されています。 - 仕事への高い意欲
一度、就職のミスマッチを経験しているからこそ、「次こそは自分に合った環境で長く働きたい」という強い意欲を持っていると評価されます。この意欲が、早期の成長と組織への貢献につながると期待されています。
2.3. 企業が抱く懸念点とは?
一方で、企業が第二新卒に対して抱く最大の懸念は「またすぐに辞めてしまうのではないか」という早期離職のリスクです。エン・ジャパンの調査では、64%の企業が採用時に「前職の勤続期間」を重視すると回答しており、特に「1年未満」での離職に対しては慎重な見方をする企業が多いことが分かっています。
そのため、転職活動では、この懸念を払拭することが成功の鍵となります。なぜ退職に至ったのか、そして次はどのように貢献していきたいのかを、論理的かつ前向きに伝える準備が不可欠です。
3. 第二新卒の転職活動のリアル
企業の高い需要に支えられ、第二新卒の転職市場は活況を呈しています。では、当事者である若手社会人は、転職をどのように捉え、どのような現実に直面しているのでしょうか。
3.1. 若者の転職へのポジティブな意識
かつてネガティブなイメージもあった早期離職ですが、現代の若者にとってはキャリアを前向きに捉え直すための選択肢の一つとなっています。dodaの調査によると、第二新卒が含まれる20代の66.6%が転職に対してポジティブなイメージを持っていると回答しており、他の年代を大きく上回っています。
この意識の変化は、転職サービスへの登録者数の増加にも表れています。dodaのデータでは、2011年から2023年にかけて、新卒入社直後に登録するユーザー数が約30倍に急増しました。 これは、入社後のギャップを感じた際に、転職を具体的な選択肢として情報収集を始める若者が増えていることを示しています。
3.2. リアルな転職理由と平均年収
第二新卒が転職を決意するきっかけは、必ずしもポジティブなものばかりではありません。ある調査では、転職理由の上位は「仕事内容が合わない」(27.2%)、「過重労働や休日出勤」(24.7%)、「収入への不満」(23.4%)となっており、現状の労働環境への不満が大きな動機となっています。
年収についてはどうでしょうか。複数の調査を総合すると、第二新卒世代(22〜25歳)の平均年収は約280万円〜320万円が相場とされています。
転職サイトdodaによる「平均年収ランキング最新版」によると、第二新卒といわれる22~25歳の平均年収は約317万円です。
これは全世代の平均と比べると低い水準ですが、裏を返せば大きな伸びしろがあるとも言えます。スキルや経験が重視される業界や、成長産業へ転職することで、大幅な年収アップを実現するケースも少なくありません。
4. 第二新卒の転職を成功させるための完全戦略
売り手市場という追い風を最大限に活かすためには、戦略的な準備が不可欠です。ここでは、転職を成功に導くための具体的なアクションプランを解説します。
4.1. 面接対策:ネガティブな退職理由をポジティブに転換する
面接で必ず聞かれるのが「転職理由」です。企業が最も懸念する「早期離職の再発」という不安を払拭するため、たとえ本音がネガティブな理由であっても、それをポジティブな志望動機に転換して伝えることが極めて重要です。
- NG例:「残業が多くて、プライベートの時間が全く取れなかったためです。」
- OK例:「前職では多くの業務を経験できましたが、より効率的に成果を出し、専門性を高められる環境で働きたいと考えるようになりました。貴社の〇〇という分野で専門知識を深め、長期的に貢献したいです。」
ポイントは、①前職での経験から何を学んだか、②それがどう将来の目標につながったか、③なぜその目標が応募先企業でしか実現できないのか、という一貫したストーリーを構築することです。
4.2. 大手企業への道:研修・福利厚生のメリット
前述の通り、大手企業も第二新卒採用に非常に積極的です。大手企業への転職は、安定性や社会的信用の高さに加え、具体的なメリットがあります。
- 充実した研修制度:未経験分野でも体系的に学べるOJTや研修プログラムが整っていることが多く、着実なスキルアップが可能です。
- 手厚い福利厚生:住宅補助やリフレッシュ休暇、自己啓発支援など、ワークライフバランスを支える制度が充実している傾向にあります。
大手企業の選考は競争が激しいですが、第二新卒枠はポテンシャルが重視されるため、新卒採用時よりも門戸が広い場合があります。臆することなく挑戦する価値は十分にあります。
4.3. 狙い目の業界:IT・コンサル・専門職でキャリアアップ
年収アップや専門性を高めたい場合、成長産業への転職が有効な選択肢となります。2025年以降も特に需要が高いと予測されるのは以下の業界です。
- IT・通信業界:DX化の波に乗り、エンジニアやSaaS営業などの職種は常に人材不足です。未経験者向けの研修を設けている企業も多く、第二新卒がキャリアチェンジしやすい代表的な業界です。
- コンサルティング業界:論理的思考力や課題解決能力が求められますが、若手でも高い年収が期待できます。外資系戦略コンサルや総合系コンサルでは、初年度から500万円以上の年収を提示されることも珍しくありません。
- 専門技術職(建設・製造):人手不足が深刻な建設業界や、自動車・電機関連の製造業でも若手技術者の需要は根強くあります。特に地方の工場などでは、安定した求人が見込めます。
4.4. 地方や海外でのキャリアという選択肢
キャリアの選択肢は、都市部の大企業だけではありません。
地方創生に関わる仕事や、人手不足に悩む地方の優良企業も第二新卒を積極的に採用しています。リモートワークの普及により、地方にいながら都市部の企業と遜色ない仕事や待遇を得ることも可能になってきました。
また、海外勤務やグローバルなキャリアに興味があるなら、第二新卒は絶好のタイミングです。多くの転職サイトで「第二新卒歓迎」の海外営業や海外駐在員候補の求人が掲載されています。 若いうちから国際的な経験を積むことは、長期的なキャリアにおいて大きな資産となるでしょう。
5. まとめ:第二新卒はキャリアを再構築する絶好の機会
本記事で解説してきた内容をまとめます。
- 第二新卒の定義:一般的に「新卒入社後、3年以内」の求職者を指し、年齢では大卒で25歳前後が目安。
- 市場の需要:深刻な人手不足を背景に、8割以上の企業が採用に意欲的。特に大手企業が積極化しており、歴史的な「売り手市場」となっている。
- 企業の視点:教育コストの低さ、柔軟性、意欲を高く評価する一方、早期離職への懸念も抱いている。
- 成功の鍵:ネガティブな転職理由をポジティブな志望動機に転換し、企業の懸念を払拭することが不可欠。自己分析と企業研究に基づいた一貫性のあるストーリーが求められる。
「一度目の就職で失敗した」と感じているかもしれません。しかし、その経験は決して無駄ではありません。なぜ合わなかったのかを深く分析し、次に何をしたいのかを明確にすることで、それは貴重な学びへと変わります。
現在の売り手市場は、第二新卒にとってキャリアを主体的に再設計するまたとないチャンスです。この記事で得た知識を武器に、ぜひ納得のいく転職を実現してください。

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