動画制作初心者が知っておくべき基本用語50選|撮影から編集まで完全解説
動画制作初心者が知っておくべき基本用語50選|撮影から編集まで完全解説
KUREBA
YouTubeやSNSの普及に伴い、企業や個人が動画を活用する機会は飛躍的に増加しました。しかし、いざ動画制作を始めようとしたり、制作会社に依頼しようとしたりすると、多くの専門用語に戸惑う方も少なくありません。「コーデック」「フレームレート」「ロケハン」など、聞き慣れない言葉が飛び交い、コミュニケーションが円滑に進まないこともあります。
この記事では、動画制作の初心者や、制作を外部に発注する企業の担当者の方に向けて、撮影から編集、納品までの全工程で使われる基本的な専門用語50個を厳選し、分かりやすく解説します。用語への理解は、制作会社との円滑な意思疎通を助け、作りたい動画のイメージをより的確に伝えるための第一歩です。プロフェッショナルな動画制作の土台となる知識を身につけましょう。
動画制作の全体像を掴む用語
動画制作は大きく3つのフェーズに分かれています。まずは、全体の流れを把握するための基本的な用語から見ていきましょう。
- プリプロダクション (Pre-production)
撮影前の「準備段階」を指します。企画立案、コンセプト設計、シナリオ作成、絵コンテ、ロケハン(撮影場所探し)など、プロジェクトの骨格を作る最も重要な工程です。この段階での計画が、後の工程の効率と最終的なクオリティを大きく左右します。 - プロダクション (Production)
プリプロダクションで立てた計画に基づき、実際に映像や音声を収録する「撮影段階」のことです。単に「撮影」とも呼ばれます。 - ポストプロダクション (Post-production)
撮影した映像素材を編集し、一本の動画として完成させる「仕上げの段階」です。カット編集、テロップやBGMの追加、色調整、ナレーション収録など、多岐にわたる作業が含まれます。この工程で映像の印象は劇的に変わります。
企画・準備段階の重要用語
プリプロダクションは動画の設計図を作るフェーズです。ここで使われる用語は、プロジェクトの方向性を決定づけます。
- コンセプト (Concept)
動画の核となる「基本的な考え方」や「全体を貫くテーマ」のこと。誰に、何を伝え、どのような行動を促したいのかを明確にします。 - シナリオ/スクリプト (Scenario/Script)
動画の設計図であり、登場人物のセリフ、ナレーション、行動、シーンの展開などを時系列に沿って書き出したものです。台本とも呼ばれ、映像制作者の頭の中にあるイメージを具体化する役割を持ちます。 - 絵コンテ (Storyboard)
シナリオを基に、各シーンの映像イメージをイラストで具体的に示したものです。カメラのアングル、ショットのサイズ、登場人物の動きなどが描かれ、関係者間での完成イメージの共有に役立ちます。漫画のコマ割りのような形式で、映像の流れを視覚的に確認できます。 - ロケハン (Location Scouting)
「ロケーション・ハンティング」の略で、撮影に適した場所を探し、事前に下見をすることです。撮影場所の雰囲気や光の状況、電源の有無、騒音などを確認し、当日の撮影をスムーズに進めるための重要な準備です。
撮影現場で必須の技術用語
プロダクション(撮影)段階では、カメラや照明に関する専門的な用語が多く使われます。これらを理解することで、撮影の意図を汲み取りやすくなります。
カメラ設定の基本
カメラの基本的な設定は、映像の明るさや雰囲気を決定づける重要な要素です。
- 露出 (Exposure)
カメラのイメージセンサーに当たる光の量のこと。つまり、映像の「明るさ」を指します。露出は主に「絞り」「シャッタースピード」「ISO感度」の3つの要素で決まります。 - 絞り (Aperture) / F値 (F-stop)
レンズの中で光が通る穴の大きさのこと。F値(F1.4, F2.8, F8など)という数値で表され、数値が小さいほど穴が大きく、多くの光を取り込めて映像は明るくなります。背景のボケ具合にも影響します。 - シャッタースピード (Shutter Speed)
シャッターが開いている時間のこと。「1/60秒」「1/250秒」のように表され、時間が長いほど多くの光を取り込めて映像は明るくなりますが、動きの速い被写体はブレて写ります(モーションブラー)。 - ISO感度 (ISO Sensitivity)
カメラが光を捉える能力(感度)を数値化したもの。ISO100、400、1600のように表され、数値を上げるほど暗い場所でも明るく撮影できますが、上げすぎると映像にノイズ(ざらつき)が発生しやすくなります。暗い場所での撮影で手ブレを防ぐのに有効ですが、画質とのトレードオフになります。 - ホワイトバランス (White Balance)
太陽光、蛍光灯、電球など、様々な光源の下で「白いものが白く写る」ように色味を補正する機能です。これが適切でないと、映像全体が青みがかったり、赤みがかったりします。 - 被写界深度 (Depth of Field)
ピントが合っているように見える範囲のこと。絞り(F値)を開ける(数値を小さくする)と被写界深度は浅くなり、背景が大きくボケます。逆に絞る(数値を大きくする)と被写界深度は深くなり、手前から奥までくっきりとピントが合います。
映像の品質を決める設定
映像の見た目や滑らかさを直接的に左右する設定です。
- 解像度 (Resolution)
映像のきめ細かさを表す指標で、画素数(ピクセル数)で示されます。代表的なものにHD(1280×720)、フルHD(1920×1080)、4K(3840×2160)があり、数値が大きいほど高画質になります。 - アスペクト比 (Aspect Ratio)
映像の横と縦の比率のこと。YouTubeなどで標準的な「16:9」、正方形の「1:1」、スマートフォンの縦型動画で使われる「9:16」などがあります。配信するプラットフォームに合わせて設定する必要があります。 - フレームレート (Frame Rate / fps)
1秒間の動画が何枚の静止画で構成されているかを示す単位で、「fps(frames per second)」で表されます。映画は24fps、テレビやYouTubeは30fpsが一般的です。60fpsなど数値を高くすると、より滑らかな映像になりますが、データ量も大きくなります。
撮影技術と構図
視聴者に意図を伝え、魅力的な映像にするための技術です。
- アングル (Angle)
被写体を撮影するカメラの角度のこと。被写体を見下ろす「ハイアングル」、見上げる「ローアングル」、目線の高さで撮る「水平アングル」などがあり、それぞれ視聴者に与える印象が異なります。 - ショット (Shot)
カメラを回し始めてから止めるまでの一続きの映像のこと。被写体との距離によって、顔を大きく写す「クローズアップショット」や、全身と背景を写す「ロングショット」など様々な種類があります。 - 構図 (Composition)
画面の中に被写体や背景をどのように配置するかという構成のこと。画面を縦横に3分割して、その線や交点に被写体を置く「三分割法」は、バランスの取れた安定感のある映像を作るための基本的なテクニックです。構図を意識するだけで、映像の質は格段に向上します。 - パン/ティルト (Pan/Tilt)
カメラの向きを変える操作。カメラを固定したまま水平(左右)に振るのが「パン」、垂直(上下)に振るのが「ティルト」です。風景の広がりを見せたり、高い建物を下から上へ見せたりする際に使われます。 - 白飛び/黒つぶれ (Clipping/Crushing)
映像の明るい部分が真っ白になってディテールが失われることを「白飛び」、暗い部分が真っ黒になってディテールが失われることを「黒つぶれ」と言います。一度発生すると編集での修正は非常に困難なため、撮影時の露出設定が重要です。
照明(ライティング)の基本
光をコントロールすることは、映像のクオリティを左右する重要な要素です。被写体の立体感や雰囲気を演出し、視聴者の視線を誘導します。
- ライティング (Lighting)
照明を使って光を調整し、映像の雰囲気や質感を演出すること全般を指します。料理を美味しそうに見せたり、人物に立体感を出したりと、その効果は絶大です。 - 三点照明 (Three-Point Lighting)
人物などを撮影する際の最も基本的なライティング手法。主要な光となる「キーライト」、影を和らげる「フィルライト」、被写体を背景から際立たせる「バックライト」の3つのライトで構成されます。 - キーライト (Key Light)
被写体を照らすメインの光源。最も強く、被写体の形や質感を決定づける光です。 - フィルライト (Fill Light)
キーライトによってできる強い影を和らげるための補助光。キーライトよりも弱い光を反対側から当てるのが一般的です。 - バックライト (Backlight)
被写体の後方から当てる光。被写体の輪郭を照らし、背景から浮き上がらせることで立体感を出す効果があります。 - レフ板 (Reflector)
光を反射させる板のこと。太陽光や照明の光を反射させて、被写体の暗い部分に光を当て、明るく見せるために使います。特に逆光時や屋外での撮影で活躍します。
音声収録の基本
映像と同じくらい、あるいはそれ以上に音声は重要です。クリアな音声は視聴者のストレスを減らし、内容への集中を高めます。
- 同録 (Simultaneous Recording)
「同時録音」の略で、映像の撮影と同時に音声も収録すること。インタビューやドキュメンタリーなど、現場の臨場感を伝えたい場合に使われます。 - アフレコ/アテレコ (Post-recording/Dubbing)
「アフターレコーディング」の略。撮影後に映像に合わせて、セリフやナレーションを別途録音することです。「アテレコ」もほぼ同義で、特に外国語映画の吹き替えなどで使われます。 - SE (Sound Effect)
効果音のこと。ドアの開閉音、笑い声、キラキラした音など、演出として加えられる音全般を指します。SEを効果的に使うことで、動画のクオリティや表現力が格段に向上します。 - BGM (Background Music)
背景に流れる音楽のこと。動画の雰囲気を演出し、視聴者の感情に働きかける重要な要素です。 - ナレーション (Narration)
映像の内容を補足説明したり、物語を進行させたりするための語り。視聴者の理解を助け、メッセージを明確に伝える役割があります。
編集・仕上げ(ポストプロダクション)の重要用語
撮影された素材を、視聴者を引き込む魅力的なコンテンツへと昇華させる工程です。ここで使われる用語は、編集ソフトの操作と密接に関連しています。
編集ソフトの基本操作
動画編集ソフトで共通して使われる基本的な概念です。
- タイムライン (Timeline)
編集ソフトの作業スペースで、映像や音声、テロップなどの素材を時間軸に沿って配置する場所。動画全体の構成を管理する、編集の心臓部です。 - クリップ (Clip)
タイムライン上に配置される、映像や音声素材の断片のこと。これらのクリップを繋ぎ合わせたり、重ねたりして一本の動画を組み立てていきます。 - カット (Cut)
映像の不要な部分を切り取って削除する、動画編集の最も基本的な作業です。話の「間」を詰めたり、言い間違いを削除したりして、テンポの良い見やすい動画にします。 - トリム (Trim)
クリップの開始点や終了点を調整して、長さを短くする作業。カットと似ていますが、クリップの途中を削除するのではなく、端を短くする操作を指すことが多いです。 - テロップ (Telop)
映像に重ねて表示する字幕や文字情報のこと。話している内容を文字に起こしたり、補足情報を加えたりすることで、ミュート再生でも内容が伝わりやすくなり、視聴者の理解を深めます。 - レイヤー (Layer)
映像、テロップ、図形などを階層(層)のように重ねて配置する概念。下のレイヤーにある素材の上に、上のレイヤーの素材が重なって表示されます。
映像を彩る効果
シーンの切り替えや視覚的な演出で、動画の表現力を高めます。
- トランジション (Transition)
カットとカット、シーンとシーンのつなぎ目に加える切り替え効果のこと。映像の流れを自然にしたり、場面転換を印象的に見せたりする役割があります。 - フェードイン/フェードアウト (Fade In/Fade Out)
トランジションの一種。画面が徐々に明るくなって映像が現れるのがフェードイン、徐々に暗くなって消えるのがフェードアウトです。動画の開始や終了によく使われます。 - ディゾルブ (Dissolve)
前のカットが徐々に消えながら、次のカットが重なるように現れるトランジション。時間の経過や場面の転換を滑らかに表現するのに適しています。 - ワイプ (Wipe)
画面の一部を拭き取るように、次の映像に切り替えるトランジション。また、メイン画面の隅に小窓を表示して別の映像を同時に見せる手法(ピクチャー・イン・ピクチャー)もワイプと呼ばれます。 - エフェクト (Effect)
映像や音声に加える特殊効果の総称。映像を白黒にしたり、光を加えたり、音声を響かせたりと、様々な種類があります。動画のクオリティを高め、視聴者の印象に残る映像を作るために不可欠です。
色と最終調整
映像の最終的な見た目を整え、完成度を高める作業です。
- カラーコレクション/カラーグレーディング (Color Correction/Color Grading)
映像の色を補正・調整する作業。「カラーコレクション」は、複数のカットの色味を統一したり、ホワイトバランスを整えたりする基本的な補正を指します。一方、「カラーグレーディング」は、青みがかった映画のような雰囲気にしたり、暖かみのある印象にしたりと、より積極的な色による演出を行うことを指します。 - レンダリング (Rendering)
編集ソフトのタイムライン上で行ったカット、テロップ、エフェクトなどの編集内容を、一つの映像ファイルとして生成するための処理のこと。特に4K映像など高負荷な編集を行った場合、スムーズなプレビュー再生のためにレンダリングが必要になることもあります。
書き出しと共有に関する用語
完成した動画を、視聴できるファイル形式に変換し、納品するための最終工程です。
- エンコード (Encode)
編集後の大容量な動画データを、YouTubeなどのプラットフォームでの再生や、メールでの送受信に適したファイル形式に圧縮・変換する作業のこと。書き出しとも呼ばれます。 - コーデック (Codec)
動画や音声データを圧縮(エンコード)したり、伸長(デコード)して再生したりするためのプログラム。「H.264」や「HEVC(H.265)」などが広く使われています。 - ビットレート (Bitrate)
1秒間あたりに送受信されるデータ量を表す単位で、「bps(bits per second)」で示されます。一般的に、ビットレートが高いほど画質・音質は向上しますが、ファイルサイズは大きくなります。解像度やフレームレートに応じて適切な値を設定することが重要です。 - 拡張子 (File Extension)
ファイルの種類を識別するための、ファイル名の末尾につく文字列。「.mp4」「.mov」「.avi」などがあり、動画ファイル形式を示します。現在、Webでの利用には高画質で圧縮率も高い「.mp4」が広く普及しています。 - 完パケ (Final Master)
「完全パッケージ」の略で、全ての編集作業が完了し、納品できる状態になった最終成果物のこと。
まとめ:専門用語を理解し、質の高い動画制作へ
本記事では、動画制作の全工程にわたる50の基本用語を解説しました。これらの用語を理解することは、単に知識を増やすだけでなく、制作者やクライアントとの間で「共通言語」を持つことを意味します。これにより、イメージのズレを防ぎ、修正の手間を減らし、よりスムーズで質の高い動画制作を実現することができます。
動画は、今やビジネスにおいて欠かせないコミュニケーションツールです。今回ご紹介した用語を足がかりに、ぜひ動画制作の世界に一歩踏み出してみてください。