プロ使用モデル！世界トップ選手が愛用する卓球ラケット徹底解説

卓球において、ラケットはプレイヤーのパフォーマンスを左右する最も重要な用具です。特に、世界の頂点で戦うトップ選手たちが使用するラケットは、最新技術と最高の素材が結集した「作品」とも言えます。これらのモデルは、彼らの驚異的なプレーを支えるだけでなく、私たち一般プレイヤーにとっても、自身のプレースタイルを見つめ直し、さらなる高みを目指すための道しるべとなります。

この記事では、2025年現在の世界ランキング上位の選手たちが愛用するラケットを徹底的に分析し、その特徴や性能、そしてどのようなプレイヤーに適しているのかを詳しく解説します。あなたの卓球ライフを次のレベルへと引き上げる一本を見つけるための参考にしてください。

なぜトップ選手のモデルを選ぶのか？

数あるラケットの中から、なぜ多くのプレイヤーがプロモデルに惹かれるのでしょうか。その理由は、単なる「憧れ」だけではありません。トップ選手モデルには、明確なメリットが存在します。

性能の証明

トップ選手が使用するという事実は、そのラケットが極限の状況下でも最高のパフォーマンスを発揮できることの何よりの証明です。メーカーは、契約選手のフィードバックを元に、スピード、スピン、コントロールといった要素をミリ単位で調整し、ラケットを開発します。つまり、プロモデルは「勝つため」に設計された、信頼性の高い用具なのです。

プレースタイルの指標

各選手のモデルは、その選手のプレースタイルを色濃く反映しています。例えば、前陣での超攻撃的なプレーを特徴とする選手のモデルはスピード性能に優れ、回転量の多いループドライブを多用する選手のモデルはボールを掴む感覚（球持ち）が重視されています。自身の目指すプレースタイルに近い選手のモデルを選ぶことで、理想のプレーを実現するための強力な武器となり得ます。

最新技術の結晶

卓球メーカーは、アリレートカーボン（ALC）やスーパーZLカーボン（SZLC）といった革新的な特殊素材を次々と開発しています。これらの最新技術は、多くの場合、まずトップ選手向けのフラッグシップモデルに搭載されます。プロモデルを手にすることは、卓球用具の最先端技術を体感することでもあるのです。

世界トップランカー（男子）の使用ラケット

男子卓球界の頂点に君臨する選手たちは、どのようなラケットを手に戦っているのでしょうか。ここでは、特に注目度の高い選手たちの愛用モデルを紹介します。

馬龍（Ma Long）モデル：DHS 狂飚龍5 (Hurricane Long 5)

「史上最高の選手」と称される馬龍選手。彼のプレーを支えるのは、中国の卓球メーカーDHS（紅双喜）の「狂飚龍5（Hurricane Long 5）」です。このラケットは、5枚合板にアリレートカーボンを組み合わせたインナーファイバー仕様で、パワフルな攻撃と安定したコントロールを両立させています。

特に、馬龍選手が使用する「W968」というコードネームで知られるナショナルチームモデルは、市販品とは異なる特別な選定品であり、非常に高価で入手困難です。しかし、その設計思想を受け継いだ市販モデルの「狂飚龍5」も、高い性能を誇り、多くのトッププレイヤーに支持されています。

馬龍選手のラケットは、粘着ラバーとの相性を最大限に引き出すように設計されており、強烈な回転量と変化のあるプレーを可能にします。ただし、その性能を100%引き出すには高い技術が要求される、まさにプロ仕様の一本です。

ティモ・ボル（Timo Boll）モデル：Butterfly ティモボル ALC

長年にわたりヨーロッパ卓球界を牽引してきたドイツのレジェンド、ティモ・ボル選手。彼の代名詞ともいえるラケットが、Butterflyの「ティモボル ALC」です。このラケットは、アリレートカーボン（ALC）を搭載したアウターファイバー仕様のブレードで、2008年の発売以来、世界中のプレイヤーから愛され続けるロングセラーモデルです。

その最大の特徴は、スピード、スピン、コントロールの完璧なバランスにあります。ALCがもたらす高い反発力と振動吸収性により、威力のある攻撃と安定したプレーを両立。前陣から後陣まで、あらゆる領域で高いパフォーマンスを発揮できる万能性が魅力です。レビューでは「攻撃的なオールラウンドプレイヤーに最適」と評されています。

林昀儒（Lin Yun-Ju）モデル：Butterfly 林昀儒 SUPER ZLC

台湾の若きエース、林昀儒選手が使用するのは、Butterflyのハイエンドモデル「林昀儒 SUPER ZLC」です。このラケットには、Butterflyの独自技術である「スーパーZLカーボン（SZLC）」が搭載されています。SZLCは、カーボンファイバーとZLファイバーを高密度に編み込むことで、従来のアリレートカーボンを上回る反発エリアの広さと高い反発弾性を実現しました。

これにより、スイートスポットが格段に広がり、打球点がずれても威力が落ちにくいという大きなメリットが生まれます。林昀儒選手の得意とする、台上の鋭いチキータや高速カウンタードライブを支える、まさに最先端の攻撃用ラケットです。ただし、その分価格も最高峰クラスとなっています。

このブレードは、スピードを重視する現代の攻撃的なスタイルを推奨します。特に、台上でのフリックを多用する両ハンドの攻撃型プレイヤーがメインターゲットです。

世界トップランカー（女子）の使用ラケット

女子卓球界もまた、用具の進化が目覚ましい世界です。パワーとスピード、そして繊細なボールタッチを両立させるため、トップ選手たちはどのような選択をしているのでしょうか。

孫穎莎（Sun Yingsha）モデル：DHS 狂飚飒 (Hurricane Sun)

現在、女子世界ランキング1位に君臨する孫穎莎選手。彼女のパワフルかつ精密な卓球を支えるのが、DHSが彼女のために開発したシグネチャーモデル「狂飚飒（Hurricane Sun）」です。このラケットは、5枚合板＋2層のアリレートカーボンというインナーファイバー構成を採用しています。

インナーファイバー仕様にすることで、ボールを掴む感覚が向上し、強烈な回転を生み出しやすくなります。それでいて、芯材の近くに特殊素材を配置することで、強打時には高い反発力を発揮します。パワーとコントロールの完璧なバランスを追求した、現代女子卓球の理想を体現した一本と言えるでしょう。

王曼昱（Wang Manyu）モデル：STIGA インスピーラ (Inspira)

長身から繰り出されるダイナミックなプレーが魅力の王曼昱選手。彼女はスウェーデンの名門ブランド、STIGAの契約選手であり、「インスピーラ（Inspira）」シリーズのラケットを使用しています。具体的には「インスピーラプラス」などが挙げられます。

このラケットは、5枚合板＋2層のALCという、ButterflyのViscariaなどと同様のアウターカーボン構成ですが、STIGA独自の木材選定と接着技術により、独特の打球感を生み出しています。レビューでは、Viscariaと比較して「よりクリアな打球感で、ブロックやカウンターが少し安定する」と評価されており、STIGAならではのフィーリングを好むプレイヤーに選ばれています。

陳幸同（Chen Xingtong）モデル：Butterfly 張本智和 インナーフォース ALC

安定した両ハンドドライブで常に上位に食い込む実力者、陳幸同選手。彼女は、Butterflyの「張本智和 インナーフォース ALC」を使用していると報告されています。このラケットは、日本のエース張本智和選手のために開発されたモデルです。

最大の特徴は、その名の通り「インナーフォース」技術にあります。特殊素材であるALCを、上板のすぐ下ではなく、中心板の隣に配置することで、木材の持つ「球持ちの良さ」を最大限に引き出します。これにより、回転をかけやすく、安定したループドライブが可能になります。アウター仕様のラケットに比べて弾みはやや抑えめですが、その分コントロール性能が高く、自分の力でボールを操る感覚を重視するプレイヤーに適しています。

主要ラケットブランドとテクノロジーの比較

トップ選手たちの選択を見てみると、いくつかのブランドとテクノロジーに人気が集中していることがわかります。ここでは、その傾向をさらに掘り下げてみましょう。

トップ選手の使用ラケットブランド分布

本記事で紹介した男女トップ選手の使用ラケットを見ると、ButterflyとDHSが大きなシェアを占め、そこにSTIGAが続く構図が見えてきます。これは、世界のトップ20選手の使用用具に関する調査でも同様の傾向が示されており、Butterflyの幅広い人気と、中国選手におけるDHSの圧倒的な支持を裏付けています。

アウターカーボン vs. インナーカーボン：打球感と性能の違い

特殊素材ラケットは、カーボンの配置によって「アウター」と「インナー」に大別され、それぞれ性能が大きく異なります。

• アウターカーボン (Outer Carbon)
  • 構造: 上板のすぐ下に特殊素材を配置。（例：ティモボル ALC）
  • 特徴: ボールが当たった瞬間に特殊素材の硬さと反発力がダイレクトに伝わる。打球感が硬く、球離れが速い。
  • 適したプレースタイル: スピードを重視する速攻型、前陣でのカウンターやスマッシュを多用するプレイヤー。
• インナーカーボン (Inner Carbon)
  • 構造: 中心板の近くに特殊素材を配置。（例：狂飚龍5、張本智和 インナーフォース ALC）
  • 特徴: ボールが当たった瞬間は木材のしなりを感じ、強くインパクトした時に特殊素材のパワーが発揮される。球持ちが良く、回転をかけやすい。
  • 適したプレースタイル: 回転量の多いループドライブを武器にするプレイヤー、安定性と威力の両立を求めるオールラウンドな攻撃型。

どちらが優れているというわけではなく、自身のプレースタイルや好みの打球感に合わせて選ぶことが重要です。Butterflyの比較記事でも、各モデルのフィーリングの違いが詳しく解説されています。

自分に合ったラケットの選び方

トップ選手の使用モデルは魅力的ですが、専門家は「馬龍のラケットをそのまま使っても上手くはならない」と指摘します。大切なのは、自分のレベルやスタイルに合った一本を見つけることです。

プレースタイルを考慮する

まずは自分の卓球を分析しましょう。前陣でピッチの速い卓球を目指すならアウターカーボン、中陣からドライブで攻めるならインナーカーボン、といったように、自分の戦術に合った特性を持つラケットを選ぶのが基本です。

レベルに合わせる

プロモデルは非常に高性能ですが、その多くは弾みが強く、コントロールが難しい「じゃじゃ馬」な側面も持っています。特に初心〜中級者の方は、いきなり最上位モデルを選ぶのではなく、コントロール性能の高い5枚合板や、弾みを抑えた特殊素材ラケットから始めることをお勧めします。ButterflyのPro-Lineシリーズのように、育成年代向けのモデルも存在します。

予算と相談する

プロ仕様のラケットは、数万円と高価なものがほとんどです。しかし、卓球メーカーは様々な価格帯のラケットをラインナップしています。例えば、Butterflyの「プリモラッツ」は、長年愛されるベストセラーでありながら、比較的安価で手に入ります。無理のない予算の中で、最適な一本を探しましょう。

まとめ

世界のトップ選手たちが愛用するラケットは、各メーカーの技術の粋を集めた、まさに究極の卓球用具です。彼らの選択は、ラケットのトレンドやテクノロジーの進化を知る上で非常に参考になります。

本記事のポイント：

• トップ選手は主にButterfly、DHS、STIGAのラケットを使用。
• ラケットの性能は、特殊素材の配置（アウター／インナー）によって大きく異なる。
• プロモデルは高性能だが、自身のプレースタイル、レベル、予算に合わせて選ぶことが最も重要。

この記事で紹介した情報を元に、ぜひあなたにぴったりの一本を見つけ、卓球の新たな楽しさを発見してください。ラケット選びは、あなたの可能性を広げる第一歩です。