駿河区の概要:自然と都市が調和するまち
静岡市を構成する3つの行政区の一つである駿河区は、市の南部に位置し、面積約73.06平方キロメートルに約20万8千人(2025年9月1日推計)が暮らすエリアです。2005年の政令指定都市移行に伴い誕生しました。区の名前は、南に広がる雄大な駿河湾に由来しています。
東には国の名勝にも指定された「日本平」、西には旧東海道の面影を残す「丸子宿」、そして区の中央を清流「安倍川」が流れるなど、豊かな自然環境に恵まれています。一方で、JR静岡駅南側エリアを含み、市の中心市街地の一部を形成。交通の要衝である東名高速道路「静岡IC」も区内に位置し、都市機能と自然が見事に調和しているのが駿河区の大きな特徴です。
駿河区の歴史:古代から徳川の時代へ
駿河区が位置する静岡市は、古くから日本の歴史において重要な役割を担ってきました。奈良時代には駿河国の国府が置かれ、政治・文化の中心地として発展しました。その歴史は「登呂遺跡」「東海道」「今川氏」「徳川家康」といったキーワードで語られます。
古代の息吹を感じる「登呂遺跡」
駿河区の歴史を語る上で欠かせないのが、国の特別史跡に指定されている登呂遺跡です。ここは弥生時代後期の農耕文化を今に伝える貴重な遺跡で、住居や高床式倉庫が復元されています。併設された「静岡市立登呂博物館」では、遺跡から出土した農具や土器などが展示されており、古代の人々の暮らしを間近に感じることができます。この遺跡の存在は、安倍川下流域の豊かな土地が、古くから人々にとって住みやすい場所であったことを示しています。
徳川家康公と国宝「久能山東照宮」
駿河区は、江戸幕府を開いた徳川家康公と非常に縁の深い地です。晩年を駿府(現在の静岡市)で過ごした家康公は、「遺骸を久能山に埋葬せよ」との遺命を残しました。これを受け、二代将軍秀忠公によって創建されたのが久能山東照宮です。ここは全国に数ある東照宮の創祀(最初に祀られた場所)とされています。
安土桃山時代から江戸時代初期の粋を集めた絢爛豪華な社殿は、2010年に静岡県内の建造物として初めて国宝に指定されました。その美しい姿は、家康公が築いた泰平の世の象徴とも言えるでしょう。
多様な産業が息づく経済の拠点
駿河区は、静岡市のバランスの取れた産業構造を支える重要なエリアです。静岡市は製造業からサービス業まで多彩な産業が集積しており、駿河区もその一翼を担っています。特に、交通の利便性を活かした工業や商業、そして豊かな自然を背景とした農水産業が盛んです。
大地の恵みと海の幸:農水産業
駿河区では、都市近郊型農業が盛んに行われています。代表的な特産品が、久能海岸沿いの石垣を利用して栽培される「石垣いちご」です。石の輻射熱を利用することで甘く育つのが特徴で、冬から春にかけてはいちご狩りも楽しめます。また、「葉しょうが」や、旧東海道丸子宿周辺で栽培される「丸子紅茶」も有名です。
一方、駿河湾に面した用宗(もちむね)漁港では、しらす漁が盛んです。水揚げされたばかりの新鮮なしらすは絶品で、港には直売所や飲食店も多く、観光客にも人気のスポットとなっています。
ものづくりの伝統と革新:製造業
駿河区は、静岡市の製造業を支える重要な拠点でもあります。昭和30年代から工業団地の開発が進められ、特に「静岡機械金属工業団地」には、機械金属加工や自動車部品関連の企業が集積しています。駿河区の製造品出荷額は静岡市全体の約3分の1を占めるほどです。
また、静岡市は家具やプラモデルなどの地場産業でも知られています。その起源は江戸時代、浅間神社造営のために全国から集められた職人たちの技術に遡ると言われています。その技術が家具や漆器、木製雑貨など多様な製品を生み出してきた歴史が記されています。こうした伝統技術が、現代の高度なものづくり産業の礎となっています。
賑わいの中心地:商業とサービス業
駿河区は、葵区とともに静岡市の中心市街地を形成しています。特にJR静岡駅周辺には、商業施設、宿泊施設、金融機関などが集積し、多くの人で賑わいます。また、東名高速静岡ICや国道1号線といった交通の要衝を抱えていることから、沿線には「MARK IS 静岡」のような大型商業施設や、多様なロードサイド店舗が立ち並び、買い物に便利な環境が整っています。
心惹かれる観光スポットと文化施設
歴史と自然に彩られた駿河区は、見どころの多い観光エリアでもあります。国宝から絶景スポット、知的好奇心を満たす博物館まで、多彩な魅力に溢れています。
絶景のパノラマ「日本平」
標高約300mの丘陵地である日本平は、日本観光地百選で1位に選ばれたこともある国内有数の景勝地です。山頂からは、富士山、駿河湾、三保松原、伊豆半島までを一望する360度の大パノラマが広がります。静岡市公式サイトでもその絶景が紹介されています。
2018年には展望施設「日本平夢テラス」がオープンし、より快適に景色を楽しめるようになりました。また、山頂と久能山東照宮を結ぶ「日本平ロープウェイ」に乗れば、約5分間の空中散歩と共に、眼下に広がる駿河湾の美しい景色を堪能できます。
時を旅する博物館群
駿河区には、知的好奇心を満たしてくれる個性豊かな博物館が点在しています。
- 静岡市立登呂博物館:前述の通り、登呂遺跡に併設され、弥生時代の暮らしを体験的に学べます。
- 静岡市立芹沢銈介美術館:人間国宝の染色家・芹沢銈介の作品とコレクションを収蔵・展示しています。
- ふじのくに地球環境史ミュージアム:静岡県の自然や環境の歴史をテーマにしたユニークな博物館です。
- 静岡市歴史博物館(葵区に所在):駿河区からもアクセスしやすく、徳川家康と駿府のまちの歴史を深く知ることができます。
駿河区の住環境:暮らしやすさの秘密
駿河区は、その利便性と豊かな自然環境から、住宅地としても高い人気を誇ります。各種調査でも、治安の良さや買い物の便、子育て環境などが高く評価されています。静岡市の犯罪発生率は他の政令指定都市に比べて大幅に低いことが示されており、安心して暮らせる街と言えます。
優れた交通アクセス
区内にはJR東海道本線と東海道新幹線が停車する静岡駅があり、東京や名古屋、大阪といった主要都市へのアクセスが非常に良好です。また、東名高速道路「静岡IC」や国道1号、国道150号といった主要道路網も整備されており、車での移動もスムーズです。葵区の中心部と接しているため、ベッドタウンとしての役割も担っています。
充実した生活関連施設
駿河区には、日々の暮らしを支える施設が充実しています。区内には静岡済生会総合病院や静岡徳洲会病院をはじめとする240以上の医療機関があり、急な体調不良の際も安心です。区内には20以上の公立小学校があり、子育て世帯にとっても魅力的な環境が整っています。
不動産市場の動向
駿河区は、その住みやすさから不動産市場も活発です。新築戸建ては4,000万円台から9,000万円台まで幅広く、中古戸建ても手頃な価格帯から見つけることができます。多様なニーズに応える物件が供給されています。土地の分譲も行われており、自分のライフスタイルに合わせた住まいづくりが可能です。
未来への展望:戦略的産業の育成
静岡市および駿河区は、持続的な経済成長を目指し、地域の強みを活かした戦略的な産業振興に取り組んでいます。特に注目されるのが、以下のプロジェクトです。
- 静岡ウェルネスプロジェクト:市内に集積する食品関連産業の高度化を目指し、健康をテーマにした新たな商品やサービスの創出を支援しています。
- 海洋産業クラスター創造事業:日本最深を誇る駿河湾の海洋資源や関連技術を活かし、新たな海洋産業の創出を目指すプロジェクトです。産学官が連携する「静岡市海洋産業クラスター協議会」が中心となって推進されています。
これらの取り組みは、駿河区の未来をさらに豊かにし、新たな雇用と活力を生み出すことが期待されています。
まとめ
静岡市駿河区は、登呂遺跡や久能山東照宮に代表される豊かな歴史、石垣いちごやしらすといった食文化、そして機械・金属を中心としたものづくり産業が息づく、多面的な魅力を持つエリアです。日本平からの絶景や充実した博物館群は訪れる人々を魅了し、優れた交通アクセスと安定した生活環境は住民にとって大きな利点となっています。未来に向けた戦略的な産業振興も進められており、今後ますます発展が期待される、まさに「自然と都市が調和した、暮らしやすく活力あるまち」と言えるでしょう。
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