静岡県西部に位置し、ものづくりの街として知られる浜松市。実は、パン好きの間で「レベルの高いパン屋が多い」と注目を集めるエリアでもあります。この記事では、2025年の最新情報に基づき、浜松で訪れるべきパン屋を徹底ガイドします。全国的な賞を獲得した名店から、地元食材を活かす新進気鋭の店、そしてまるで物語の世界に入り込んだかのようなユニークな店まで、浜松の多様で豊かなパン文化の魅力に迫ります。
浜松パン屋シーンの潮流:歴史とトレンド
現在の浜松の活気あるパン屋シーンは、一朝一夕に築かれたものではありません。日本のパン文化の変遷と、この地域ならではの特性が深く関わっています。
パンの街、浜松の歴史的背景
日本にパンが本格的に伝わったのは1543年、鉄砲伝来と同時期でした。ポルトガル語の「pão」が語源となり、キリスト教の布教とともに少しずつ広まりました。しかし、一般庶民の食生活に根付いたのは第二次世界大戦後のことです。学校給食でのコッペパンの普及が、全国的にパン食文化を広める大きなきっかけとなりました。
浜松においても、戦後から続く老舗パン屋が存在します。例えば、1947年創業の「阿古屋製パン」は、当初結核患者のためにパンを配達していた歴史を持ちます。また、バームクーヘン「治一郎」で有名な「ヤタロー」は、1933年にパン・菓子の製造販売から事業を開始しており、浜松のパン文化の歴史を語る上で欠かせない存在です。こうした歴史ある企業が、地域のパン食文化の土台を築いてきました。
現代の2大トレンド:「地産地消」と「個性派コンセプト」
歴史を土台としながら、現代の浜松のパン屋は新たな魅力で進化を続けています。その中でも特に顕著なのが「地産地消」と「個性派コンセプト」という2つの潮流です。
地産地消: 浜松は農業も盛んな地域であり、その豊富な食材を活かしたパン作りが注目されています。「OMOTE BAKERY」は、浜松産の野菜や果物をふんだんに使用し、規格外農作物の活用にも取り組んでいます。また、「ヤタロー地産地消工場店」は、その名の通り地域の美味しいものを集め、地元の魅力を発信する拠点となっています。
個性派コンセプト: 他のどこにもない、唯一無二の体験を提供するパン屋も人気を集めています。その代表格が、ジブリ映画『魔女の宅急便』の世界観を再現した「ぐーちょきぱん」です。メルヘンチックな外観と店内で、物語の世界に浸りながらパンを選ぶことができます。また、全国的なアワードを受賞した「Boulangerie Sugiyama」や、特定のパン(クロワッサンなど)を専門的に追求する店など、各店が独自の強みを打ち出しています。
【ランキング上位】絶対に外せない!浜松の実力派ベーカリー
数多くのパン屋がひしめく浜松で、特に高い評価を受け、各種ランキングで常に上位に名を連ねる実力店が存在します。ここでは、味、品質、人気ともに折り紙付きの3店を紹介します。
Boulangerie Sugiyama – 全国1位に輝いた「最も愛されたパン屋」
浜松のパン屋を語る上で、「Boulangerie Sugiyama(ブーランジェリー スギヤマ)」は絶対に外せません。この店の名を一躍全国に轟かせたのが、パンの通販・ロス削減サービス「rebake」が発表した「rebake AWARD 2024」です。全国約1500店舗の中から、総合ランキングで見事1位を獲得し、「2024年に最も愛されたパン屋」の称号を手にしました。
2006年のオープン以来、地元で愛され続ける同店。その魅力は、それぞれのパンに最適な小麦を独自にブレンドし、多様な製法を駆使して焼き上げるこだわりにあります。味や丁寧な仕事ぶりが多くのファンを惹きつけ、全国から注文が殺到する人気店となっています。
La Boulangerie ASAYA. – 生地を味わう本格派
「La Boulangerie ASAYA.(ラ・ブーランジェリー麻や。)」は、パンそのものの味を追求する本格派として、多くのパン好きから支持されています。食べログや静岡新聞アットエスなどのランキングでも常に上位にランクインする人気店です。
この店の真骨頂は、ハード系のパンにあります。噛めば噛むほど小麦の甘みと香りが広がるシンプルなパンは、生地そのものの美味しさを存分に楽しめます。もちろん、惣菜パンや甘いクリームを使ったパンも絶品で、鶏そぼろレンコンパンやクリームパンなどが人気を集めています。生地にこだわるからこそ、どんな具材とも見事に調和します。
Boulangerie Kaseru – 名店仕込みの絶品デニッシュ
浜松市中央区富塚町に店を構える「Boulangerie Kaseru(ブーランジェリー カセル)」も、ランキング上位の常連です。名店で修行を積んだ店主が作るパンは、どれもクオリティが高いと評判ですが、特にデニッシュ系の評価が際立っています。
添加物を極力使わない安心なパン作りをモットーに、パンや焼き菓子、マフィンなど90種類以上の豊富なラインナップを揃えています。脱サラしてパン職人の道を選んだという店主の情熱が、一つ一つのパンに込められています。そのこだわりと美味しさが、多くのリピーターを生んでいます。
【コンセプトで選ぶ】一度は訪れたい個性豊かなパン屋さん
浜松には、味はもちろんのこと、その独自のコンセプトで人々を魅了するパン屋が数多くあります。ここでは、テーマ性で選びたい個性派ベーカリーを4店ご紹介します。
ぐーちょきぱん – ジブリの世界に迷い込むメルヘンな体験
浜名湖の近く、庄内町にある「ぐーちょきぱん」は、その名前と外観から多くのジブリファンを惹きつけてやみません。まるでスタジオジブリの名作『魔女の宅急便』に登場する「グーチョキパン店」がそのまま現実世界に現れたかのような、メルヘンで可愛らしい建物が目印です。
店内には約60種類のパンが並び、オルゴールのBGMが流れる温かみのある空間が広がっています。2階にはイートインスペースもあり、購入したパンをその場で楽しむことができます。カレーパンや栗のデニッシュなどが人気で、訪れるだけで心が躍る、特別な体験ができるパン屋さんです。
OMOTE BAKERY – 浜松の恵みを味わう「地産地消」の旗手
「OMOTE BAKERY(オモテベーカリー)」は、「パンが彩る日常生活を、家庭でもOMOTE(外)でも楽しんでほしい」という想いから生まれた、地元密着型のベーカリーです。その最大の特徴は、浜松産の野菜や果物を積極的に活用した「地産地消」のパン作りです。
例えば、浜松産サラダほうれん草を約2束も練り込んだ「ベジタブルブレッド」や、遠州灘産のしらすを使った「しらすチーズぱん」など、パンを通して浜松の美味しい恵みを発信しています。規格外農作物の活用やフードロス削減にも貢献しており、地域と共に歩む姿勢が多くの共感を呼んでいます。店の外にはイートインスペースも完備されており、青空の下で焼きたてパンを味わえます。
ハコニワ ベーカリー – 見た目も可愛い「ハコニワぱん」が人気
「ハコニワ ベーカリー」は、パンと洋菓子のお店で、子供からお年寄りまで安心して食べられる素材にこだわったパン作りが特徴です。特に注目を集めているのが、店名を冠したキューブ型の「ハコニワぱん」。その可愛らしいビジュアルはSNSでも話題となっています。
2020年にオープンした比較的新しいお店ですが、クロワッサンが自慢で、そのほかにも季節のフルーツを使ったシフォンケーキなど、目も舌も喜ぶパンやスイーツが揃っています。浜松駅から車で15分ほどの場所にあり、訪れる価値のある人気店です。
ヤタロー地産地消工場店 – 工場直売ならではのお得感と活気
「治一郎」のバームクーヘンで全国的に有名なヤタローグループが運営する「ヤタロー地産地消工場店」。ここは単なるアウトレットストアではありません。「浜松は、『おいしい!』ものづくりのまち」をコンセプトに、地域の美味しいものを集め、新しい魅力を発信する拠点となっています。
店内では、名物のバームクーヘンの切り落としといったアウトレット商品が驚きの価格で手に入るほか、工場直送の焼きたてパンも楽しめます。昭和43年発売の「かすてらぱん」など、地元で長年愛される素朴なパンも健在。地産地消とアップサイクルを推進する活気あふれる空間で、宝探しのようなショッピングが楽しめます。
まとめ:進化し続ける浜松のパン文化
浜松のパン屋シーンは、長い歴史を持つ老舗から、全国的な評価を受ける実力店、そして地元の恵みを活かしたり、ユニークなコンセプトを打ち出したりする個性派まで、非常に多様で層が厚いことがわかります。どの店も、パンへの深い愛情とこだわりを持ち、訪れる人々に美味しいパンと楽しい体験を提供しています。
浜松を訪れる際は、お気に入りのパン屋を見つける「パン屋巡り」を計画してみてはいかがでしょうか。きっと、あなたの知らない浜松の新たな魅力と、忘れられない味に出会えるはずです。
この記事で紹介したお店は、浜松の数ある素晴らしいパン屋のほんの一部です。ぜひ、ご自身の足でこの街を巡り、あなただけのお気に入りの一品を見つけてみてください。

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