企業動画制作の全貌解剖:企画から納品・活用まで、成功に導く完全ガイド
企業動画制作の全貌解剖:企画から納品・活用まで、成功に導く完全ガイド
KUREBA
「自社の魅力を伝えるために、動画を活用したい」
「新商品のプロモーションで、インパクトのあるコンテンツを作りたい」
「採用活動で、求職者の心に響くメッセージを届けたい」
ビジネスのあらゆる場面で、動画の重要性が叫ばれる昨今、多くの企業担当者様がこのような想いを抱いているのではないでしょうか。テキストや静止画だけでは伝えきれない情報や感情を、短時間で豊かに表現できる動画は、現代のマーケティングにおいて不可欠なツールとなっています。
しかし、その一方で、いざ動画制作に踏み出そうとすると、多くの壁が立ちはだかります。
「動画を作りたいけれど、具体的に何から手をつければいいのか全くわからない」
「企画、撮影、編集…なんだか制作の流れが複雑そうで、考えるだけで不安になる」
「専門知識もないし、外注したいけど、どう頼めばいいのか、費用はどれくらいかかるのか見当もつかない…」
このような悩みや不安は、初めて動画制作に取り組む企業担当者様にとって、ごく自然なものです。多くの企業が同様の課題を抱えており、動画制作は企画から納品まで複数の工程があるため、初めての方にとっては複雑に感じられるかもしれません。
ご安心ください。この記事は、まさにそのようなお悩みを持つあなたのためにあります。本稿では、動画制作とWebマーケティングのプロフェッショナルである私たち「合同会社KUREBA」が、豊富な実績と知見を基に、企業動画制作の全プロセスをA to Zで徹底的に解説します。
この記事を最後までお読みいただければ、以下のことが明確になります。
- 動画制作の全体像と、企画から納品、そして活用までの具体的な流れ
- 各工程で押さえるべき重要なポイントと、よくある失敗を避けるためのコツ
- 自社に最適な制作体制(内製か外注か)を見極める判断基準
- 信頼できる制作会社を選び、スムーズにプロジェクトを進めるための秘訣
動画制作は、決して「ただ作る」ことがゴールではありません。明確な戦略のもと、正しいプロセスを経てこそ、ビジネスの成果に繋がる強力な武器となります。このガイドを羅針盤として、貴社のビジネスを加速させる動画制作プロジェクトの、確かな一歩を踏み出しましょう。
【最重要】動画制作の成否を分ける「戦略的企画フェーズ」
動画制作と聞くと、多くの人がクリエイティブな「撮影」や「編集」を思い浮かべるかもしれません。しかし、プロジェクトの成否を9割方決定づけるのは、その前段階にある「企画」フェーズです。ここで問われるのは「何を作るか(What)」よりも「なぜ作るか(Why)」という、より根源的な問いです。企画が曖昧なまま進められた動画は、たとえ映像技術が高くても、誰の心にも響かず、時間とコストを浪費しただけの「自己満足の作品」に終わってしまいます。
このフェーズは、動画という船の「航海図」を描く作業に他なりません。どこを目指し、誰を乗せ、どのような航路を辿るのか。この設計図がしっかりしているほど、動画は目的地である「ビジネス成果」へと確実に到達できるのです。ここでは、その航海図を精密に描くための5つの重要な要素を解説します。
目的(Why)と目標(Goal)の明確化
すべての始まりは、「なぜ、今、動画を作る必要があるのか?」という問いに明確に答えることから始まります。この「目的(Why)」が、動画制作全体の方向性を決定づける北極星となります。目的が曖昧だと、関係者間での認識のズレが生じ、制作途中で方向性がブレる最大の原因となります。
企業の動画活用の目的は多岐にわたります。例えば、以下のようなものが挙げられます。
- 認知度向上・ブランディング: 企業や商品・サービスの存在を広く知らしめ、好意的なイメージを構築する。
- リード(見込み客)獲得: サービス紹介や導入事例を通じて、問い合わせや資料請求を促す。
- 販売促進: 商品の魅力を具体的に伝え、購入意欲を喚起する。
- 採用強化: 企業の文化や働く人の姿を見せ、求職者の応募意欲を高める。
- 顧客教育・サポート: 製品の使い方やサービスの活用法を解説し、顧客満足度を向上させる(マニュアル動画など)。
- 社内エンゲージメント向上: 経営理念の浸透や、社内イベントの共有を通じて、従業員の結束を高める。
目的によって、制作すべき動画の種類は大きく異なります。例えば、「認知度向上」が目的ならば、多くの人の目に触れるSNS広告向けの短尺動画やテレビCMが有効でしょう。一方で、「リード獲得」を目指すなら、Webサイトに掲載する詳細なサービス紹介動画や顧客の成功事例インタビューが適しています。
目的を定めたら、次にそれを測定可能な「目標(Goal)」、すなわちKPI(重要目標達成指標)に落とし込むことが重要です。具体的な数値目標を設定することで、動画制作の方向性がより明確になり、公開後の効果測定も容易になります。「かっこいい動画」といった感覚的な評価ではなく、ビジネスへの貢献度を客観的に測るための基準です。
目的別のKPI設定例
目的 | 動画の種類(例) | KPI(目標)の例 |
---|---|---|
認知度向上 | WebCM、SNS広告動画、ブランドムービー | インプレッション(表示回数)100万回、動画視聴回数10万回、指名検索数の20%増加 |
リード獲得 | サービス紹介動画、導入事例動画、ウェビナー動画 | Webサイトからの問い合わせ数30%増、資料ダウンロード数50件/月、コンバージョン率5%達成 |
採用強化 | 採用コンセプトムービー、社員インタビュー動画 | 採用サイトへの流入数2倍、エントリー数15%増、内定承諾率の向上 |
顧客サポート | マニュアル動画、FAQ動画 | カスタマーサポートへの問い合わせ件数20%削減、Webサイトのヘルプページ滞在時間50%延長 |
このように、「なぜ作るのか」を深く掘り下げ、具体的な数値目標を設定することが、成果に繋がる動画制作の第一歩です。
ターゲット(Who)の具体化とペルソナ設定
目的が定まったら、次は「誰に、その動画を届けたいのか」を徹底的に考えます。ここで多くの企業が陥りがちなのが、「20代〜40代の男女」といった曖昧なターゲット設定です。これでは、メッセージがぼやけてしまい、結局誰の心にも刺さりません。
重要なのは、ターゲットをより具体的にした「ペルソナ」を設定することです。ペルソナとは、自社の商品やサービスにとって最も理想的な顧客像を、架空の人物として詳細に設定したものです。年齢、性別、職業、年収、家族構成といったデモグラフィック情報に加え、価値観、ライフスタイル、抱えている悩み、情報収集の方法といったサイコグラフィック情報まで、まるで実在する一人の人間のように描き出します。
ペルソナ設定の例(BtoB SaaS企業の場合)
氏名: 佐藤健太
年齢: 38歳
役職: 中小企業(従業員50名)のマーケティング部門マネージャー
課題: 少ない予算と人員で、新規リードを獲得しなければならないプレッシャーを感じている。Web広告のCPA(顧客獲得単価)が高騰しており、新しい施策を探している。日々の業務に追われ、情報収集は通勤中のスマホでのWebメディア閲覧が中心。
性格: 新しいツール導入には前向きだが、失敗を恐れ、導入事例や費用対効果のデータを重視する慎重派。
このようにペルソナを具体的に設定することで、動画制作における様々な意思決定に一貫した軸が生まれます。
- メッセージの角度: 佐藤さんのような人には、「簡単に導入できる」「費用対効果が高い」といったメッセージが響くはずです。
- トーン&マナー: 奇抜な演出よりも、信頼感のある落ち着いたトーンで、ロジカルな説明が好まれるでしょう。
- 表現方法: 専門用語を多用するのではなく、具体的な導入事例やお客様の声を交えることで、彼の不安を解消し、共感を呼ぶことができます。
- 配信媒体: 彼が通勤中に見ることを想定し、スマホでも見やすいようにテロップを大きくしたり、冒頭で結論を伝えたりする工夫が考えられます。
ペルソナを明確にすることは、動画の企画書を強化する上で不可欠です。自社が伝えたいことよりも、「ペルソナが何を知りたいか、何を感じたいか」を主軸に置くことで、初めて視聴者の心に届く動画が生まれるのです。
コアメッセージ(What)の絞り込み
動画の目的とターゲットが明確になったら、いよいよ「何を伝えるか」というコアメッセージを考えます。ここで最も重要な原則は、「欲張らないこと」です。短い動画の中で伝えられる情報量には限界があります。多くの情報を詰め込もうとすると、結局一つ一つの印象が薄まり、視聴者の記憶には何も残りません。
ある専門家は、「動画の中で伝えられるメッセージは3つまでが限界」と指摘しています。特に、30秒程度の短い広告動画であれば、伝えるべきメッセージは1つか2つに絞り込むべきです。この「選択と集中」こそが、メッセージの訴求力を高める鍵となります。
では、どのようにメッセージを絞り込むのでしょうか。それは、設定したペルソナの視点に立ち返ることです。
- ペルソナが抱える最も深刻な悩みは何か?
- その悩みを解決するために、我々の商品やサービスが提供できる最も強力な価値(ベネフィット)は何か?
- 競合他社にはない、我々だけの独自の強み(USP: Unique Selling Proposition)は何か?
これらの問いを突き詰めることで、伝えるべきメッセージの核が見えてきます。情報を削ぎ落とし、ターゲットが本当に欲している情報や課題解決に繋がるメッセージに絞り込むことが、動画の訴求力を最大化させるのです。
例えば、多機能な業務効率化ツールを紹介する場合、「機能AもBもCも全部すごい!」と羅列するのではなく、ペルソナである「多忙なマネージャー」にとって最も魅力的な「報告書作成の手間が90%削減できる」という一点に絞って訴求する方が、遥かに強力なメッセージとなります。
配信媒体(Where)と活用シーン(How)の設計
素晴らしいメッセージを込めた動画も、適切な場所で、適切な形で見てもらえなければ意味がありません。企画段階で「どこで(Where)」「どのように(How)」動画を活用するのかを具体的に設計しておくことが重要です。なぜなら、配信媒体や活用シーンによって、最適な動画の仕様(尺、アスペクト比、表現)が全く異なるからです。
考えられる主な配信媒体と活用シーンは以下の通りです。
- 自社Webサイト: トップページ、サービスページ、導入事例ページなど。比較的長い尺で、詳細な情報を提供できる。
- YouTube: チャンネルでのコンテンツ配信、またはインストリーム広告。動画SEOを意識したキーワード設定が重要。
- SNS(Instagram, X, Facebook, TikTok): タイムラインでの広告配信。冒頭数秒で惹きつける工夫や、音声なしでも伝わるテロップが必須。縦型動画が主流。
- 展示会・イベント: ブースの大型モニターで繰り返し再生。音が出せない環境も想定し、視覚的なインパクトが求められる。
- 商談・営業ツール: タブレットなどで顧客に直接見せる。サービスの複雑な仕組みや導入効果を分かりやすく伝えるのに有効。
- デジタルサイネージ: 駅や店舗のディスプレイ。短い時間で直感的に理解できる内容が適している。
どのようなシーンや手段で動画を届けるのかを事前に定めることで、制作すべき動画の具体的な要件が固まります。例えば、TikTok広告なら15秒程度の縦型動画、商談ツールなら2〜3分の横型動画で詳細な解説を入れる、といった具合です。これを決めずに制作を始めると、後から「この動画、YouTube広告には長すぎる…」「展示会で使いたいのに横型で作ってしまった…」といった手戻りが発生し、無駄なコストと時間がかかってしまいます。
構成案・シナリオ・絵コンテの作成
目的、ターゲット、メッセージ、媒体が決まったら、いよいよ動画の設計図である「構成案」「シナリオ」「絵コンテ」を作成します。これらは、頭の中にあるアイデアを可視化し、関係者全員が完成イメージを共有するための重要なドキュメントです。
構成案(プロット)
構成案は、動画全体のストーリーの流れを決める骨子です。視聴者を惹きつけ、最後まで見てもらい、最終的に意図した行動(問い合わせ、購入など)を促すための論理的な流れを設計します。一般的な動画構成のフレームワークとして、以下のようなものがよく用いられます。
- 導入(Introduction): 冒頭の数秒で視聴者の注意を惹きつける。「これは自分に関係ある」と思わせる。
- 問題提起(Problem): ターゲットが抱える課題や悩みを提示し、共感を生む。
- 解決策の提示(Solution): 問題を解決する手段として、自社の商品やサービスを紹介する。
- 具体的なベネフィット(Benefit): 商品やサービスを利用することで得られる未来(どうなれるか)を具体的に示す。
- 信頼性の担保(Proof): 導入実績、お客様の声、専門家の推薦などで信頼性を補強する。
- 行動喚起(Call to Action): 視聴者に取ってほしい具体的な行動を明確に促す。「詳しくはこちら」「無料相談はこちら」など。
また、Googleが提唱する「ABCDフレームワーク」も、特に広告動画において効果的です。
- Attract(惹きつける): 冒頭で興味を引く。
- Brand(ブランドを伝える): 早い段階でブランドを自然に登場させる。
- Connect(共感を呼ぶ): ストーリーや感情で視聴者と繋がる。
- Direct(行動を促す): 具体的な次のステップを示す。
これらのフレームワークを参考にすることで、メッセージが伝わりやすい論理的なストーリーを構築できます。
シナリオと絵コンテ
構成案が固まったら、それをさらに具体化するのがシナリオと絵コンテです。
- シナリオ: 動画内で使用するナレーション、セリフ、テロップ(画面上の文字)などを全て書き出した台本です。言葉のトーンや表現を細かく規定します。
- 絵コンテ: シナリオに合わせて、各シーンの映像(構図、登場人物の動き、カメラワークなど)をイラストで表現したものです。動画の設計図とも言えるもので、制作過程で必要な作業を洗い出す上でも重要な役割を果たします。
絵コンテがあることで、「明るい雰囲気で」といった曖昧な表現ではなく、「朝日が差し込むオフィスで、笑顔の社員たちが談笑している様子を広角レンズで捉える」といった具体的なイメージを、クライアントと制作会社の間で共有できます。これにより、「完成品がイメージと違った」という制作で最も避けたい失敗のリスクを大幅に低減できるのです。
この戦略的企画フェーズにどれだけ時間と労力をかけられるかが、動画制作プロジェクトの成功を左右します。焦らず、じっくりと、しかし徹底的に考え抜くことが何よりも重要です。
【全工程ガイド】動画制作のフローとスケジュール
戦略的な企画が固まったら、いよいよ動画を形にしていく制作フェーズへと移行します。このセクションでは、企画から納品までの一連の作業工程を時系列で詳しく解説します。全体の流れと各工程にかかる期間の目安を把握しておくことで、計画的なプロジェクト進行が可能となり、「いつまでに何をすべきか」が明確になります。あらかじめ一連の流れや全体像を把握しておくと、制作会社とのやりとりもスムーズに進めやすくなります。
全体の流れと制作期間の目安
動画制作は、大きく分けて「プリプロダクション(準備)」「プロダクション(撮影・素材制作)」「ポストプロダクション(編集・仕上げ)」の3つの段階で構成されます。一般的な制作プロセスは以下の通りです。
制作期間は、動画の内容や長さ、実写かアニメーションか、修正の回数などによって大きく変動しますが、一般的には発注から納品まで「1.5ヶ月〜3ヶ月」程度が目安とされています。例えば、企画に2〜3週間、撮影準備に1週間、撮影に数日、編集と修正に3〜4週間、MA(音響作業)と最終納品に1週間、といった内訳です。
特に注意すべきは、クライアント側の確認やフィードバックにかかる時間です。社内関係者のスケジュール調整がつかず、確認が遅れることは頻繁に起こり得ます。社内のフィードバック会議が延期になるなど、想定外のトラブルが発生することも見越して、公開希望日から逆算し、余裕を持ったスケジュールを組むことがプロジェクトを成功に導く鍵となります。
STEP1:制作準備(プリプロダクション)
プリプロダクションは、撮影や編集作業を円滑に進めるための準備段階です。ここでの準備が丁寧であるほど、後の工程でのトラブルや手戻りを防ぐことができます。まさに「段取り八分、仕事二分」を体現するフェーズです。
- キックオフミーティング: 発注者(クライアント)と制作会社の関係者が一堂に会し、最終的な意思統一を図る重要な会議です。プロジェクトの目的、ターゲット、予算、スケジュール、各担当者の役割分担などを改めて確認し、全員が同じゴールを目指すための共通認識を形成します。
- 実写の場合の準備:
- キャスティング: 動画のイメージに合った出演者(役者、モデル、社員など)を選定し、出演交渉を行います。
- ロケーションハンティング(ロケハン): 絵コンテのイメージに合う撮影場所を探し、使用許可の申請や撮影環境(電源、控室、天候の影響など)の確認を行います。
- 香盤表の作成: 撮影当日のスケジュールを分単位で記した工程表です。いつ、どこで、誰が、どのシーンを撮影するのかを詳細に計画し、関係者全員に共有します。
- 小道具・衣装の準備: 撮影に必要な小道具や出演者の衣装を手配します。
- アニメーションの場合の準備:
- イラストテイストの決定: 動画全体のトーン&マナーを決定づけるイラストのスタイル(シンプル、写実的、ポップなど)を、複数のサンプルから選定します。
- キャラクターデザイン: 登場するキャラクターの見た目や表情、服装などをデザインします。
- ナレーター選定: 動画の雰囲気に合った声質のナレーターを、複数の候補(ボイスサンプル)から選び、手配します。
プロの視点
このプリプロダクション段階での「詰めの甘さ」が、後のプロダクション、ポストプロダクション段階で大きなトラブル(スケジュールの遅延、予算の超過、クオリティの低下)を引き起こします。適切な計画がなければ、過剰な支出やスケジュールの遅延といった問題につながる可能性があります。例えば、ロケハンの確認不足で当日に必要な電源が確保できない、キャスティングした役者のスケジュールを再確認していなかった、といった事態は致命的です。細部にわたる入念な準備こそが、プロフェッショナルな仕事の証です。
STEP2:撮影・素材制作(プロダクション)
いよいよ、計画を形にするプロダクションのフェーズです。実写とアニメーションで作業内容は大きく異なります。
実写の場合:撮影
撮影当日は、香盤表に沿って効率的に進行します。監督、カメラマン、照明、音声など多くのスタッフが連携し、一つのシーンを作り上げていきます。
クライアント(発注者)側が注意すべき点は以下の通りです。
- 決裁権を持つ担当者の立ち会い: 実写動画は後から修正が効かないため、OKを出す決裁者が必ず撮影現場に立ち会うことが推奨されます。完成後に「商品の角度が違う」「この背景は映ってほしくなかった」となっても手遅れです。その場で判断し、指示を出すことで、撮り直しという最悪の事態(多額の追加費用とスケジュールの遅延)を防ぐことができます。
- 予備カットの撮影: 絵コンテ通りのカットだけでなく、様々なアングルや寄り・引きのカット、後で使うかもしれない小物の映像など、予備の素材を多めに撮影しておくことが重要です。編集段階で「あのカットも欲しかった」と思っても後の祭りなので、できる限り多くの映像を残しておくことが、編集の幅を広げ、動画のクオリティを高めることに繋がります。
アニメーションの場合:素材制作
アニメーション制作では、撮影の代わりにイラストやグラフィック素材の制作が進められます。キャラクター、背景、アイコン、グラフなど、絵コンテに基づいて必要なビジュアル要素を一つ一つ作り上げていきます。その後、これらの静的な素材に動き(モーション)をつけ、アニメーションとして命を吹き込んでいきます。
この工程では、定期的な進捗確認が重要です。例えば、「キャラクターデザインの初稿 → クライアント確認・修正 → 清書」「主要シーンのアニメーションのドラフト版 → クライアント確認・修正 → 本制作」といったように、段階的にレビューの機会を設けることで、方向性のズレを早期に発見し、修正することができます。実写と違い、後からの修正が比較的容易なのがアニメーションの利点ですが、それでも工程が大きく進んでからの大幅な変更は、追加の工数と費用を要します。
コラム:動画の質を格段に上げる撮影の基本テクニック
プロの現場では様々なテクニックが使われますが、初心者でも意識するだけで映像の質が向上する基本的なポイントがいくつかあります。
- 手ブレを防ぐ: 手ブレした映像は見づらく、視聴者の離脱に繋がります。三脚を使ってカメラを固定するのが基本中の基本です。カメラを動かす際も、ゆっくり滑らかに動かすことを意識します。
- 照明を意識する: 照明は映像の雰囲気を決定づける重要な要素です。被写体が明るくクリアに映るように、自然光を活用したり、照明機材(レフ板など)を使ったりします。白い壁やカーテンの前で撮影するだけでも、光が反射して顔色を明るく見せる効果があります。
- 構図を工夫する: 被写体を常に真ん中に置く「日の丸構図」ばかりでは単調になります。画面を三分割してその線上に被写体を配置する「三分割法」などを活用すると、バランスの取れた魅力的な画になります。
- 様々なアングルで撮る: 同じ被写体でも、正面からだけでなく、斜め、下から、上からなど、様々な角度から撮影することで、映像にリズム感が生まれます。
STEP3:編集・MA(ポストプロダクション)
撮影・素材制作が終わると、映像を仕上げるポストプロダクションの工程に入ります。ここでは、バラバラの素材が一本の魅力的な動画へと生まれ変わります。
編集作業
編集は、動画のクオリティとテンポを決定づける心臓部です。
- カット編集: 撮影した映像素材の中からOKカットを選び出し、絵コンテの構成に沿って繋ぎ合わせていきます。不要な部分や「間」をカットすることで、テンポの良い視聴しやすい動画になります。
- テロップ・グラフィック挿入: 伝えたい情報を補強するための字幕(テロップ)や、図、グラフなどを挿入します。フォントの種類や色、表示するタイミングも演出の重要な要素です。
- BGM・効果音の追加: 動画の雰囲気に合ったBGMや、場面を盛り上げる効果音(SE)を選定し、映像に合わせて配置します。
- カラーコレクション(色調補正): 映像全体の色味を調整し、トーンを統一したり、特定の雰囲気を強調したりします。例えば、温かみのある色合いにして親しみやすさを演出したり、青みがかった色にしてクールで先進的な印象を与えたりします。
レビュープロセス(試写とフィードバック)
編集がある程度進んだ段階で、制作会社から初稿(最初のバージョン)が提出されます。クライアントはこれを「試写」し、企画意図と合っているか、修正すべき点はないかを確認します。このフィードバックのやり取りが、動画の完成度を高める上で非常に重要です。
修正指示を出す際のコツは、「具体的」かつ「まとめて」伝えることです。「なんだかイメージと違う」といった抽象的な指摘ではなく、「5秒目のテロップの文言を『〇〇』に変更してください」「15秒からのBGMの音量をもう少し下げてください」のように、誰が見ても分かるように具体的に指示します。また、修正依頼は一度にまとめて伝えることで、制作会社側の作業効率が上がり、結果的にスムーズな進行に繋がります。
MA(Multi Audio)
映像の編集が完了(画完パケ)したら、最終的な音の仕上げ作業であるMAを行います。専用のスタジオで、ナレーターが映像に合わせてナレーションを収録し、BGM、効果音、セリフなど全ての音のバランスを最終調整します。本格的なスタジオMAは、原則としてクライアント立ち会いのもとで行われ、その場で音の強弱やタイミングの微調整を行い、動画を完成させます。
STEP4:最終試写・納品
全ての編集・MA作業が完了したら、最終的な完成品を関係者全員で試写します。これが納品前の最後のチェック機会です。誤字脱字、映像の乱れ、音声のバランスなど、細部に至るまで最終確認を行います。
ここで問題がなければ、クライアントは検収(受領)となり、プロジェクトは完了です。制作会社から指定された形式(MP4ファイルが一般的)で動画データが納品されます。
【重要】契約内容の再確認
納品をもってプロジェクトは一区切りですが、最後に契約書の内容を再確認しておくことが、将来のトラブルを防ぐために重要です。
- 納品後の修正対応: 多くの制作会社では、受領後の修正は有償対応となる契約になっています。軽微な修正でも追加費用が発生する可能性があるため、最終試写でのチェックは慎重に行いましょう。
- 著作権・二次利用の権利: 制作された動画の著作権は誰に帰属するのか、また、クライアントはどの範囲まで動画を二次利用できるのか(例:Webサイトだけでなく、テレビCMでも使用可能かなど)を明確に確認します。著作権や二次利用に関する認識の甘さが、後々のトラブルに繋がるケースは少なくありません。
内製か外注か?自社に最適な動画制作体制の見極め方
動画活用の重要性を認識し、いざ制作に乗り出そうと考えたとき、企業は「自社で作る(内製)」か「プロに頼む(外注)」かという大きな選択を迫られます。どちらの選択肢にも一長一短があり、自社の目的、予算、リソース、そして動画に求めるクオリティによって、最適な答えは異なります。動画はビジネスツールとして大きく注目されており、制作方法には外注か内製の選択肢があります。このセクションでは、両者のメリット・デメリットを客観的に比較し、貴社にとって最適な制作体制を見極めるための判断軸を提供します。
比較早見表:内製 vs 外注
まずは、内製と外注の主な違いを5つの観点から比較してみましょう。
比較観点 | 内製(自社制作) | 外注(制作会社への依頼) |
---|---|---|
コスト | 初期投資(機材・ソフト)は必要だが、制作ごとの費用は抑えられる。長期的に見れば低コスト。 | 専門家への対価として制作ごとに費用が発生。一般的に高コストになりやすい。 |
クオリティ | 担当者のスキルに依存。専門的な品質を安定して出すのは難しい。 | 高い専門性と豊富な機材により、高品質な動画が期待できる。客観的な視点でのクオリティ管理。 |
スピード | 社内調整のみで進められるため、迅速な対応が可能。急な変更にも柔軟。 | 契約やコミュニケーションに時間がかかる場合がある。一般的に1.5〜3ヶ月程度の期間が必要。 |
柔軟性・修正対応 | 非常に高い。細かな修正や急な変更にもすぐに対応できる。 | 契約範囲内での対応が基本。追加の修正には費用や時間がかかることが多い。 |
ノウハウ蓄積 | 制作経験を通じて、スキルや知識が社内に蓄積される。人材育成に繋がる。 | ノウハウは制作会社に帰属。社内に知見は貯まりにくい。 |
この表からもわかるように、どちらか一方が絶対的に優れているわけではなく、トレードオフの関係にある要素が多いことが見て取れます。
内製(自社制作)が向いているケース
内製化の最大の魅力は、コストコントロールとスピード感にあります。都度発生する外注費用を削減でき、長期的に見ると低コストでの制作を実現できるのが大きなメリットです。また、社内でのコミュニケーションで完結するため、企画から公開までのリードタイムを短縮でき、急な修正や変更にも柔軟に対応できます。
さらに、制作を続けることで社内にノウハウが蓄積され、担当者のスキルアップや、会社全体のクリエイティブ能力の向上に繋がるという副次的な効果も期待できます。
一方で、デメリットも存在します。最も大きな課題は「クオリティの担保」です。専門的な撮影機材や編集ソフトを揃えたとしても、それを使いこなすスキルがなければ、プロレベルの品質を出すのは困難です。また、動画制作は多くの工数を要するため、担当者が他の業務と兼務している場合、リソースが圧迫され、かえって制作が長期化するリスクもあります。
内製が向いている動画の例:
- 頻繁な更新が必要なSNS用の短尺動画
- 社内イベントの記録や、社員向けの研修・マニュアル動画
- Webサイトに掲載する、社員インタビューなどのカジュアルなコンテンツ
- 本格的な動画制作を始める前の、テストマーケティング的な取り組み
外注(制作会社への依頼)が向いているケース
外注の最大のメリットは、なんといっても「クオリティの高さ」と「専門性」です。制作会社は、目的やターゲットに合わせた戦略的な企画提案から、高品質な撮影・編集までを一貫して任せられるプロフェッショナル集団です。自社にはない客観的な視点から、より効果的な表現方法を提案してくれることも少なくありません。
また、動画制作に関わる煩雑な業務(企画、キャスティング、ロケハン、編集など)を全て任せられるため、社内の担当者は本来のコア業務に集中することができます。これは、人的リソースが限られている企業にとって大きなメリットと言えるでしょう。
デメリットとしては、やはりコスト面が挙げられます。自社のリソースを割かずに高品質な動画を制作するためには、それ相応の費用が必要となります。また、制作会社とのコミュニケーションや、社内での承認プロセスに時間がかかり、内製に比べてスピード感が劣る場合もあります。
外注が向いている動画の例:
- 企業の「顔」となる、コーポレートサイトのPR動画やブランドムービー
- 売上に直結する、商品・サービスのプロモーション動画やWebCM
- 企業の未来を左右する、採用動画やIR(投資家向け)動画
- 複雑なCGや高度なアニメーションなど、専門技術が必要な動画
結論:目的達成を最優先するならプロへの外注が賢明
最終的にどちらを選ぶべきか。その判断基準は、「動画制作の目的を達成できるか」という一点に尽きます。もし、動画制作の目的が「企業のブランディング向上」や「売上増加」といった高い成果を求めるものであるならば、専門的な知識と豊富な経験を持つプロ、すなわち制作会社へ外注することが、最も確実で賢明な選択と言えるでしょう。初期コストはかかりますが、成果の出ない動画を内製で作り続けることに比べれば、遥かに高い投資対効果が期待できます。
失敗しない!信頼できる動画制作会社の選び方と依頼のコツ
「外注する」と決断したものの、次に担当者を悩ませるのが「どの制作会社に頼めばいいのか」という問題です。国内には数多くの動画制作会社が存在し、それぞれに得意分野や特徴があるため、自社に最適なパートナーを見つけ出すのは容易ではありません。料金や納期といった分かりやすい要素だけでなく、企画力やクオリティなど、選ぶ基準は様々です。このセクションでは、外注で失敗しないために、依頼前に準備すべきことと、信頼できる制作会社を見極めるための具体的なポイントを解説します。
依頼前に準備すべき「ヒアリングシート」
制作会社に問い合わせる前に、社内で動画制作に関する要望を整理し、一枚のシートにまとめておくことを強くお勧めします。これを「ヒアリングシート」と呼びます。ヒアリングシートを準備しておくことで、制作会社は依頼者の意図を正確に把握し、それに沿った具体的な企画を練ることができます。これにより、初回の打ち合わせから精度の高いコミュニケーションが可能となり、結果的にプロジェクト全体の進行がスムーズになります。
最低限、以下の項目は整理しておきましょう。
ヒアリングシート必須項目チェックリスト
- □ 制作の目的 (Why): なぜ動画を作るのか?(例:新サービスの認知度向上)
- □ ターゲット (Who): 誰に見てほしいのか?(例:30代のIT部門担当者)
- □ 伝えたいコアメッセージ (What): 動画で最も伝えたいことは何か?(例:導入すれば業務時間が半分になる)
- □ 予算 (How much): 動画制作にかけられるおおよその費用はいくらか?
- □ 納期 (When): いつまでに動画が必要か?(公開希望日)
- □ 配信媒体・活用シーン (Where/How): どこで、どのように使う動画か?(例:WebサイトとYouTube広告)
- □ 参考動画 (Image): イメージに近い動画のURLを2〜3本。好きな点、真似したくない点を具体的に記述。
- □ 動画の尺・本数: 希望する動画の長さと制作本数。
特に「参考動画」は、言葉では伝えきれないニュアンスやトーン&マナーを共有する上で非常に有効です。「かっこいい感じ」という曖昧な言葉よりも、「この動画の冒頭5秒のようなスピード感」と伝える方が、遥かに正確にイメージが伝わります。
信頼できる制作会社を見極める5つのポイント
ヒアリングシートを準備したら、複数の制作会社に問い合わせ、提案と見積もりを依頼します。その際、どの会社が自社のパートナーとしてふさわしいかを見極めるために、以下の5つのポイントをチェックしましょう。
1. 実績と得意分野
まず確認すべきは、その会社の過去の実績(ポートフォリオ)です。自社が属する業界や、作ってほしい動画のジャンル(例:採用動画、サービス紹介アニメーション)での制作実績が豊富かどうかを確認します。実績が多ければ、その分野特有の課題や表現のツボを理解している可能性が高く、安心して任せることができます。Webサイトに掲載されている実績だけでなく、可能であれば非公開の実績も見せてもらうと良いでしょう。
2. 企画・提案力
優れた制作会社は、単なる「作業代行業者」ではありません。クライアントのビジネス課題を深く理解し、その解決策として最適な動画活用を提案してくれる「戦略パートナー」です。単なる撮影や編集だけでなく、目的に応じた構成や演出を具体的に提案できる会社を選びましょう。ヒアリングシートの内容を鵜呑みにするだけでなく、「こちらの目的を達成するためには、ターゲットを少し変えて、こういうメッセージを訴求した方が効果的ではないか」といった、プロならではの視点で踏み込んだ提案をしてくれる会社は信頼できます。
3. コミュニケーションの円滑さ
動画制作は、数ヶ月にわたる共同作業です。そのため、担当者とのコミュニケーションがスムーズに行えるかどうかは、プロジェクトの成否を左右する重要な要素です。フィードバックなど双方のコミュニケーションが頻繁に発生するため、スムーズに進むと感じた制作会社を選ぶのがおすすめです。レスポンスの速さや丁寧さはもちろん、「こちらの意図を正確に汲み取ってくれるか」「専門用語を分かりやすく説明してくれるか」「相談しやすい雰囲気か」といった相性も大切にしましょう。
4. 見積もりの透明性
「費用」は会社選定の大きな要素ですが、単純な金額の安さだけで選ぶのは危険です。「安かろう悪かろう」では本末転倒です。重要なのは、見積もりの「透明性」です。見積書には、企画費、人件費(ディレクター、カメラマン等)、機材費、編集費、MA費といった内訳が詳細に記載されているかを確認しましょう。何にいくらかかるのかが明確であれば、金額の妥当性を判断しやすくなります。「一式」といった大雑把な見積もりしか出してこない会社は注意が必要です。また、修正回数の上限や、追加費用が発生する条件なども事前に確認しておくべきです。
5. 対応範囲とアフターフォロー
どこからどこまでの工程を任せられるのか、対応範囲を明確に確認しましょう。企画から丸投げしたいのか、撮影だけを依頼したいのかによって、選ぶべき会社は変わります。さらに、映像制作の真価は、納品後の活用戦略によって大きく左右されます。そのため、動画を納品して終わりではなく、その後の活用方法の相談に乗ってくれたり、効果測定や改善提案といったアフターフォローまでサポートしてくれたりする会社であれば、長期的なパートナーとして非常に心強い存在となるでしょう。
[参考] 動画制作の費用相場
動画制作の費用は、動画の種類、尺、クオリティ(撮影規模、CGの有無など)によって大きく変動するため一概には言えませんが、予算を立てる上での参考として、種類別のおおまかな費用相場を以下に示します。これはあくまで目安であり、実際の費用は個別の要件によって大きく異なることをご理解ください。
例えば、セミナー動画は内容が決まっているため比較的低コスト(20〜50万円)で制作できる一方、プロモーション動画は企画や演出に凝るため平均相場が100万円を超えることもあります。自社の予算と目的を照らし合わせ、どのレベルの動画を目指すのかを制作会社とすり合わせることが重要です。
「作って終わり」にしない。動画の効果を最大化する活用・分析フェーズ
多くの企業が陥りがちなのが、動画を「作って納品されたらゴール」と考えてしまうことです。しかし、ビジネスで成果を出すためには、むしろ公開してからが本当のスタートです。どれだけ素晴らしい動画を制作しても、ターゲットに届き、視聴され、意図した行動を促せなければ、その価値は半減してしまいます。このセクションでは、制作した動画の効果を最大化し、次の施策へと繋げるための「活用・分析フェーズ」について解説します。
公開プラットフォームへの最適化
動画を公開する際には、各プラットフォームの特性に合わせて最適化を行うことが、視聴される確率を高める上で不可欠です。これは「動画SEO(Search Engine Optimization)」とも呼ばれ、検索結果や関連動画で上位に表示されやすくするための施策です。
- タイトル: 視聴者が検索しそうなキーワードを含めつつ、クリックしたくなるような魅力的なタイトルをつけます。キーワードを前方に配置し、具体的な数値や感情に訴える言葉を入れると効果的です。(例:「【初心者必見】たった10分でわかる動画制作の全工程」)
- 説明文(概要欄): 動画の内容を要約し、関連キーワードを自然に盛り込みます。Webサイトへのリンクや、関連動画へのリンクを設置し、視聴者を次のアクションへ誘導します。
- タグ: 動画の内容に関連するキーワードを複数設定します。これにより、プラットフォームが動画の内容を理解し、関連性の高いユーザーにおすすめ表示しやすくなります。
- サムネイル: 視聴者が動画を見るかどうかを判断する最も重要な要素の一つです。動画の内容が一目でわかり、思わずクリックしたくなるような、インパクトのあるデザインを心がけます。
これらの要素を適切に設定することで、動画が検索エンジンに理解されやすくなり、検索結果でのランキング向上を目指せます。プラットフォームのアルゴリズムを理解し、それに合わせた最適化を行うことが、動画活用の第一歩です。
効果測定とROIの考え方
動画を公開したら、必ず効果測定を行いましょう。「なんとなく再生されているようだ」という感覚的な評価ではなく、データに基づいて成果を客観的に評価することが重要です。データを取って終わりにせず、そのデータを活かした改善に結びつけることが、動画マーケティングを成功させる鍵です。
測定すべき指標は、企画フェーズで設定したKPI(重要目標達成指標)です。Google AnalyticsやYouTube Studioなどのツールを活用して、以下のような指標を定期的にチェックします。
- 視聴回数・インプレッション数: どれだけ多くの人に見られたか、表示されたか。
- 視聴者維持率: 視聴者が動画のどの部分まで見て、どこで離脱したか。離脱が多い箇所は、内容が退屈、または分かりにくい可能性があります。
- クリック率(CTR): サムネイルが表示された回数のうち、どれだけクリックされたか。サムネイルやタイトルの魅力度を測る指標です。
- エンゲージメント数: 高評価、コメント、共有の数。視聴者の関心度や共感度を示します。
- コンバージョン数: 動画経由での問い合わせ、資料請求、商品購入の数。ビジネスへの直接的な貢献度を測る最も重要な指標です。
そして、これらの成果を投資額と比較し、費用対効果を測る指標が「ROI(Return On Investment)」です。
ROIの計算式:
ROI (%) = (動画によって得られた利益 ÷ 動画制作への投資額) × 100
ROIを算出することで、投資したコストに対して、事業がどれだけ利益を上げたかを客観的に判断できます。例えば、100万円かけて制作した動画が、300万円の利益を生み出した場合、ROIは200%となります。この数値が100%を上回っていれば、投資は成功したと言えます。
PDCAサイクルを回す
効果測定で得られたデータは、次のアクションに繋げてこそ意味があります。動画マーケティングは、一度で完璧な結果が出ることは稀です。分析結果を元に、継続的に改善を繰り返す「PDCAサイクル」を回すことが重要です。
- Plan(計画): 目的・目標を設定し、動画を企画・制作する。
- Do(実行): 動画を公開し、プロモーションを行う。
- Check(評価): KPIを元に効果測定を行い、成果と課題を分析する。
- Action(改善): 分析結果に基づき、改善策を立案し、次の動画企画や既存動画の修正に活かす。
例えば、「視聴者維持率が動画の中盤で急激に低下している」というデータが得られたら、「中盤の説明が専門的すぎて分かりにくいのかもしれない。次は図解アニメーションを多用してみよう」といった仮説を立て、次の企画に反映させます。また、「AのサムネイルよりBのサムネイルの方がクリック率が高い」という結果が出れば、他の動画のサムネイルもBのテイストに寄せていく、といった改善が考えられます。
このように、データに基づいた改善を繰り返すことで、動画マーケティングの精度は着実に向上していきます。信頼できる制作会社の中には、納品後の配信サポートやA/Bテスト、配信結果からの課題分析といったフォローアップまで提供してくれるところもあります。制作だけでなく、活用フェーズまで見据えたパートナーシップを築くことが、長期的な成功に繋がるのです。
まとめ:成功する動画制作は、信頼できるパートナーと共に
本稿では、企業が動画制作を成功させるための全工程を、企画から納品、そして活用まで網羅的に解説してきました。非常に多くのステップと考慮すべき点があり、その複雑さに改めて驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、成功への道筋は、突き詰めれば以下の4つの要点に集約されます。
- ① 戦略的な「企画」で土台を固める: 「なぜ作るのか」「誰に何を伝えたいのか」という根幹を徹底的に突き詰めること。これが動画の骨格となり、全ての判断の拠り所となります。
- ② 制作全体の「流れ」を把握する: 各工程で何が行われ、どれくらいの時間が必要かを知ること。これにより、計画的なプロジェクト管理が可能となり、予期せぬトラブルを回避できます。
- ③ 自社に合った「制作体制」を選ぶ: 内製と外注のメリット・デメリットを理解し、動画の目的と自社のリソースに最適な方法を選択すること。
- ④ 信頼できる「パートナー」と協力する: 特に外注を選択する場合、単なる作業者ではなく、ビジネス課題を共有し、共に成功を目指せるパートナー(制作会社)を見つけることが何よりも重要です。
動画は、もはや一部の先進的な企業だけのものではありません。あらゆる企業にとって、顧客との関係を築き、ビジネスを成長させるための強力なコミュニケーションツールです。このガイドが、貴社にとってその第一歩を踏み出すための、そしてその歩みを成功へと導くための一助となれば幸いです。
「何から相談していいかわからない」
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合同会社KUREBAでは、Webマーケティング戦略全体を見据えた動画制作をご提案します。企画の段階から効果測定まで、一貫してサポート可能です。ぜひお気軽にご相談ください。