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【静岡県東部の就労支援事業所様へ】利用者のPCスキル訓練と職員の業務効率化を両立する、新しいITソリューション活用法

2025年7月20日

【静岡県東部の就労支援事業所様へ】利用者のPCスキル訓練と職員の業務効率化を両立する、新しいITソリューション活用法

KUREBA

静岡県東部の就労支援が直面する「二つの壁」

静岡県内の就労支援事業所の皆様は、日々、利用者の可能性を信じ、その自立と社会参加に向けて尽力されていることと存じます。近年、障害者雇用を取り巻く環境は大きな変革期を迎えています。平成30年(2018年)4月には精神障害者が法定雇用率の算定基礎に加えられ、民間企業の法定雇用率は2.2%(現在は2.5%、2026年7月には2.7%へ段階的に引き上げ)へと上昇しました。静岡県も企業の障害者雇用を積極的に推進しており、就労支援事業所の役割はますます重要性を増しています。

しかし、この期待の高まりとは裏腹に、多くの事業所が深刻な課題に直面しているのではないでしょうか。本稿では、それらの課題を「二つの壁」として整理し、その解決策を探ります。

第一の壁:【利用者の未来への壁】求められるスキルの高度化

かつて、就労支援における職業訓練は、軽作業や清掃、あるいはMicrosoft Office(Word, Excel)の基本操作が中心でした。しかし、社会のデジタル化、特にコロナ禍を経てテレワークが一般化した現代において、企業が求めるスキルセットは劇的に変化しています。

「ここ数年で新たに就労移行支援サービスのパソコンスキルとしてプログラミングやWebデザイン制作のITスキルを習得できるようになってきました。」

このように、一部の先進的な事業所では、より専門的なITスキルの提供が始まっています。これは、利用者がより高い工賃・賃金を得て、安定した一般就労へと移行するためには、もはや避けて通れない道です。テクノロジーの進化は、障害の種類や程度に関わらず、在宅勤務や多様な職種での活躍を可能にする大きなチャンスをもたらしています。このチャンスを活かすためには、訓練内容そのものをアップデートし続ける必要があります。

第二の壁:【事業所運営の壁】深刻化する業務負担と人材不足

一方で、事業所の内部に目を向けると、支援員の皆様が抱える業務負担は限界に近づいています。日々の支援記録、個別支援計画書の作成・更新、煩雑な国保連への請求業務、利用者の勤怠管理、工賃計算…。これらの事務作業に追われ、本来最も時間を割くべき利用者一人ひとりへの丁寧な向き合いや、新しい訓練プログラムの開発、営業活動といった創造的な業務に手が回らない、というジレンマが生じています。

「特に、支援内容の記録や書類作成に時間を取られることが多く、業務が圧迫される一方で、ヒューマンエラーのリスクも高まります。その結果、事業所が本来注力すべき利用者への直接的な支援が制限されてしまうという課題が生じています。」

この問題は、職員の疲弊や離職に繋がりかねず、事業所運営の根幹を揺るがす深刻なリスクです。紙媒体やExcelでの管理から脱却し、ICTを活用した業務効率化は、もはや「推奨」ではなく「必須」の課題と言えるでしょう。

問題提起:二つの壁を同時に打ち破る視点

「利用者のスキルアップ」と「職員の業務効率化」。これらは一見、別々の問題に見えるかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか?

本記事では、この二つの課題を個別に捉えるのではなく、ITソリューションを核として統合的に解決する新しいアプローチを提案します。具体的には、外部企業から実際のIT業務を受託し、その業務プロセス自体を「利用者の実践的な訓練の場」とし、同時にその過程で導入されるITツールを「事業所の業務効率化」に活用する、というモデルです。

この記事が、静岡県東部地域の特性を踏まえ、貴事業所が未来に向けて新たな一歩を踏み出すための具体的なヒントとなれば幸いです。


第1部:データで見る「静岡県東部」の就労環境と事業所の課題

提案するソリューションの有効性を理解するためには、まず私たちが事業を展開する「静岡県東部」というフィールドの特性と、就労支援の現場が直面するマクロ・ミクロ両面の課題を客観的に把握することが不可欠です。

静岡県東部地域の産業構造と人口動態

静岡県東部地域(沼津市、三島市、富士市、富士宮市、御殿場市など)は、首都圏から100km圏内という地理的優位性を持ち、製造業を中心に多くの企業が集積しています。特に富士山の豊富な水源を活かした製紙・化学工業や、県東部の流通拠点としての役割が大きな特徴です。静岡県全体として、製造品出荷額は全国トップクラスであり、2000年から2023年の累計工場立地件数は全国1位を誇ります。

しかし、その一方で、地域は深刻な人口減少という課題に直面しています。静岡県全体の人口は減少傾向にあり、特に東部地域は自然動態・社会動態ともに県平均を上回るペースで減少しています。これは、労働力人口の減少を意味し、地域経済の活力を維持するためには、多様な人材の活躍が不可欠であることを示唆しています。障害のある方々を含め、誰もがその能力を最大限に発揮できる環境を整えることは、地域全体の持続可能性に関わる重要なテーマなのです。

この「製造業中心の産業構造」と「人口減少」という二つの特徴は、就労支援事業所の運営に直接的な影響を与えます。製造業からは安定した軽作業などの仕事を受注しやすい一方で、地域の産業構造がDX(デジタルトランスフォーメーション)の波に乗り遅れた場合、利用者が習得したスキルと企業が求めるスキルとの間にミスマッチが生じるリスクをはらんでいます。また、人口減少は、将来的に地域の企業からの仕事量そのものが減少する可能性も示唆しており、事業所はより付加価値の高い、地域を越えて受注できるような業務を開拓する必要に迫られています。

就労支援の現場で求められるスキルの変化

現代のビジネス環境は、IT技術の進化によって急速に変化しています。AI(人工知能)、クラウドコンピューティング、RPA(Robotic Process Automation)といった技術は、もはや一部の先進企業だけのものではなく、あらゆる業界で標準的なツールとなりつつあります。

この変化は、障害のある方の働き方にも大きな可能性をもたらしています。例えば、発達障害のある方が持つ特定の分野への集中力や論理的思考力は、AIやデータサイエンス、RPAといった先端IT分野で大きな強みとなることが知られています。従来の訓練メニューに固執することは、利用者の持つ潜在能力を開花させる機会を奪いかねません。

さらに、コロナ禍を経て定着したテレワーク(在宅勤務)は、通勤が困難な方や対人関係にストレスを感じやすい方にとって、有力な働き方の選択肢となりました。厚生労働省も障害のある方のテレワーク就労を支援するマニュアルを公開しており、オンラインでのコミュニケーション能力や自己管理能力、そしてICT機器を円滑に使いこなすスキルは、今や必須と言えるでしょう。

図2: 障害種別ごとのハローワークを通じた就職件数の推移(全国)。精神障害者の就職件数が大きく伸びていることがわかる。
(出典:パーソル総合研究所の調査「精神障害者雇用の現場マネジメントについての定量調査」で引用されているデータを基に作成)

上のグラフが示すように、精神障害のある方の就職件数は年々増加しています。しかし、その一方で、精神障害のある方の職場定着率は他の障害に比べて低いという課題も指摘されています。このギャップを埋める鍵の一つが、本人の特性と企業のニーズに合致した、実践的なスキル訓練と、柔軟な働き方(テレワークなど)の提供にあるのです。

事業所運営における「見えないコスト」

利用者を取り巻く環境が変化する一方で、事業所内部の運営課題も深刻化しています。特に、日々の事務作業に潜む「見えないコスト」は、経営を静かに圧迫します。

  • 手作業による膨大な事務負担: 紙ベースの実績記録票への記入とサイン受領、Excelでの複雑な工賃計算と転記作業。これらは時間がかかるだけでなく、入力ミスや計算間違いといったヒューマンエラーの温床です。エラーの修正にかかる時間は、さらなる負担となります。
  • 経営を圧迫する制度改定: 2024年度の報酬改定では、特に就労継続支援A型において生産活動収支(売上から経費を引いた額)が賃金総額を上回ることの重要性が増しました。これは、事業所がより収益性の高い、高単価な仕事を受注する必要があることを意味します。従来の軽作業だけでは、この基準をクリアし、利用者に十分な賃金を支払うことが困難になりつつあります。
  • 情報の非対称性と機会損失: 静岡県内の一部の事業所では、事業所の情報が十分に公開されておらず、利用者が自分に合った事業所を選びにくいという問題が指摘されています。これは裏を返せば、優れた訓練プログラムを持つ事業所であっても、その強みを効果的に発信できず、利用者や企業とのマッチング機会を逃している可能性があるということです。

これらの課題は、職員のモチベーション低下を招き、支援の質の低下に直結します。そして何より、貴重なリソース(時間、人材、資金)を消耗させ、事業所が未来に向けて成長するための投資を妨げる大きな要因となっているのです。

第1部のキーポイント

  • 地域特性: 静岡県東部は製造業が盛んだが人口減少が課題。地域内だけでなく、より広域から受注できる高付加価値な業務の開拓が求められる。
  • スキル需要の変化: テレワークの普及とIT技術の進化により、Officeスキルに加え、クラウド活用やRPAなど、より専門的なPCスキルが求められている。
  • 運営の課題: 手作業による事務負担と報酬改定による収益性向上のプレッシャーが、事業所運営を圧迫。「見えないコスト」の削減が急務である。

第2部:【本稿の核心】PC訓練と業務効率化を両立する「IT業務受託モデル」

第1部で明らかになった「利用者のスキル高度化」と「事業所の業務効率化」という二つの壁。これらを乗り越えるため、本稿では発想の転換を提案します。それは、**「訓練のための訓練」から「実践としての訓練」へ**というパラダイムシフトです。

具体的には、外部の一般企業からPCを活用する実際の業務(データ入力、資料作成、Web更新、RPA開発、クラウド運用支援など)を受託し、その業務プロセス自体を「利用者のための職業訓練プログラム」として再構築するモデルです。この「IT業務受託モデル」は、利用者が生きたスキルを習得する場と、事業所が収益を上げる事業活動を一体化させます。さらに、この過程で導入・活用するITツールが、そのまま事業所職員の業務効率化にも貢献するという、一石三鳥の仕組みです。

ここでは、このモデルを支える二つの具体的なITソリューション、「クラウドソリューション」と「RPA」に焦点を当て、その活用法を詳述します。

具体的なソリューション①:クラウドソリューションの活用

クラウドソリューションとは、インターネット経由でソフトウェアやデータストレージ、開発環境などを利用するサービスの総称です。今や多くの企業で、情報共有や業務管理の基盤として活用されています。これを就労支援の現場に導入することで、訓練と業務効率化の両面で大きな効果が期待できます。

訓練としての側面:即戦力となるビジネススキルの習得

企業からクラウド関連の業務を受託することで、利用者は単なるツールの使い方を学ぶだけでなく、実際のビジネスシーンで求められるスキルを体系的に習得できます。

  • 実践的なツール活用: Microsoft 365やGoogle Workspaceといった標準的なクラウドサービスを使い、共有カレンダーでのスケジュール調整、オンラインストレージでのファイル共同編集、Web会議ツールでの打ち合わせ参加など、実際の業務フローに即した訓練が可能になります。
  • チームでの協業スキル: プロジェクト管理ツール(Asana, Trelloなど)やチャットツール(Slack, Microsoft Teamsなど)を使い、他の利用者や支援員と連携しながらタスクを進める経験は、コミュニケーション能力や報告・連絡・相談といったビジネスマナーの向上に直結します。
  • 在宅ワークへの適応: クラウドツールは場所を選ばずにアクセスできるため、在宅での訓練や業務遂行を容易にします。これは、テレワークを希望する利用者にとって極めて重要な経験となります。

業務効率化としての側面:支援員の負担軽減と情報共有の円滑化

訓練で活用するクラウドツールは、そのまま事業所内の業務基盤としても機能します。これにより、支援員の事務負担が大幅に軽減されます。

「システムの導入により、クラウド上で利用者の予定及び支援者のシフトを確認できるようにした。」「事務所にいないと、予定の確認ができない状況だった。」

  • 記録・報告業務の効率化: タブレットやスマートフォンから、いつでもどこでも支援記録を入力・閲覧できるようになります。これにより、事務所に戻ってからまとめて記録を作成する手間が省け、利用者への対応中にその場で記録できるため、情報の鮮度と正確性が向上します。
  • ペーパーレス化の推進: 個別支援計画書や各種報告書を電子化し、クラウド上で管理・共有することで、印刷コストや保管スペースを削減できます。バージョン管理も容易になり、「どれが最新版かわからない」といった混乱を防ぎます。
  • 円滑な情報共有: 拠点が複数ある事業所や、在宅勤務の職員がいる場合でも、テレビ会議システムやチャットツールを使えば、移動時間をかけずに密な情報共有や会議が可能になります。

受託できる業務例

クラウドソリューションを活用して、以下のような業務を企業から受託することが考えられます。これらは比較的定型化しやすく、遠隔での作業にも適しています。

  • データ移行・入力代行: 企業の古いシステムから新しいクラウドサービスへの顧客情報や商品データの移行作業。
  • SaaSツール設定代行: 中小企業向けの顧客管理(CRM)や営業支援(SFA)ツールの初期設定やカスタマイズ支援。
  • オンラインヘルプデスク: 特定のソフトウェアやサービスに関する、メールやチャットでの一次問い合わせ対応。
  • クラウド環境の運用監視: 企業のクラウドサーバーが正常に稼働しているかをマニュアルに沿って定期的にチェックする業務。

具体的なソリューション②:RPA(Robotic Process Automation)の活用

RPAとは、PC上で行われる定型的な事務作業を、ソフトウェアロボットが代行・自動化する技術です。データ入力、転記、情報収集、レポート作成といった繰り返し作業を、人間よりも速く、正確に、24時間365日実行できます。このRPAを導入することは、まさに「訓練」と「業務効率化」を最高レベルで両立させる切り札となり得ます。

訓練としての側面:市場価値の高い専門スキルの習得

RPAの開発スキルは、現在、多くの企業で求められている非常に価値の高い専門技術です。

  • 高度な専門人材の育成: 利用者は、RPAツールの使い方を学び、業務を自動化するための「ロボット(シナリオ)」を開発するスキルを習得します。これは、障害のある方々が自ら働く場を生み出す力となり、高単価な仕事に繋がります。
  • 論理的思考力と問題解決能力の醸成: どの業務を、どのように自動化するかを考えるプロセスは、業務フローを分析し、問題を分解し、手順を組み立てるという高度な論理的思考力を養います。エラーが発生した際の修正作業は、粘り強い問題解決能力を鍛えます。
  • 特性を活かせる分野: ルールに基づいた正確な作業を好む、細かな違いに気づきやすいといった特性を持つ方にとって、RPA開発は非常に親和性の高い分野です。

業務効率化としての側面:職員を単純作業から解放

利用者が開発したRPAロボットは、まず事業所内の業務自動化に活用できます。これにより、支援員は付加価値の高いコア業務に集中できます。

「月間366時間かかっていた作業を50時間に短縮できました。自動化によって時間削減という定量的な効果以外に、品質維持向上という定性的な面でも効果があったと思います。」
— JALサンライト株式会社(障がい者雇用企業)のRPA導入事例

  • 請求・経理業務の自動化: 利用者ごとのサービス提供実績から国保連請求データを自動生成したり、工賃計算と給与明細の作成を自動化したりすることが可能です。
  • 日報・報告書作成の自動化: 各種システムから必要なデータを抽出し、定型の報告書フォーマットに自動で転記させることができます。
  • 利用者の作業サポート: 利用者が作成した書類のチェックや修正をロボットが補助することで、支援員の確認作業を軽減しつつ、成果物の品質を担保できます。利用者は自分のペースで作業でき、支援員は急かす必要がなくなります。

受託できる業務例

RPAスキルを習得した利用者がいれば、企業から高単価な自動化案件を受注することが可能になります。

  • 経理・人事部門の定型業務自動化: 請求書データの会計システムへの入力、交通費精算のチェック、勤怠データと給与計算の突合など。
  • Webからの情報収集・リスト作成: 競合他社の新商品情報を毎日チェックしてリスト化する、不動産サイトから特定の条件の物件情報を収集するなど。
  • データクレンジング・整形: 複数のExcelファイルに散らばった顧客リストを、統一されたフォーマットに自動で整形・統合する。
  • RPAロボットの開発・保守代行: RPAを導入したいが社内に開発者がいない中小企業向けに、ロボットの開発や運用保守を請け負う。

図3: 「IT業務受託モデル」の概念図。企業からの業務受託が、利用者の実践的訓練と事業所の収益化・業務効率化を同時に実現するサイクルを生み出す。

このモデルがもたらす「三方良し」のメリット

この「IT業務受託モデル」は、利用者、支援員、そして事業所経営の三者すべてに大きなメリットをもたらす、持続可能なエコシステムを構築します。

  1. 利用者にとってのメリット:
    • 生きたスキルが身につく: 実際の企業の業務に携わることで、机上の空論ではない、市場で通用する実践的なITスキルと業務ノウハウが身につきます。
    • リアルな業務経験が自信になる: 企業の課題を解決し、感謝されるという経験は、自己肯定感を高め、就労への意欲を向上させます。
    • 工賃・賃金の向上に直結する: 高付加価値な業務を担うことで、全国平均で時給222円(令和元年度)という低工賃の問題を乗り越え、経済的自立への道を切り拓きます。
  2. 支援員にとってのメリット:
    • 専門性を活かした支援に集中できる: 煩雑な事務作業から解放され、利用者一人ひとりの特性に合わせたスキル指導やキャリア相談など、本来の専門性を発揮できる時間が増えます。
    • 利用者の成長を間近で実感できる: 利用者が専門スキルを習得し、企業から評価される姿を見ることは、支援員にとって大きなやりがいと喜びになります。
    • 自身のスキルアップ: 利用者と共に最新のIT技術に触れることで、支援員自身のスキルや知識もアップデートされ、支援の質がさらに向上します。
  3. 事業所経営にとってのメリット:
    • 訓練と収益事業を一本化できる: 訓練プログラムがそのまま収益を生むため、経営の効率が飛躍的に向上します。
    • 高単価案件で経営が安定する: 専門性の高いIT業務は、従来の軽作業に比べて高い単価で受注できるため、安定した収益基盤を構築でき、報酬改定にも柔軟に対応できます。
    • 地域企業との新たな連携が生まれる: 企業のDXを支援するパートナーとして、新たな関係性を構築できます。これは、利用者の一般就労先の開拓にも繋がります。

第3部:実践ガイド:静岡県東部でITソリューション導入を成功させるには

「IT業務受託モデル」の可能性をご理解いただけたところで、次はこのモデルを絵に描いた餅で終わらせないための、具体的な導入ステップと、活用できる地域の資源について解説します。

導入成功への3ステップ

壮大な計画に見えるかもしれませんが、着実にステップを踏むことで、どんな事業所でも実現可能です。重要なのは、背伸びをせず、自事業所の実情に合わせてスモールスタートを切ることです。

  1. ステップ1:現状分析と目標設定(As-Is / To-Be分析)まずは、自事業所の現状を徹底的に洗い出すことから始めます。「職員は、どのような事務作業に最も時間を取られているか?」「利用者は、どのようなスキル習得に興味や適性があるか?」「地域には、どのようなIT関連の業務ニーズがありそうか?」などを整理します。その上で、「1年後には、請求業務を自動化したい」「利用者にWebサイト更新スキルを習得してもらい、地域の商店のHP更新業務を受託したい」といった、具体的で測定可能な目標(To-Be)を設定します。
  2. ステップ2:スモールスタートと成功体験の蓄積最初から大規模な受託案件を目指す必要はありません。まずは、事業所内の業務効率化から着手するのが現実的です。例えば、安価なクラウド型の障害福祉サービス専用ソフトを導入し、支援記録や請求業務を電子化するだけでも、職員の負担は大きく軽減されます。この小さな成功体験が、次のステップに進むための自信と原動力になります。利用者によるRPA開発も、まずは事業所内の単純なデータ入力作業を自動化するロボット作成から始めるのが良いでしょう。
  3. ステップ3:専門パートナーとの連携ITの専門知識や、企業への営業ノウハウが不足しているのは当然のことです。成功の鍵は、それらを補ってくれる外部の専門パートナーと連携することにあります。RPA導入を伴走支援してくれるベンダーや、クラウド導入をサポートするコンサルタント、そして何より、IT導入補助金の申請をサポートしてくれる「IT導入支援事業者」との連携は不可欠です。彼らと協力することで、自事業所だけでは難しい業務の切り出しや、技術的な課題の解決、そして新たな受託案件の獲得が可能になります。

活用できる補助金・助成金制度

ITソリューションの導入には初期投資が必要ですが、国や静岡県が提供する手厚い補助金制度を活用することで、その負担を大幅に軽減できます。2025年度(令和7年度)に活用が期待される主な制度をご紹介します。

国の制度:IT導入補助金2025

中小企業・小規模事業者の生産性向上を目的とした、最も代表的な補助金です。就労支援事業所も対象となります。

  • 対象経費: 事務局に登録されたITツール(ソフトウェア、クラウドサービス利用料、SaaS/PaaSなど)の導入費用。導入コンサルティングや導入後のサポート費用も対象になる場合があります。補助額は最大450万円、補助率は1/2~4/5と非常に手厚いのが特徴です。
  • 申請のポイント: 申請は、採択された「IT導入支援事業者」と共同で行う必要があります。まずは、自事業所の課題解決に適したITツールを提供し、かつ申請サポートの実績が豊富な支援事業者を見つけることが第一歩です。静岡県内にも多数のIT導入支援事業者が登録されています。

静岡県の制度:障害福祉分野のテクノロジー導入支援

静岡県では、障害福祉現場の業務負担軽減や生産性向上を目的とした独自の支援事業を展開しています。

  • 障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業: 介護ロボットや見守り機器、ICTの導入を支援する事業です。職員の負担軽減に直結するテクノロジー導入に活用できます。募集期間が限られているため(例:令和7年度事業の協議は令和7年5月に締切)、早めの情報収集が重要です。
  • 障害者在宅ICT機器講習開催業務委託: 県が、外出困難な障害のある方の自宅に講師を派遣するICT講習の委託先を募集しています。貴事業所がこの委託先となることで、地域の在宅就労支援に貢献しつつ、新たな収益源とすることも可能です。東部・中部・西部と地域ごとに募集されます。

これらの補助金は、公募期間が短かったり、申請要件が複雑だったりすることがあります。沼津市に拠点を置くN-TEC社のような、補助金申請のノウハウを持つ地域の専門業者に相談することも有効な手段です。

静岡県東部で連携できる支援機関・企業

幸いなことに、静岡県東部には、IT導入や就労支援において連携できる強力なパートナーが数多く存在します。孤軍奮闘するのではなく、これらの地域の資源を積極的に活用しましょう。

公的・NPO機関

  • 静岡県東部障害者マルチメディア情報センター(沼津市): 様々な障害に対応したPC設備を備え、PCアドバイザーが常駐しています。PCスキルの指導法や支援技術に関する相談が可能です。
  • しずおか障害者就労支援ネットワーク: 県内7つの拠点が連携して就労支援を行うネットワーク。東部地域には「駿豆拠点」「富士拠点」があり、地域の企業情報や支援ノウハウが集積しています。ジョブコーチの派遣も行っています。

地域のIT関連企業・先進的な就労支援事業所

沼津市、三島市、富士市周辺には、ITインフラ構築やソフトウェア開発を行う企業、そしてPCスキル訓練に特化した就労支援事業所が点在しています。彼らとの連携は、技術的な助言を得たり、共同で企業案件を受注したり、あるいは先進事例を学ぶ上で非常に有益です。

  • ITインフラ・ソフトウェア企業: 沼津市にはアイエスエフネット沼津支店のようなITインフラ構築・保守を行う企業や、三島市には静岡県ソフトウェア事業協同組合に加盟する企業が複数存在します。
  • PCスキル特化型の就労支援事業所:
    • アイエスエフネットジョイ沼津事業所: 就労移行、B型、放デイが併設され、PCを使った軽作業に強みを持ちます。
    • LITALICOワークス沼津: PC訓練やビジネスマナーなど多様なプログラムを提供しています。
    • ONEGAME三島芝本町(三島市): eスポーツを通じてPCスキルや動画制作スキルを学ぶというユニークなB型事業所です。
    • パーソルネクステージ静岡オフィス(静岡市): PC業務に特化し、テレワークと通所を組み合わせた働き方を提供するA型事業所。東部地域からも参考にできるモデルです。

これらの機関や企業と情報交換会を開いたり、見学を申し込んだりすることから、新たな連携の道が拓けるかもしれません。


まとめ:未来志向の就労支援へ。ITの力で利用者と事業所の成長を加速させる

本稿では、静岡県東部の就労支援事業所が直面する「利用者に求められるスキルの高度化」と「職員の深刻な業務負担」という二つの大きな壁を、統合的に解決するための具体的な処方箋として「IT業務受託モデル」を提案しました。

このモデルの核心は、企業から実際のIT業務を受託し、それを「実践的な訓練の場」として利用者に提供することにあります。このアプローチにより、利用者は市場価値の高い生きたスキルを習得し、事業所は高単価な案件によって安定した収益基盤を築くことができます。そして、その過程で導入されるクラウドサービスやRPAといったITツールは、職員を煩雑な事務作業から解放し、より質の高い、人間的な支援に集中できる環境を生み出します。

これは単なる業務改善や訓練内容の見直しではありません。利用者の可能性を最大限に引き出し、職員の専門性とやりがいを高め、事業所の経営を安定させる、未来志向の就労支援へのパラダイムシフトです。さらに、この取り組みは、DX化に悩む地域企業にとっては新たな人材リソースの発見に繋がり、ひいては静岡県東部地域全体の産業競争力強化と活性化にも貢献する、大きなポテンシャルを秘めています。

変化には困難が伴いますが、その先には、利用者、職員、そして事業所自身が共に成長していく、明るい未来が待っています。

次の一歩を、私たちと一緒に踏み出しませんか?

「自事業所では、具体的に何から始めれば良いだろう?」
「どんな業務なら、うちの利用者でも受託できるだろうか?」
「補助金の申請について、もっと詳しく知りたい」

このような疑問やお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度、私たちにご相談ください。
合同会社KUREBAは、就労支援事業所様の特性や課題に深く寄り添い、最適なITソリューションの選定・導入から、具体的な業務の切り出し、そして安定した受託案件の獲得までをワンストップでサポートする専門家集団です。

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