バドミントンの激しいフットワークにおいて、シューズがプレーヤーのパフォーマンスと安全に直結することは言うまでもありません。しかし、そのシューズのフィット感を最終的に決定づける「靴紐」の重要性を見過ごしている人は少なくありません。靴紐は単なる飾りではなく、シューズと足の一体感を生み出し、パワーをロスなくコートに伝え、怪我を防ぐための重要なツールです。
ミズノの調査によると、スポーツをする人の64%が「靴紐がほどけやすい」と感じており、72%が「靴紐のカラーを変えたい」と考えています。このデータは、多くのプレーヤーが靴紐に対して機能性とデザイン性の両面で改善を求めていることを示しています。
この記事では、バドミントンシューズの靴紐に焦点を当て、基本的な通し方から足の悩みを解決する応用テクニック、試合中にほどけない結び方、そして最適な靴紐の選び方までを網羅的に解説します。Amazonで購入可能なおすすめ商品も紹介しますので、あなたのパフォーマンスを最大化するための一助となれば幸いです。
なぜバドミントンシューズの紐が重要なのか?
靴紐の役割は、単にシューズが脱げないように固定するだけではありません。適切な通し方と締め方によって、パフォーマンスと安全性に大きな影響を与えます。
不適切なレーシング(靴紐の通し方・締め方)は、シューズ内で足がぶれる原因となります。足が安定しないと、急なストップや方向転換の際に力が逃げてしまい、フットワークの精度が低下します。結果として、スマッシュやヘアピンといったショットのパワーや正確性にも悪影響を及ぼしかねません。
さらに重要なのが、怪我のリスクです。シューズ内で足が不安定に動くことは、足首の捻挫だけでなく、膝や腰への負担を増大させます。バドミントンは特に膝や腰の故障が多いスポーツであるため、靴紐で足とシューズをしっかり一体化させ、安定性を確保することが、怪我の予防に不可欠です。
シューズの性能を引き出す!基本の紐の通し方
靴紐の通し方には、主に「オーバーラップ」と「アンダーラップ」の2つの基本形があります。それぞれの特徴を理解し、自分の足やプレースタイルに合った方法を選ぶことが、快適なプレーへの第一歩です。
オーバーラップ:ホールド感を重視
オーバーラップは、靴紐を穴の上から下へ(外側から内側へ)通す方法です。多くの新品シューズで採用されているこの通し方は、紐がシューズの甲部分(アッパー)を上から押さえつける形になるため、フィット感とホールド感が高まります。アシックスも、締まりが良く緩みにくいため短距離ランナーに適していると説明しており、急な切り返しが多いバドミントンにも適した方法と言えます。激しい動きで足がブレやすい人や、しっかりとした固定感を求めるプレーヤーにおすすめです。
アンダーラップ:圧迫感を軽減
アンダーラップは、靴紐を穴の下から上へ(内側から外側へ)通す方法です。紐がアッパーを下から持ち上げる形になるため、甲への圧迫感が少なくなります。実は、ヨネックスはバドミントンシューズにこのアンダーラップを推奨しています。足の甲が高い人や、プレー中に甲の部分が痛くなりやすい人には、圧迫感が軽減されるため快適性が向上します。また、オーバーラップに比べて締め付けの微調整がしやすいというメリットもあります。
足の悩みを解決する応用レーシングテクニック
人の足の形は千差万別です。「幅が広くて痛い」「甲が高くて圧迫される」といった悩みも、靴紐の通し方を少し工夫するだけで劇的に改善されることがあります。ここでは代表的な3つの悩みに対する解決策を紹介します。
足幅が広い、外反母趾の方向け
足幅が広い、または外反母趾で指の付け根あたりが痛む場合、その部分の圧迫を避ける通し方が有効です。具体的には、最も圧迫を感じる部分の紐をクロスさせず、両側ともそのまま真上の穴に縦に通します。これにより、前足部に空間が生まれ、圧迫感が和らぎます。 ただし、横方向のサポート感は少し弱まる可能性があるため、痛みの度合いとサポートの必要性のバランスを見て調整してください。
甲高の方向け
足の甲が高く、プレー中に痛みや痺れを感じる方は、圧迫されている部分の紐をクロスさせない「ウィンドウ・レーシング(Window Lacing)」がおすすめです。 痛む部分にきたら、紐を交差させずに両側ともそのまま真上の穴に縦に通し、その次の段から再びクロスさせます。これにより、甲の高い部分に「窓」のような空間ができ、圧迫感を効果的に逃がすことができます。
かかとが浮きやすい方向け:「ヒールロック」
プレー中にかかとが浮いてしまい、力が逃げたり靴擦れしたりする悩みには、「ヒールロック」または「ランナーズループ」と呼ばれるテクニックが最も効果的です。これは、シューズの一番上にある予備の穴(ダブルアイレット)を使用する方法です。
- まず、一番上の穴まで通常通りに紐を通します。
- 左右それぞれの紐を、同じ側の一番上の予備の穴に外側から内側へ通し、小さなループを作ります。
- 反対側の紐の先端を、作成したループに通します。
- 両方の紐を斜め下(つま先方向)に引っ張って締めます。これにより、足首周りがしっかりと固定されます。
この方法により、かかとがシューズにがっちりと固定され、シューズとの一体感が格段に向上します。アシックスもこの方法を推奨しており、踏み込みや蹴り出しが安定し、パフォーマンス向上に直結します。
試合中にほどけない!最強の結び方3選
集中力が必要な試合中に靴紐がほどけると、プレーの流れが途切れるだけでなく、怪我の原因にもなりかねません。ここでは、驚くほどほどけにくい、おすすめの結び方を3つ紹介します。
イアン・ノット:最速で結べる強力な結び方
「イアン・ノット」は、非常に速く結べるうえに、結び目が緩みにくいという特徴があります。左右の輪を同時に作り、それを互いに押し込むようにして結びます。慣れると1秒ほどで結べるようになり、試合の合間でも素早く結び直せるため、覚えておくと非常に便利です。
ベルルッティ結び:絶対にほどきたくない日のために
「ベルルッティ結び」は、蝶々結びの最後に紐を輪に通す際、1周ではなく2周巻きつける方法です。巻きつける回数を増やすことで摩擦が大きくなり、結び目が格段にほどけにくくなります。見た目も美しく、大事な試合の日など「絶対にほどけたくない」という場面で絶大な安心感をもたらします。
二重蝶々結び:最も手軽なほどけ防止策
新しい結び方を覚えるのが面倒な場合は、いつもの蝶々結びを二重にするだけでも効果があります。一度蝶々結びを作った後、出来上がった2つの輪をもう一度固結びするだけです。見た目は少し団子状になりますが、誰でも簡単に結び目の強度を上げることができます。靴紐が長くて余ってしまう場合にも有効な方法です。
最適な靴紐の選び方:素材・形状・長さ
靴紐を交換する際は、デザインだけでなく、素材や形状、長さを考慮することが重要です。これらがフィット感や耐久性に影響します。
素材:パフォーマンスを左右する選択
スポーツシューズの靴紐には主にポリエステルが使われます。ポリエステルは綿に比べて耐久性が高く、耐水性もあるため、汗や湿気にも強いのが特徴です。 一方、機能性を追求した製品として、表面にシリコンなどの滑り止め加工を施した「グリップ付き」タイプもあります。これにより、結び目がさらに緩みにくくなります。
形状:平紐 vs 丸紐 vs 楕円紐
靴紐の形状は、結びやすさやほどけにくさに関わります。
- 平紐(フラットレース):最も一般的で、結び目が解けにくいとされています。一般的にバドミントンシューズには平紐が推奨されることが多いです。
- 丸紐(ラウンドレース):ブーツなどによく使われますが、平紐に比べて表面積が小さいため、解けやすい傾向があります。
- 楕円紐(オーバルレース):平紐と丸紐の中間的な形状で、ランニングシューズや一部のバドミントンシューズ(ヨネックスAC570など)で採用されています。適度な締め付け感と解けにくさを両立しています。
長さ:シューズに合わせた最適な選択
靴紐の長さは、短すぎると結びにくく、長すぎるとプレーの邪魔になり危険です。最適な長さは、シューズの穴(アイレット)の数によって決まります。以下は、主要メーカーの情報を基にした一般的な目安です。
ただし、これはあくまで目安です。ヒールロックなど特殊な通し方をする場合は、目安より10cmほど長めのものを選ぶと安心です。最も確実な方法は、現在使用している靴紐の長さを実際に測ってから購入することです。
おすすめのバドミントン用靴紐【Amazonで購入可能】
ここでは、機能性や人気を考慮し、Amazonで手軽に購入できるおすすめの靴紐を3種類紹介します。
機能性で選ぶ:ミズノ ゼログライドシューレース
プレー中の紐の緩みが気になる方に最もおすすめなのが、ミズノの「ゼログライドシューレース」です。紐の両面に特殊な樹脂加工が施されており、グリップ力が従来品より約120%向上しています。 これにより、一度締めると緩みにくく、シューズ内での足のズレも抑制します。バドミントンの松友美佐紀選手も使用しており、「動いていると紐の緩みが気になっていたので、そのストレスが無くなりました!」とコメントしています。
定番の安心感:ヨネックス オーバルシューレース AC570
バドミントン界のトップブランドであるヨネックスが提供する、定番の交換用シューレースです。楕円形状(オーバル)が特徴で、適度なフィット感と解けにくさを提供します。豊富なカラーバリエーションも魅力で、シューズやウェアに合わせてコーディネートを楽しめます。 多くのヨネックス製シューズに標準で付属している紐と同じタイプなので、純正品ならではの安心感を求める方におすすめです。
革新的な選択肢:結ばない靴紐(No-Tie Shoelaces)
毎回紐を結び直すのが面倒な方や、より手軽にフィット感を調整したい方には、「結ばない靴紐」という選択肢もあります。伸縮性のあるゴム素材の紐と、長さを固定するロックパーツで構成されており、一度調整すればスリッポンのように靴の脱ぎ履きが可能になります。Lock Lacesなどが有名で、子供から大人まで幅広く利用されています。激しい動きに対するホールド感は従来の紐に劣る可能性もありますが、練習や軽いプレーではその利便性が光ります。
まとめ:最高のパフォーマンスは、足元へのこだわりから
バドミントンシューズの靴紐は、決して脇役ではありません。それは、あなたの足とシューズを繋ぎ、パフォーマンスを最大限に引き出し、大切な身体を怪我から守るための生命線です。
本記事で紹介した内容をまとめます。
- 基本の通し方:ホールド感重視なら「オーバーラップ」、圧迫感軽減なら「アンダーラップ」を試す。
- 足の悩み対策:幅広、甲高、かかと浮きなどの悩みは、紐の通し方を工夫することで解決できる。特に「ヒールロック」は多くのプレーヤーに有効。
- ほどけない結び方:「イアン・ノット」や「ベルルッティ結び」をマスターし、試合中のストレスをなくす。
- 最適な紐の選択:素材は耐久性の高いポリエステル、形状は好みや目的に応じて選択。長さは現在の紐を測るのが最も確実。
たかが靴紐、されど靴紐。今日からあなたも靴紐にこだわり、足元からライバルに差をつけてみてはいかがでしょうか。最高のフィット感は、最高のプレーを生み出すはずです。

コメント