「もう会社に行くのは限界…」「上司に退職を言い出せない」そんな悩みを抱える労働者の間で、退職代行サービスの利用が急速に広がっています。中でも「退職代行モームリ」は、その手頃な価格と手厚いサポートで高い知名度を誇ってきました。しかし、2025年10月に弁護士法違反の疑いで家宅捜索を受けたというニュースは、多くの利用希望者に衝撃と不安を与えました。
この記事では、退職代行モームリのサービス内容を改めて整理するとともに、家宅捜索の背景にある法的な問題点を深掘りします。その上で、2025年11月現在、本当に安心して利用できる退職代行サービスはどれなのか、その選び方を専門的な視点から徹底解説します。
退職代行モームリとは?サービス概要を解説
まず、退職代行モームリがどのようなサービスを提供してきたのか、その基本的な情報を確認しましょう。モームリは、その名の通り「もう無理だ」と感じた労働者に代わって、退職の意思を会社に伝達するサービスです。
運営会社と基本情報
退職代行モームリは、2022年2月に設立された株式会社アルバトロスによって運営されています。サービス開始は同年3月15日で、比較的新しいサービスながら、メディア露出やSNSでの口コミを通じて急速に知名度を高めました。
- 運営会社: 株式会社アルバトロス
- 代表者: 谷本 慎二
- 設立: 2022年2月1日
- 所在地: 東京都大田区(※2025年10月時点では品川区に移転している情報あり)
- 特徴: 顧問弁護士監修、労働組合提携
料金体系:相場より安い価格設定
モームリが人気を集めた最大の理由の一つが、その料金設定です。一般的な退職代行サービスの相場が25,000円〜30,000円であるのに対し、モームリは以下のような低価格を実現していました。
- 正社員・契約社員・派遣社員: 22,000円(税込)
- パート・アルバイト:12,000円(税込)
この価格は、多くのメディアで「相場より安い」と評価されており、追加料金が一切かからない点や、万が一退職できなかった場合の全額返金保証も安心材料とされていました。
主なサービス内容と特徴
料金の安さに加え、モームリは以下のような手厚いサポートを特徴としていました。
- 24時間365日対応: LINEや電話でいつでも相談可能で、即日退職にも対応。
- 後払い可能: 手持ちの資金がなくても依頼できる後払い制度(あと払いペイディ、モームリあと払い等)を導入。経済的に厳しい状況でも利用しやすいと評価されていました。
- 労働組合との提携: 提携する労働組合を通じて、有給休暇の消化や未払い賃金に関する「交渉」が可能であると謳っていました。これが後に問題視される点となります。
- 女性スタッフ在籍: 女性特有の退職理由(セクハラなど)も相談しやすいよう、女性スタッフを希望できる体制を整えていました。
- 充実したアフターサポート: 転職支援サービスの紹介や、利用後1年以内は半額で再利用できる「リピート割」など、退職後のサポートも提供していました。
【重要】2025年10月の家宅捜索と弁護士法違反(非弁行為)の疑い
順調に事業を拡大しているように見えたモームリですが、2025年10月、その信頼を揺るがす重大な事態が発生します。
何が起きたのか?家宅捜索の概要
2025年10月22日、退職代行モームリを運営する株式会社アルバトロスなどが、弁護士法違反(非弁行為・非弁提携)の疑いで警視庁の家宅捜索を受けました。このニュースは複数のメディアで報じられ、退職代行業界全体に大きな波紋を広げました。
疑いの核心は、弁護士資格を持たない民間企業であるモームリが、本来弁護士にしか許されていない「法律事務」を行い、報酬を得ていたのではないかという点です。
問題視される「非弁行為」とは?
「非弁行為」とは、弁護士法第72条で禁止されている行為です。この法律は、弁護士でない者が報酬を得る目的で、以下のような法律事務を取り扱うことを禁じています。
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。(弁護士法第72条)
退職代行に当てはめると、以下のようになります。
- 合法(使者としての伝達): 利用者の「退職します」という意思を、そのまま会社に伝えること。
- 違法(非弁行為の可能性): 「有給休暇をすべて消化させてほしい」「未払いの残業代を支払ってほしい」といった、金銭や権利に関する交渉を会社と行うこと。
モームリは「労働組合と提携しているため交渉が可能」と説明していましたが、その実態が弁護士法に抵触する「非弁行為」や、弁護士に案件を紹介して見返りを得る「非弁提携」にあたるのではないかと疑われているのです。専門家は、民間業者が提携先の弁護士や労働組合に依頼者を紹介し、その対価を受け取る行為も問題視されると指摘しています。
退職代行サービスの3つの種類と法的範囲
この問題を理解するためには、退職代行サービスの運営主体が主に3種類あり、それぞれ法的に認められている業務範囲が異なることを知る必要があります。
- 民間企業: 弁護士監修を謳うサービスが多いですが、法的には「使者」として退職の意思を伝えることしかできません。有給消化や未払い賃金の交渉は行えません。今回のモームリもこの形態に分類されます。
- 労働組合: 労働組合法に基づき、組合員のために「団体交渉権」を行使できます。これにより、退職日の調整や有給消化、未払い賃金の支払いなどを会社と合法的に交渉することが可能です。
- 法律事務所(弁護士): 利用者の「代理人」として、すべての法律事務を行えます。交渉はもちろん、万が一会社から損害賠償請求をされた場合の対応や、慰謝料請求などの法的手続きまで一貫して任せることができます。
この違いが、サービスの安全性と直結する重要なポイントとなります。
図解で見る:退職代行サービスの運営主体と対応業務の違い
運営主体による対応範囲の違いは、下の図を見ると一目瞭然です。「民間企業」ができることは「意思の伝達」に限られる一方、「労働組合」や「弁護士」はより広範な交渉が可能であることがわかります。特に、損害賠償請求への対応など、法的な紛争に発展する可能性がある場合は「弁護士」一択となります。
家宅捜索を受けて、今モームリを利用するのは安全か?
家宅捜索という事態を受け、多くの人が「今、モームリに依頼しても大丈夫なのか?」という疑問を抱いているでしょう。ここでは、考えられるリスクと専門家の見解をまとめます。
サービス利用中のリスク
捜査中のサービスを利用することには、以下のようなリスクが伴います。
- サービスの突然の停止: 捜査の進展によっては、事業の継続が困難になり、依頼した退職代行業務が途中でストップしてしまう可能性があります。
- 交渉の中断: もし会社側との交渉中にサービスが停止した場合、中途半端な状態で自分で対応しなければならなくなる恐れがあります。
- 個人情報の取り扱い: 捜査機関による資料の押収など、予期せぬ形で個人情報の取り扱いに関する不安が生じる可能性もゼロではありません。
専門家の見解と今後の動向
多くの法律専門家は、今回の事件を受け、退職代行サービスの選定に警鐘を鳴らしています。ある弁護士は、「確実に、安心して退職するためには、現時点では民間企業の利用は避け、法的に交渉が認められている『弁護士』または『労働組合』が運営する退職代行サービスを選ぶのが無難」と述べています。
今回の家宅捜索は、退職代行業界の健全化に向けた一つの転換点となる可能性があります。今後は、運営主体の透明性やコンプライアンス遵守の姿勢が、これまで以上に厳しく問われることになるでしょう。
2025年最新:安全性を重視した退職代行サービスの選び方
モームリの件を踏まえ、私たちはどのように退職代行サービスを選べばよいのでしょうか。重要なのは、料金の安さだけでなく、法的リスクを回避できる「安全性」を最優先することです。
なぜ「労働組合」または「弁護士」運営が推奨されるのか
前述の通り、安全性を確保する鍵は運営主体にあります。
- 労働組合運営のサービス: 団体交渉権という法的に認められた権利に基づき、会社と対等な立場で交渉を行えます。「有給を消化したい」「退職日を調整したい」といった一般的な要望であれば、労働組合運営のサービスで十分対応可能です。
- 弁護士運営のサービス: 未払い給与の請求額が大きい、ハラスメントで慰謝料を請求したい、会社から損害賠償を請求される可能性があるなど、法的なトラブルに発展する可能性がある複雑なケースでは、弁護士への依頼が最も確実です。
自分の状況を冷静に判断し、「単に辞意を伝えてほしいだけ」なのか、「会社と交渉してほしいことがある」のかを明確にすることが、適切なサービス選びの第一歩です。
料金だけで選ぶ危険性
「業界最安値」や「格安」といった言葉に惹かれがちですが、今回の件は、料金の安さだけでサービスを選ぶことの危険性を浮き彫りにしました。実績が乏しい格安業者の場合、対応が遅れたり、違法な交渉を行ってトラブルになったりする失敗事例も報告されています。
退職は人生の重要な転機です。目先の数千円を節約するために、退職に失敗したり、法的なトラブルに巻き込まれたりするリスクを冒すのは賢明ではありません。運営元の信頼性、実績、法的正当性をしっかりと確認しましょう。
モームリの代替となる、信頼性の高い退職代行サービス5選
ここでは、2025年11月現在、運営主体の信頼性が高く、安心して依頼できると評価されている退職代行サービスを、料金比較とともに紹介します。
【労働組合運営】退職代行ガーディアン
東京労働経済組合が運営しており、法適合性と信頼性の高さで定評があります。LINEで24時間相談でき、追加料金なしの一律料金(24,800円)で、確実な退職をサポートします。メディア掲載実績も豊富で、安心して任せられるサービスの一つです。
【労働組合運営】退職代行SARABA
労働組合運営のサービスの中では比較的リーズナブルな料金(24,000円)が魅力です。24時間対応、相談回数無制限、全額返金保証など、利用者にとって安心できる要素が揃っています。実績も豊富で、コストと安心感のバランスを重視する方におすすめです。
【弁護士法人】弁護士法人みやび
弁護士が直接対応するため、法的な安心感は随一です。料金は55,000円(税込)からと高めですが、未払い給与や残業代の請求、慰謝料請求、損害賠償請求への対応など、他のサービスでは扱えない複雑な案件も任せられます。会社と揉める可能性が高い場合に最適な選択肢です。
【弁護士法人】フォーゲル綜合法律事務所
弁護士運営でありながら、比較的リーズナブルな料金設定が特徴です。基本プランは24,400円から依頼でき、未払い賃金請求などの交渉を行っても成功報酬が発生しないプランもあります。法的トラブルを抱えているが、費用を抑えたいという方におすすめです。
【女性向け・労働組合】わたしNEXT
女性の退職に特化した労働組合運営のサービスです。スタッフも女性が対応するため、セクハラやマタハラなど、男性には相談しにくいデリケートな問題も安心して打ち明けられます。日本退職代行協会の「特級認定」も取得しており、信頼性も高いです。
退職代行モームリの利用の流れ(参考情報)
参考として、家宅捜索以前に一般的だったモームリの利用手順を簡潔に紹介します。多くの退職代行サービスも同様の流れを採用しています。
- 無料相談: LINE、電話、メールなどで現状を相談します。
- ヒアリングと打ち合わせ: ヒアリングシートを基に、退職希望日や会社に伝えてほしいことなどを詳細に打ち合わせます。
- 契約・支払い: サービス内容に納得したら契約し、料金を支払います(後払いも選択可能でした)。
- 退職代行の実行: 担当者が会社に連絡し、退職の意思を伝えます。利用者は会社と直接やり取りする必要はありません。
- アフターフォロー: 退職届の提出や貸与物の返却などを郵送で行い、退職が完了します。必要に応じて転職サポートなども受けられます。
このシンプルな手続きで、会社と顔を合わせることなく退職できる点が、退職代行サービスの大きなメリットです。
まとめ:自身の状況に合った、最も安全な選択を
退職代行モームリは、低価格と手厚いサポートで多くの労働者に支持されてきましたが、2025年10月の家宅捜索により、そのビジネスモデルの法的リスクが露呈しました。この一件は、退職代行サービスを選ぶ上で、運営主体の「法的正当性」がいかに重要であるかを私たちに教えてくれます。
2025年11月現在、退職代行サービスの利用を検討するなら、以下の点を強く推奨します。
有給消化や退職日の調整など、会社との交渉が必要な場合は「労働組合」が運営するサービスを、未払い賃金や慰謝料請求など法的な紛争に発展する可能性がある場合は「弁護士」が運営するサービスを選びましょう。
料金の安さだけで選ぶのではなく、自身の状況を冷静に見極め、最も安全で確実な方法を選択することが、円満な退職と新たな一歩を踏み出すための鍵となります。この記事が、あなたの賢明なサービス選びの一助となれば幸いです。

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