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三島市の医療・介護施設様へ。スタッフの負担を劇的に改善するICT活用術|補助金情報も解説

2025年7月20日

三島市の医療・介護施設様へ。スタッフの負担を劇的に改善するICT活用術|補助金情報も解説

KUREBA

もはや他人事ではない。三島市の医療・介護現場が直面する「人手不足」という現実

静岡県東部に位置し、富士山からの雪解け水が湧き出る「水の都」として知られる三島市。その豊かな自然と歴史的な街並みは、多くの人々を魅了し、穏やかな暮らしの場を提供しています。しかし、この美しい街もまた、日本全体が直面する深刻な課題と無縁ではありません。それは、超高齢社会の進展に伴う「医療・介護人材の慢性的な不足」です。

厚生労働省の報告によれば、2040年には全国で約69万人もの介護職員が不足すると推計されています。特に、訪問介護サービスの有効求人倍率は15倍を超えるという異常事態に陥っており、これは静岡県や三島市においても決して対岸の火事ではありません。実際に、静岡労働局と三島市が連携して作成した事業計画においても、「介護、看護」分野は明確に人手不足分野として位置づけられています。

このような状況下で、現場の最前線に立つスタッフの方々は、日々増大する業務量とプレッシャーに晒されています。皆様の施設でも、このような声が聞こえてきませんか?

「手書きの記録業務に毎日2時間以上かかり、利用者様とゆっくり話す時間が全く取れない…」
「口頭での申し送りが中心で、スタッフによって情報の伝達度に差があり、ヒヤリハットが後を絶たない。」
「夜間の定期巡視とオンコール対応で、心身ともに疲弊しきっている。いつまでこの働き方が続けられるか不安だ。」

これらの悩みは、個々のスタッフの努力や根性だけで解決できる問題ではありません。構造的な課題であり、放置すればスタッフの離職を招き、さらなる人手不足という負のスパイラルに陥る危険性をはらんでいます。結果として、提供するケアの質が低下し、利用者様やそのご家族、そして施設経営そのものにも深刻な影響を及ぼしかねません。

では、この困難な状況を打開する術はないのでしょうか?いいえ、あります。その最も強力な鍵となるのが、「ICT(情報通信技術)」の戦略的な活用です。本記事では、三島市内の医療・介護施設様が、ICTを単なる「道具」としてではなく、「働き方を変革し、ケアの質を高めるパートナー」として導入・活用するための具体的な道筋を、豊富なデータと事例、そして活用可能な補助金制度の情報とあわせて、徹底的に解説していきます。スタッフの笑顔を取り戻し、利用者様から選ばれ続ける施設となるための一歩を、ここから踏み出しましょう。

なぜ今、医療・介護現場でICT化が急務なのか?

「ICT化」という言葉を聞くと、「難しそう」「コストがかかる」「うちの職員には使いこなせない」といった懸念が先に立つかもしれません。しかし、今やICTの活用は、一部の先進的な施設だけの取り組みではなく、持続可能な医療・介護サービスを提供するための「必須要件」となりつつあります。その背景には、避けては通れない3つの大きな潮流があります。

国の強力な後押し:生産性向上が経営の生命線に

最大の理由は、国の政策転換です。2024年度(令和6年度)の介護報酬改定では、「生産性の向上」が極めて重要なテーマとして位置づけられました。これは、限られた人材で増え続ける介護ニーズに応えていくためには、テクノロジーを活用して業務を効率化し、職員が専門性を発揮できる時間を創出することが不可欠であるという、国からの強いメッセージです。実際に、ICTを利活用している企業は、そうでない企業に比べて労働生産性が2〜3割高いという調査結果もあり、この流れは今後ますます加速するでしょう。ICT化は、もはや選択肢ではなく、施設経営を維持・発展させるための生命線なのです。

補足:ITとICTの違いとは?

ここで、「IT」と「ICT」の違いを簡単に整理しておきましょう。IT(Information Technology)がコンピュータやソフトウェアといった「情報技術そのもの」や「情報の処理・管理」に焦点を当てるのに対し、ICT(Information and Communication Technology)は、そこに「Communication(通信・伝達)」の要素が加わります。つまり、技術を使って人々のコミュニケーションを円滑にし、情報の伝達・共有を促進することで、業務や生活を豊かにするというニュアンスが強いのがICTです。介護現場で求められているのは、まさにこの「コミュニケーションを円滑にする」ICTの力なのです。

期待される3つの効果:職員・利用者・経営の「三方よし」を実現

ICT導入がもたらすメリットは、単なる業務効率化にとどまりません。それは、施設に関わるすべての人々にとってプラスとなる「三方よし」の効果を生み出します。

  1. スタッフの負担軽減と働きがいの向上
    記録業務や申し送り、巡視といった間接業務の時間を大幅に削減し、身体的・精神的負担を軽減します。これにより、残業時間の削減や有給休暇の取得促進にも繋がり、ワークライフバランスが改善。生まれた時間を本来最も注力すべき利用者様との直接的なコミュニケーションやケアに充てられるため、仕事への満足度や専門職としての「やりがい」が向上します。
  2. ケアの質の向上と利用者満足度
    情報がリアルタイムかつ正確に全スタッフ間で共有されることで、利用者様の小さな変化にも迅速に対応できるようになり、事故防止や重度化予防に繋がります。客観的なデータに基づいたケアプランの立案・評価(PDCAサイクル)も可能になり、より個別性の高い、質の高いケアが実現します。スタッフに心と時間の余裕が生まれることは、利用者様の安心感や満足度の向上に直結します。
  3. 健全な施設経営と競争力の強化
    業務効率化による残業代の削減や、ペーパーレス化による消耗品コストの削減は、直接的な経営改善に貢献します。さらに重要なのは、「働きやすい職場」であることが、深刻化する人材獲得競争において大きなアドバンテージとなる点です。離職率の低下と定着率の向上は、採用・教育コストの削減にも繋がります。質の高いケアと働きやすい環境は、施設の評判を高め、「選ばれる施設」としての競争力を強化するのです。【本編】現場の課題を解決!明日から使える目的別ICT活用術
ICTの重要性は理解できても、「具体的に何を導入すれば、どの課題が解決するのか」が分からなければ、導入には踏み切れません。この章では、医療・介護現場で特に負担の大きい3つの業務領域に焦点を当て、それぞれの課題を解決する具体的なICTツールと、その導入効果を、静岡県内の施設のデータを交えながら詳しく解説します。

1. 業務の7割を占める「記録・情報共有」の負担を劇的に削減する

【現状の課題】
「介護業務の7割は記録」と言われるほど、記録・報告業務は現場の大きな負担となっています。手書きの介護日誌、バイタルシート、事故報告書…。同じ内容を何度も転記し、勤務時間後に事務所のパソコンに再入力する。こうした非効率な作業が、スタッフの貴重な時間を奪い、残業の常態化を招いています。また、口頭や手書きのメモによる申し送りでは、情報の抜け漏れや誤解が生じやすく、ケアの質や安全性に直結するリスクを常に抱えている状態です。

【ICTによる解決策:介護記録ソフト・情報共有ツール】
この根深い課題を解決するのが、スマートフォンやタブレットで利用できる介護記録ソフトや情報共有ツールです。これらのツールを導入することで、記録から情報共有までのプロセスが劇的に変わります。

具体的なツール例

  • 介護記録ソフト/アプリ: スマートフォンやタブレットを携帯し、ケアを行ったその場で記録が完結します。多くのソフトには、音声入力機能や定型文を呼び出すテンプレート機能が搭載されており、キーボード入力が苦手なスタッフでも簡単かつ迅速に記録が可能です。写真や動画も添付できるため、褥瘡の状態変化やリハビリの様子など、文字だけでは伝わりにくい情報も正確に共有できます。代表的なソフトには「ケアコラボ」「CareViewer」「でらケア」などがあります。
  • インカム・ビジネスチャットツール: 全スタッフがインカムを装着することで、広い施設内でもリアルタイムに連携が取れます。「〇〇さん、応援お願いします」といったやり取りが瞬時にでき、ナースコールと連携させれば、誰がどの呼び出しに対応しているかが一目瞭然になります。また、LINEのような感覚で使えるビジネスチャットツール(例:メディカルケアステーション(MCS))を導入すれば、医師や看護師、ケアマネジャーといった多職種間での情報共有も、時間や場所を選ばずセキュアな環境で行えるようになります。

期待される効果

静岡県が県内のICT導入事業所(216事業所)を対象に行った調査では、驚くべき効果が報告されています。このデータは、皆様の施設がICTを導入した際の未来の姿を具体的に示しています。

  • 定量的効果:
    • 情報共有の円滑化: 導入事業所の91.7%が「情報共有がしやすくなった」と回答。
    • 記録時間の削減: 83.3%が「記録に要する時間が削減された」と実感。
    • 業務量の削減: 72.2%が「全体の業務量が減った」と回答。
    • ペーパーレス化: 78.2%が「紙の文書量が削減された」と回答し、約40%の事業所が紙の使用量を1〜3割削減しています。これにより、ファイリングの時間(75.9%が削減)や保管スペース(71.8%が削減)も大幅に圧縮されます。
  • 定性的効果:
    • 記録業務からの解放は、スタッフの心理的負担を大きく軽減します。
    • リアルタイムで正確な情報が共有されることで、ケアの判断ミスや対応の遅れが減り、ヒヤリハットの減少に繋がります。
    • 削減された時間を、利用者様とのコミュニケーションや、より質の高いケアを提供するためのカンファレンスに充てることが可能になります(静岡県の同調査では、削減された時間を「利用者とのコミュニケーション」に充てた事業所が55.1%と最多)。

【三島市近隣の事例】社会福祉法人 伊豆社会福祉事業会

三島市に隣接する伊豆の国市に拠点を置く伊豆社会福祉事業会では、静岡県の補助金を活用し、特別養護老人ホーム「玉じゅ園」などにセンサー内蔵型ベッドを導入しました。これは後述する見守りシステムの一環ですが、同時に全館にWi-Fi環境を整備し、タブレット端末での記録を実施するなど、情報共有のICT化にも積極的に取り組んでいます。これにより、事務負担の軽減と業務の省力化を実現しています。

2. スタッフの心身を疲弊させる「見守り・巡視」業務を効率化・高度化する

【現状の課題】
特に夜間の見守り業務は、スタッフにとって大きな負担です。2時間ごとの定期巡視は、スタッフ自身の睡眠を妨げ、疲労を蓄積させます。また、巡視の際に物音を立ててしまい、かえって利用者様を起こしてしまうことも少なくありません。常に「転倒・転落していないか」「急変はないか」というプレッシャーに晒され、精神的な負担は計り知れません。一方で、プライバシーへの配慮から、居室へのカメラ設置には抵抗を感じる施設も多いのが実情です。

【ICTによる解決策:見守りシステム・介護ロボット】
この課題には、見守りセンサーやAI搭載の見守りカメラが有効です。これらのテクノロジーは、24時間体制でスタッフの「目」となり、負担を軽減しつつ、安全性を飛躍的に向上させます。

具体的なツール例

  • 見守りセンサー: ベッドのマットレスの下や居室の壁に設置するタイプのセンサーです。利用者の心拍、呼吸、睡眠状態、離床・転落などを非接触で検知します。平常時は何も通知せず、異常を検知した時だけスタッフのスマートフォンやインカムに通知が届きます。これにより、不要な訪室を大幅に減らし、スタッフは必要な時にだけ駆けつけることができます。利用者の安眠を妨げることなく、スタッフの負担も軽減できる、まさに一石二鳥のツールです。
  • 見守りカメラ(AI搭載): 近年の見守りカメラは、プライバシー保護機能が格段に進化しています。利用者の姿をそのまま映すのではなく、シルエットや骨格で表示したり、特定のエリア(ベッド周辺など)のみを映したりする設定が可能です。さらに、AIが映像を解析し、転倒や転落といった危険な動きを検知した場合にのみアラートを発報します。万が一事故が起きた際も、録画データ(本人の同意取得が必要)を確認することで、原因究明や再発防止策の検討に役立てることができます。

期待される効果

  • 定量的効果: ある施設では、見守りシステムの導入により、夜間巡視の回数を半減させ、訪室にかかる時間を8割削減できたという報告もあります。事故発生時の早期発見率も向上し、重篤化を防ぐ効果が期待できます。
  • 定性的効果: 「何かあったらどうしよう」という漠然とした不安から解放され、スタッフの精神的負担が劇的に軽減されます。これは、厚生労働省の調査でも「見守りシステム導入により実感できた効果」の第1位が「職員の精神的・肉体的負担の軽減」であったことからも明らかです。また、睡眠パターンなどの客観的データが得られるため、それに基づいたケアプランの見直しや、ご家族への的確な状況説明が可能になります。

【三島市の取り組み】

三島市では、ICTを活用した高齢者支援に積極的に取り組んでいます。例えば、行方不明リスクのある高齢者向けに、QRコードを活用した見守りサービス『どこシル伝言板®』を導入し、夜間や休日でも迅速な対応ができる体制を整えています。このような市の姿勢は、施設単位での見守りシステム導入とも親和性が高いと言えるでしょう。

3. 複雑で時間のかかる「事務・バックオフィス業務」を自動化する

【現状の課題】
施設長や事務スタッフは、ケア業務以外にも膨大な事務作業を抱えています。毎月のシフト作成、職員の勤怠管理、煩雑な給与計算、そして制度改正のたびに複雑化する介護保険請求業務…。これらのバックオフィス業務は専門知識を要し、多くの時間を費やすため、本来注力すべき施設のマネジメントや人材育成、ケアの質向上といった業務にしわ寄せがいっているケースが少なくありません。

【ICTによる解決策:バックオフィス特化型ソフト】
これらの定型的かつ煩雑な業務は、ICTによる自動化が最も効果を発揮する領域です。勤怠管理システムやシフト作成ソフト、介護保険請求ソフトなどを導入することで、事務作業の大部分を効率化できます。

具体的なツール例

  • 勤怠管理・給与計算システム: タイムカードやICカード、スマートフォンアプリで出退勤を打刻するだけで、労働時間が自動で集計されます。集計されたデータは給与計算ソフトと連携し、面倒な計算作業を自動化。手作業による計算ミスを防ぎ、締め作業の時間を大幅に短縮します。
  • シフト自動作成ソフト: 職員の希望休や勤務条件、必要な資格などを登録すると、システムが最適な勤務シフトを自動で作成してくれます。急な欠勤が出た際の調整も容易になり、公平で効率的な人員配置が可能になります。シフト作成に毎月何十時間もかけていた管理者の負担を劇的に軽減します。
  • 介護保険請求ソフト: 日々の介護記録データと連携し、国保連への請求データを自動で作成します。返戻や査定のリスクを低減するチェック機能も充実しており、法改正にもアップデートで迅速に対応。請求業務にかかる時間と心理的ストレスを大幅に削減します。

期待される効果

  • 定量的効果: シフト作成にかかる時間を80%以上削減、請求業務にかかる時間を50%以上削減、といった事例は珍しくありません。静岡県の調査でも、ICT導入事業所ではバックオフィスソフトの導入も進められています。
  • 定性的効果: 施設長や管理者が煩雑な事務作業から解放されることの意義は非常に大きいものです。これにより、職員との面談や育成、ケアの質の向上に向けた取り組み、地域連携の強化、そして新たなサービス展開の検討など、施設の未来を創るための創造的な業務に時間とエネルギーを注ぐことができるようになります。

【三島市・静岡県限定】知らないと損!ICT導入に使える補助金・支援制度

ICT導入の大きなメリットを理解しても、やはり気になるのは初期投資のコストです。しかし、ご安心ください。国や静岡県は、介護現場の生産性向上を強力に後押しするため、手厚い補助金制度を用意しています。特に静岡県の制度は、全国的に見ても充実しています。この章では、三島市内の施設が活用できる補助金制度を、最新情報に基づいて分かりやすく解説します。知っているか知らないかで、数百万円単位の差がつく可能性もあります。

静岡県「介護テクノロジー導入支援事業費補助金」を徹底活用しよう

静岡県が実施する、介護分野のICT化を支援する最も中心的な補助金です。令和7年度から、従来の「介護分野ICT化等事業費補助金」という名称が「介護テクノロジー導入支援事業費補助金」に変更され、よりテクノロジー活用を重視する姿勢が明確になりました。

制度の概要

この補助金は、介護職員の身体的・精神的負担を軽減し、離職防止や職場定着を促進するとともに、生産性向上を通じて介護サービスの質の向上を図ることを目的としています。

静岡県 介護テクノロジー導入支援事業費補助金(令和7年度見込み)
項目 内容
目的 介護テクノロジーの導入を通じた、介護現場の生産性向上による職場環境の改善
補助対象機器
  • 介護ロボット: 移乗介助機器(装着型/非装着型)、入浴支援機器、見守り機器(センサー/カメラ)、排泄支援機器など
  • ICT機器: 介護記録ソフト、情報共有アプリ、タブレット端末、スマートフォン、インカム、Wi-Fi環境整備費用、バックオフィスソフトなど
補助率 補助対象経費の 3/4 (国の要綱改正により、従来の1/2から大幅に拡充)
補助上限額(例)
  • 移乗介助・入浴支援機器: 100万円/台
  • 見守り機器: 30万円/台
  • ICT機器(通信環境整備含む): 事業所規模により異なる(例:~20人規模で100万円)

※上限額は年度や機器により変動するため、必ず最新の公募要項をご確認ください。

申請の必須要件と【最重要】注意点

この手厚い補助金を活用するためには、いくつかの重要な要件と手順があります。これらを見落とすと、補助対象外となる可能性があるため、細心の注意が必要です。

  1. 「業務改善計画書」の作成・提出が必須
    単に「機器が欲しい」という申請は認められません。「どの業務の、どのような課題を解決するために、この機器を導入し、どのような効果(例:記録時間を1日30分削減する)を目指すのか」を具体的に記述した「業務改善計画書」の提出が必須です。これは、後述する導入ステップの第一歩とも言える重要なプロセスです。
  2. 「SECURITY ACTION」の宣言が必須
    ICT機器を導入し、利用者様の個人情報を取り扱う以上、情報セキュリティ対策は不可欠です。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の一つ星または二つ星を宣言し、その証明書を提出することが要件となっています。これは無料で宣言できる制度ですので、早めに手続きを済ませておきましょう。
  3. 【最重要】交付決定前の発注・契約は絶対NG!
    これが最もよくある失敗例です。補助金は、県に申請書を提出し、審査を経て「交付決定通知書」を受け取った後に事業(機器の発注や契約)を開始しなければなりません。焦って先に発注してしまうと、その費用は全額補助対象外となってしまいます。必ず、交付決定通知書が手元に届くまで待ってください。
  4. 導入後の効果報告義務
    補助金は、導入して終わりではありません。補助を受けた翌年度から3年間、先に提出した業務改善計画に対して、どのような効果があったかを県に報告する義務があります。これにより、PDCAサイクルを回し、継続的な業務改善に繋げることが期待されています。

三島市の取り組みと相談窓口

三島市自体も、ICTを活用したまちづくりに非常に積極的です。平成29年には民間企業と「ICTを活用したまちづくりに関する協定」を締結し、AIやオープンデータの活用による市民サービス向上を推進しています。また、高齢者向けに「スマホで仲間づくり講座」を開催するなど、市民のデジタルデバイド解消にも力を入れています。

このように、市全体がICT活用に前向きな雰囲気であることは、各施設が導入を進める上での追い風となります。導入にあたって何から手をつけて良いか分からない、どの機器が自施設に合うか迷う、といった場合には、一人で悩まずに専門の窓口に相談しましょう。

  • 三島市内の地域包括支援センター: 高齢者の総合相談窓口であり、地域の介護サービス事情に精通しています。まずは身近な相談先として活用できます。
  • 静岡県 介護ロボット相談窓口: 県は、介護ロボットやICTの導入を支援するための相談窓口を設置しています。専門の相談員が、機器選定から導入計画、補助金活用まで、幅広くアドバイスを提供してくれます。

ICT導入を失敗させないための5つのステップと成功の秘訣

補助金制度も整い、導入への意欲が高まっても、計画なく進めてしまうと、思わぬ失敗に繋がることがあります。高価なシステムを導入したものの、「現場の業務に合わず、誰も使わなくなった」「かえって一部の職員に負担が集中してしまった」といった声は、残念ながら少なくありません。

ICT導入は、単なる「機器の購入」ではなく、「業務プロセス全体の改革プロジェクト」です。成功のためには、現場を巻き込み、計画的かつ段階的に進めることが不可欠です。ここでは、導入を成功に導くための「5つのステップ」を、PDCAサイクルに沿って解説します。

Step 1: 課題の洗い出しと目標設定(PLAN)

【目的】導入の目的を明確にし、関係者全員で共有する。

最初に行うべきは、「何のためにICTを導入するのか」を徹底的に具体化することです。「何となく楽になりそうだから」という漠然とした動機では、適切な機器選定も効果測定もできません。まずは、管理者と現場の各職種の代表者からなる「業務改善委員会」のようなチームを立ち上げましょう。

その場で、「どの業務に、誰が、どれくらいの時間を費やしているのか」「どこに無駄やリスクがあるのか」を洗い出します。例えば、「夜勤者2名が、1回の巡視に平均20分、一晩で5回、合計100分を費やしている」「記録の転記ミスが月に3回発生している」といったように、現状をできるだけ定量的に把握します。その上で、「夜間巡視の時間を50分に短縮する」「転記ミスをゼロにする」といった、具体的で測定可能な目標(KPI)を設定します。このプロセスが、補助金申請に必要な「業務改善計画書」の骨子となります。

Step 2: 機器・システムの選定と比較検討(PLAN)

【目的】自施設の課題と目標に最も合致したツールを見つける。

目標が明確になったら、それを達成するためのツールを探します。ここで重要なのは、1社の製品だけを見て決めないことです。必ず複数の製品の資料を取り寄せ、オンラインデモやトライアル(試用)を体験しましょう。比較検討する際のポイントは以下の通りです。

  • 操作性: 現場のスタッフが直感的に使えるか? ITが苦手な職員でも、簡単な研修で使えるようになるか?
  • 機能: 自施設の課題解決に必要な機能が過不足なく備わっているか? 不要な高機能が多すぎて、かえって複雑になっていないか?
  • サポート体制: 導入時の研修や、導入後のトラブル対応は迅速か? 電話やメールだけでなく、訪問サポートはあるか?
  • 連携性: 既に導入している請求ソフトや他のシステムとデータ連携できるか?
  • コスト: 初期費用だけでなく、月額利用料や保守費用といったランニングコストを含めたトータルコストはいくらか?

価格だけで選ぶと、後で「使いにくくて定着しない」「サポートが悪くて困っている」といった問題が起きがちです。現場のスタッフにもデモに参加してもらい、実際に触ってもらった上で、総合的に判断することが成功の鍵です。

Step 3: 導入計画の策定と補助金の申請(PLAN)

【目的】導入までの具体的なスケジュールと役割分担を決め、資金を確保する。

導入する機器が決まったら、具体的な導入計画を立てます。いつまでに何をやるのか(導入スケジュール)、誰が責任者か(担当者)、どのような研修を行うのか(研修計画)を文書化します。この計画に基づいて、Step1で設定した目標を盛り込んだ「業務改善計画書」を完成させ、ベンダーから取得した見積書など必要書類を揃えて、静岡県の補助金に申請します。公募期間は限られているため、早めに準備を始めることが肝心です。

Step 4: スモールスタートと運用ルールの策定(DO & CHECK)

【目的】失敗のリスクを最小限に抑えながら、現場に定着させる。

補助金の交付が決定し、いよいよ導入です。しかし、ここでいきなり全施設・全職員に一斉導入するのはリスクが高い方法です。まずは、ICT導入に前向きな職員がいる特定のユニットや部署を「モデルユニット」として、試験的に導入する「スモールスタート」をお勧めします。

モデルユニットで運用する中で、課題や改善点が見えてきます。それらを元に、「記録はこのテンプレートを使う」「申し送りはこのチャットグループで行う」といった、シンプルで分かりやすい運用ルールを作成します。最初から完璧なルールを目指す必要はありません。運用しながら改善していくことが重要です。この試行期間で得られた成功体験やノウハウが、全施設へ展開する際の強力な武器となります。

Step 5: 研修の実施と効果測定・改善(ACTION)

【目的】全職員のスキルを底上げし、PDCAサイクルを回して効果を最大化する。

モデルユニットでの運用が軌道に乗ったら、いよいよ全施設へ展開します。その際、全職員を対象とした集合研修やOJT(現場研修)を必ず実施してください。職員間のITスキルや意識の差を放置すると、「使える人」と「使えない人」に分断され、結局は業務が非効率になります。研修では、操作方法だけでなく、「なぜこれを導入するのか(目的)」、「これを使うと、我々の仕事がどう良くなるのか(メリット)」を丁寧に伝え、全員の理解と協力を得ることが重要です。

導入後は、定期的に効果測定を行います。Step1で設定した目標(KPI)が達成できているか(例:記録時間は本当に短縮されたか?)、アンケートなどで職員の負担感は軽減されたか、などを検証します。もし目標が達成できていなければ、その原因を探り、運用ルールを見直したり、追加の研修を行ったりします。この「計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Act)」のPDCAサイクルを回し続けることが、ICT導入の効果を最大化し、組織全体の生産性を継続的に向上させていくための秘訣です。

まとめ:スタッフの笑顔が、より良いケアを生む。ICTで働きやすい職場環境を三島市から

本記事では、三島市の医療・介護施設が直面する人手不足という深刻な課題に対し、ICT活用がいかに有効な解決策となり得るかを、具体的な方法論とデータに基づいて解説してきました。

手書きや転記作業に追われる「記録・情報共有」の課題は、介護記録ソフトやチャットツールで劇的に効率化できます。スタッフの心身を削る「見守り・巡視」の負担は、見守りセンサーやAIカメラが軽減し、安全性を高めます。そして、複雑な「事務・バックオフィス業務」は、専門ソフトの導入で自動化し、管理者を本来の業務に集中させることができます。

これらの導入を力強く後押しするのが、静岡県の「介護テクノロジー導入支援事業費補助金」です。補助率3/4という手厚い支援を活用しない手はありません。しかし、その活用には「業務改善計画」の策定や計画的な導入プロセスが不可欠です。本記事で示した5つのステップは、そのための確実な道しるべとなるはずです。

ここで改めて強調したいのは、ICT導入は、単なる業務効率化やコスト削減のための手段ではないということです。その本質は、スタッフの負担を減らし、心と時間の余裕を生み出すことで、彼らが本来最も大切にしたいと願っている「利用者様一人ひとりと真摯に向き合う時間」を創出するための、未来への投資に他なりません。

スタッフが笑顔で、やりがいを持って働ける職場環境。それこそが、質の高いケアの源泉であり、利用者様やご家族からの信頼を集め、地域で選ばれ続ける施設の礎となります。この挑戦を、ぜひ「水の都」三島市から始めてみませんか。

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