バドミントンは、急なダッシュ、ストップ、ジャンプ、そして素早い方向転換が絶え間なく求められるスポーツです。その激しいフットワークを支え、パフォーマンスを最大限に引き出し、同時に怪我のリスクを軽減するために、バドミントン専用シューズの選択は極めて重要です。ランニングシューズや他の室内用シューズでは、バドミントン特有の動きに対応できず、足首の捻挫や膝の故障につながる可能性があります。
この記事では、2025年の最新情報に基づき、バドミントンシューズの選び方の基本から、主要ブランドの特徴、そしてレベル別のおすすめモデルまでを網羅的に解説します。あなたに最適な一足を見つけるための、信頼できるガイドとなることを目指します。
バドミントンシューズ選びの7つの重要ポイント
最高のパフォーマンスを発揮するためには、自分の足、プレースタイル、レベルに合ったシューズを選ぶことが不可欠です。ここでは、シューズ選びで考慮すべき7つの重要なポイントを解説します。
1. フィット感：最も重要な「サイズ選び」
シューズ選びにおいて、フィット感は何よりも優先されるべき要素です。サイズが合わないシューズは、パフォーマンスの低下だけでなく、マメや爪の損傷、さらには捻挫といった怪我の直接的な原因となります。サイズ選びでは、以下の3つのポイントを確認しましょう。
- 長さ（捨て寸）：シューズを履き、かかとをしっかりと合わせた状態で、つま先に5mm〜1cm程度の余裕（捨て寸）があるのが理想です。この余裕がないと、急なストップ動作で指を痛める原因になります。
- 幅（ワイズ）：日本人は幅広の足（3Eや4E）が多い傾向にありますが、思い込みは禁物です。シューレースを通す部分の幅が平行になる状態が、適切な幅の目安です。幅が広すぎるとシューズ内で足がずれ、フットワークのロスやマメの原因になります。
- かかとのホールド感：かかとがしっかりと包み込まれ、浮き上がらないかを確認します。かかとが不安定だと、着地時や踏み込み時に捻挫のリスクが高まります。
これらのフィット感を確認するためには、必ず試し履きをすることが絶対条件です。できれば、普段練習で使っている靴下を持参し、足が少しむくむ午後に試着するのがおすすめです。
2. クッション性：膝と足首を守る衝撃吸収力
バドミントンではジャンプからの着地や、深く踏み込むランジ動作が多く、膝や足首に大きな負担がかかります。優れたクッション性は、これらの衝撃を吸収し、関節への負担を軽減する重要な役割を果たします。各メーカーは独自のクッション技術を開発しています。
- YONEX：パワークッション、パワークッションプラス
- MIZUNO：ミズノウエーブ、ミズノエナジー
- ASICS：GEL（ゲル）
- LI-NING：Bounce、Bounce+
一般的に、価格が高い上位モデルほど高性能なクッション材が搭載されていますが、初心者向けのモデルでも十分なクッション性を備えています。
3. 安定性とサポート性：怪我を防ぐホールド感
前後左右への激しい切り返しの中で、足がシューズ内でぶれないように支える安定性も非常に重要です。特に横方向の動きに対するサポート性は、足首の捻挫を防ぐために不可欠です。シューズの形状（カット）によって、サポート性の特徴が異なります。
- ローカット：足首周りの可動域が広く、軽量なモデルが多いため、素早いフットワークを重視する上級者やスピードプレイヤーに好まれます。ただし、足首のサポート性はミッドカットに劣ります。
- ミッドカット：足首まで覆うデザインでホールド感が高く、安定性に優れています。捻挫の予防を重視したい初心者や、足首に不安があるプレイヤーにおすすめです。ローカットに比べてやや重くなります。
4. 軽量性：俊敏なフットワークのために
シューズの重さは、フットワークの軽快さに直結します。一般的にバドミントンシューズの重量は片足250g〜330g程度です。軽量なシューズは長時間のプレーでも疲れにくく、素早い反応をサポートします。ただし、軽量性を追求するあまりクッション性や安定性が犠牲になっている場合もあるため、バランスが重要です。スピードを重視するプレイヤーは250g前後の軽量モデルを、安定性やクッション性を求めるプレイヤーは300g前後のモデルを選ぶ傾向があります。
5. グリップ力とソール：滑りを防ぎ、動きを支える
体育館のフロアで滑らないためのグリップ力は、安全かつ正確なフットワークの基盤です。バドミントンシューズには、床に色が付きにくい「ノンマーキングソール」の使用が義務付けられている場合がほとんどです。ソールの素材は主にゴムで、アウトソールのパターン（溝の形状）によってグリップの特性が変わります。例えば、YONEXの「ラディアルブレードソール」は、縦横斜め方向へのグリップ力を高める設計になっています。
6. 柔軟性：しなやかな動きを可能に
シューズには、動きを妨げない適切な柔軟性も求められます。特に、つま先部分がスムーズに曲がる「垂直方向の柔軟性」は、踏み込みや蹴り出しの動作に不可欠です。また、シューズ全体が過度にねじれない「ねじれ剛性」も、横方向の動きでの安定性を保つために重要です。剛性と柔軟性のバランスが取れたシューズが、理想的な一足と言えるでしょう。
7. プレースタイルとレベル：自分に合った一足を見つける
自分のレベルやプレースタイルによって、シューズに求める機能の優先順位は変わります。
- 初心者：まずは怪我の予防が第一です。クッション性と安定性が高く、価格も手頃なエントリーモデルから始めるのが良いでしょう。
- 中級者：プレー頻度も増え、動きも激しくなります。軽量性、クッション性、安定性のバランスが取れたオールラウンドなモデルがおすすめです。
- 上級者・競技者：自分のプレースタイルに合わせて、特定の性能に特化したモデルを選びます。例えば、スピードを武器にするなら軽量モデル、パワフルなプレーを支えるなら安定性の高いモデルなど、より専門的な選択が求められます。
【2025年】主要バドミントンシューズブランドの特徴
バドミントンシューズ市場は、いくつかの主要ブランドによって牽引されています。ここでは、特に人気の高いブランドの特徴を紹介します。
ヨネックス (YONEX)：王者ブランドの信頼と技術
バドミントン界のリーディングカンパニーであり、初心者から世界のトッププロまで、あらゆるレベルのプレイヤーから絶大な信頼を得ています。最大の特徴は、独自開発の衝撃吸収素材「パワークッション」です。この素材は、衝撃を吸収するだけでなく、そのエネルギーを次のフットワークへの反発力に変換する能力を持ちます。「生卵を7mの高さから落としても割れずに4m跳ね返る」という実証はあまりにも有名です。2025年モデルでは、さらに進化した「パワークッションプラス」を搭載したモデルが主流で、安定性、軽量性、フィット感など、あらゆる面で高いレベルを誇ります。
ミズノ (MIZUNO)：フィット感を追求する日本の雄
日本の総合スポーツ用品メーカーとして、長年の研究に裏打ちされた高い技術力を誇ります。ミズノのシューズは、特に「フィット感」へのこだわりが強く、足とシューズの一体感を目指した「MB HOLD FIT」などの機能を搭載しています。また、波形のプレートを挟み込むことでクッション性と安定性を両立させる独自技術「ミズノウエーブ」も特徴です。スピードを求めるプレイヤー向けの「ウエーブクロー」シリーズと、安定性を重視する「ウエーブファング」シリーズが二大巨頭です。
リーニン (LI-NING)：急成長するデザインとコスパ
中国の体操金メダリスト、李寧氏によって創設されたブランドで、近年急速にシェアを拡大しています。中国代表チームの公式サプライヤーでもあり、プロ仕様の高性能なモデルを数多く展開しています。特徴は、先進的なテクノロジーと、大胆で個性的なデザインです。優れたグリップ力と軽量設計で、スピードプレイヤーからの支持が厚いです。また、トップモデルでも比較的手頃な価格帯のものが多く、コストパフォーマンスに優れている点も魅力です。
その他の注目ブランド
- ビクター (VICTOR)：台湾の老舗ブランドで、特にアジア人の足型に合わせた快適なフィット感に定評があります。耐久性と快適性を重視した設計で、奈良岡功大選手などトッププレイヤーも使用しています。
- アシックス (ASICS)：ランニングシューズで培った衝撃吸収技術「GEL」をインドアコートシューズにも応用。安定性と耐久性に優れたモデルが多く、バドミントン専用モデルも展開しています。
- バボラ (Babolat)：テニスで有名なフランスのブランド。ミシュラン社と共同開発したグリップ力の高いアウトソールが特徴で、軽量かつスタイリッシュなモデルが人気です。
【レベル別】2025年おすすめバドミントンシューズ15選
ここでは、これまでの選び方のポイントとブランドの特徴を踏まえ、Amazonで購入可能なモデルを中心に、レベル別におすすめのシューズを15足厳選して紹介します。
初心者向け：快適性と価格のバランスが良いモデル
1. YONEX パワークッション 670
これからバドミントンを始める方に最適なエントリーモデル。手頃な価格ながら、ヨネックスの基本性能である「パワークッション」を搭載し、足への負担を軽減します。快適な履き心地とシンプルなデザインで、最初の1足として間違いのない選択です。
2. MIZUNO スカイブラスター 3
ミズノの初心者向けモデル。軽量で屈曲しやすく、バドミントン特有のフットワークを自然にサポートします。幅広の3E設計で、ゆったりとした履き心地も特徴。日本バドミントン協会検定合格品であり、安心して使用できます。
3. ASICS コートブレイク 2
アシックスのインドア用エントリーモデル。シンプルなデザインと優れたコストパフォーマンスが魅力です。基本的なクッション性とグリップ力を備えており、週に1〜2回程度のレクリエーションや部活動の初期段階に最適です。
4. YONEX パワークッション ストライダーフロー
軽量性と衝撃吸収性を両立させたエントリー〜中級者向けモデル。パワークッション搭載で疲れにくく、スムーズなフットワークをサポートします。デザイン性も高く、モチベーションを上げてくれる一足です。
5. LI-NING Saga III Lite
リーニンのコストパフォーマンスに優れたモデル。レクリエーションや中級レベルのプレイヤーに適した設計で、軽量性と快適な履き心地を提供します。個性的なデザインを好む方にもおすすめです。
中級者向け：オールラウンドな性能を持つモデル
6. YONEX パワークッション 65Z
長年にわたり多くのプレイヤーに愛される、ヨネックスの超定番オールラウンドモデル。フィット感、クッション性、グリップ力、安定性の全てが高次元でバランスが取れています。どのシューズにすべきか迷ったら、まずこのモデルを試してみるのがおすすめです。2025年も最新モデル「65Z4」が登場し、人気は継続しています。
7. MIZUNO ウエーブクロー EL 2
「軽量性」と「加速性」をコンセプトにしたミズノの人気シリーズ。軽やかなフットワークを求めるプレイヤーに最適です。ミズノエナジー搭載で、高い反発性を実現。フィット感も高く、足とシューズの一体感を重視する方におすすめです。
8. YONEX パワークッション カスケードアクセル (ミッドカット)
足首のサポートを重視するプレイヤーにおすすめのミッドカットモデル。パワークッションによる衝撃吸収性に加え、高いホールド感で安定したフットワークを支えます。過去に捻挫の経験がある方や、安定感を求める方に最適です。
9. VICTOR P9200II
ビクターの代表的なオールラウンドモデル。クッション性と反発性のバランスが良く、快適な履き心地に定評があります。特にダブルスプレイヤーが求める素早い動き出しをサポートする設計が特徴です。トッププロのタイ・ツーイン選手モデルも人気です。
10. LI-NING バドミントンシューズ (AYZQ007など)
優れたグリップ力と安定性で、コート上での激しい動きをサポートするリーニンのプロフェッショナルモデル。人工皮革と合成樹脂を組み合わせ、耐久性と軽量性を両立。履き込むほどに足に馴染むフィット感も魅力です。多くのモデルが日本バドミントン協会検定合格品です。
上級者向け：特定の性能を追求した特化モデル
11. YONEX パワークッション エアラスZ (軽量モデル)
ヨネックス史上最軽量クラスを誇る、スピード特化型モデル。片足約240g（26.0cm）という驚異的な軽さで、俊敏なフットワークを極限まで引き出します。最新の「エアラスZメン」は2025年12月に発売予定で、さらなる進化が期待されます。スピードを武器にしたい上級者に最適です。
12. YONEX パワークッション エクリプションZ (安定性モデル)
高い安定性と衝撃吸収性を追求した、パワフルなフットワークを支えるモデル。横方向のブレを抑える「ラテラルシェル」構造が、急激なストップ＆ダッシュでも足元をがっちりサポートします。守備から攻撃へ、力強いプレーを求めるプレイヤーにおすすめです。
13. MIZUNO ウエーブファング PRO
足馴染みの良い天然皮革を採用した、ミズノのハイエンドモデル。履き込むほどに自分の足にフィットしていく感覚は、天然皮革ならではの魅力です。グリップ性や安定性も最高レベルで、まさに「プロ」仕様。フィット感を何よりも重視する本物志向のプレイヤーに。
14. YONEX パワークッション 88 ダイヤル (フィット調整モデル)
ダイヤルを回すだけでミリ単位のフィット調整が可能な「BOA®フィットシステム」を搭載したモデル。プレー中でも素早く簡単に締め付け具合を調整できます。足とシューズの隙間をなくす「インナーブーティ構造」との相乗効果で、究極の一体感を実現します。
15. Babolat シャドウ ツアー 5
わずか280gという超軽量設計で、スピードを極限まで追求したバボラのトップモデル。ミシュランと共同開発したアウトソールは、あらゆるコートで最高のグリップ力を発揮します。ダイナミックな動きでコートを支配したい上級者に最適な一足です。
正しい試し履きの方法と注意点
最高のシューズを選んでも、サイズが合っていなければ意味がありません。後悔しないために、試し履きは以下の手順で慎重に行いましょう。
- 時間帯と靴下：足が最もむくむ午後から夕方に、普段バドミントンで使う厚さの靴下を履いてお店に行きましょう。
- 両足で試着：多くの人は左右で足の大きさが微妙に異なります。必ず両足とも履いて確認してください。
- かかとを合わせる：シューズに足を入れたら、つま先を上げてかかとを床で「トントン」と数回打ち付け、かかとをシューズのヒールカップにしっかり合わせます。
- シューレースを締める：かかとを合わせたまま、つま先側から順番にシューレースをしっかりと締めます。この時、甲が圧迫されすぎないか、緩すぎないかを確認します。
- 立って確認：立ち上がって体重をかけ、以下の点を確認します。
- つま先の余裕：一番長い指の先に5mm〜1cm程度の余裕があるか。
- 指の動き：足の指が自由に動かせるか。親指や小指の付け根が圧迫されていないか。
- 幅のフィット感：シューズの中で足が横にずれないか。
- かかとの浮き：軽くかかとを上げてみて、シューズが脱げそうにならないか。
- 動いてみる：可能であれば、その場で軽くステップを踏んだり、しゃがみ込んだりして、実際のプレーに近い動きで違和感がないかを確認しましょう。
「絶対に試し履きしてください！」という専門店の言葉は、シューズ選びの鉄則です。できれば3種類ほどの異なるモデルを履き比べると、それぞれの違いがよく分かり、自分に最適な一足を見つけやすくなります。
まとめ
バドミントンシューズは、単なる「靴」ではなく、あなたのパフォーマンスと安全を支える最も重要な「ギア」です。この記事で紹介した選び方のポイントとおすすめモデルを参考に、ぜひあなたにとって最高のパートナーとなる一足を見つけてください。
最後に、重要な点をもう一度まとめます。
- フィット感が最優先。必ず試し履きをして、長さ・幅・かかとのフィット感を確認しましょう。
- 自分のレベルとプレースタイルを理解する。初心者は安定性とクッション性、上級者は軽量性や特定の機能など、求める性能を明確にしましょう。
- 信頼できるブランドから選ぶ。YONEX、MIZUNO、LI-NINGなどの主要ブランドは、長年の研究に基づいた高い技術力を持っています。
- 適切な投資と考える。良いシューズは、上達を早め、何よりも大切な体を怪我から守ってくれます。
正しいシューズ選びで、もっと楽しく、もっと安全にバドミントンをプレーしましょう！
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