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人手不足は「採用」でなく「自動化」で解決する時代へ – 中小企業が今すぐ始めるべき業務改善

2025年7月20日

人手不足は「採用」でなく「自動化」で解決する時代へ – 中小企業が今すぐ始めるべき業務改善

KUREBA

「求人を出しても応募が来ない」「ようやく採用できても、すぐに辞めてしまう」。多くの中小企業の経営者が、今まさにこのような悩みを抱えているのではないでしょうか。少子高齢化が加速する日本では、人手不足はもはや一時的な問題ではなく、企業の存続を揺るがす構造的な課題となっています。

しかし、この困難な状況を「人手が足りないなら、採用するしかない」という従来の発想だけで乗り越えようとするのは、限界に近づいています。本記事では、視点を変え、「今いる人材で、いかに生産性を最大化するか」という新しいアプローチ、すなわち「定型業務の自動化」について掘り下げます。これは、単なるコスト削減策ではなく、企業の競争力を高め、従業員の働きがいを向上させるための戦略的な一手です。

日本が直面する深刻な人手不足の現状

日本の労働市場が極めて逼迫していることは、各種データが明確に示しています。総務省の発表によると、2024年度の平均完全失業率は2.5%と低水準で推移し、2年ぶりの改善を見せました。一方で、厚生労働省のデータでは、2024年度の平均有効求人倍率は1.25倍。これは、求職者100人に対して125件の求人があることを意味し、企業側が人材を確保することの難しさを物語っています。

この状況は、特に体力やリソースに限りがある中小企業にとって深刻です。実際に、2024年には人手不足を原因とする企業倒産が過去最多を記録しており、もはや看過できない経営リスクとなっています。

なぜ「採用」だけでは限界なのか?

人手不足を解消するために、多くの企業がまず採用活動の強化に乗り出します。しかし、現在の市場環境では、このアプローチにはいくつかの大きな壁が存在します。

  • 激化する人材獲得競争:少ない求職者を多くの企業が奪い合う構図のため、中小企業が大企業と同等の条件を提示するのは困難です。
  • 上昇し続ける人件費:人材を確保するために賃金水準を引き上げざるを得ず、固定費の増大が経営を圧迫します。
  • 育成の時間とコスト:仮に採用に成功しても、新入社員が戦力になるまでには教育・研修の時間とコストがかかります。その間に既存社員の負担が増加するケースも少なくありません。

これらの理由から、採用だけに依存する戦略は、不安定で持続可能性が低いと言わざるを得ません。経営資源を「人の数を増やす」ことだけに投下するのではなく、「業務の質を高める」ことに振り向ける発想の転換が求められています。

新たな解決策「定型業務の自動化」とは?

そこで注目されるのが「定型業務の自動化」です。これは、これまで人間が手作業で行ってきた、ルールが決まっている反復的な作業を、ITツールに任せることを指します。

この自動化を実現する中核技術がRPA(Robotic Process Automation)です。RPAは「ソフトウェアロボット」とも呼ばれ、人間がパソコン上で行う操作(データ入力、クリック、ファイル操作など)を記憶し、24時間365日、正確に再現してくれます。

「専門的な知識が必要そう…」と懸念されるかもしれませんが、近年はプログラミング不要で直感的に操作できる「ノーコード/ローコード」型のRPAツールが増加しており、IT専門部署がない中小企業でも導入のハードルは大きく下がっています。

中小企業がRPA導入で得られる5つの具体的メリット

RPAを導入することで、中小企業は人手不足の解消だけでなく、経営体質の強化に繋がる多くのメリットを享受できます。

1. 生産性の飛躍的向上と時間創出

RPAロボットは、人間のように休憩や睡眠を必要とせず、高速で作業を続けます。これまで数時間かかっていたデータ入力や集計作業が、数分で完了することも珍しくありません。ある中小企業では、RPA導入後わずか3ヶ月で20業務を自動化し、年間約1,150時間もの業務効率化を実現した事例もあります。

2. ヒューマンエラーの削減と品質向上

請求書の金額間違いや顧客データの入力ミスなど、手作業にはヒューマンエラーがつきものです。RPAは決められたルール通りに寸分違わず作業を実行するため、ミスを根本的に防ぎます。これにより、業務品質が安定し、手戻りやクレーム対応といった余計なコストも削減できます。

3. コスト削減とリソースの最適化

定型業務をRPAに任せることで、残業代などの人件費を直接的に削減できます。また、業務量の増加に対して新たな人員を採用するのではなく、RPAで対応することが可能になり、長期的なコスト抑制に繋がります。ある調査によれば、RPA導入によって35〜65%の労働コスト削減が期待できるとされています。

4. 従業員満足度の向上とコア業務への集中

単純作業から解放された従業員は、より付加価値の高い、創造的な業務に集中できるようになります。例えば、顧客とのコミュニケーション、新しいサービスの企画、業務改善の提案などです。これは従業員のモチベーションやスキルアップに繋がり、結果として離職率の低下と企業全体の競争力強化に貢献します。

5. 業務プロセスの可視化と標準化

RPAを導入する過程で、必ず「どの業務を、どのような手順で自動化するか」を整理する必要があります。この作業を通じて、これまで属人化していた業務フローが可視化・標準化されます。これにより、特定の担当者がいないと業務が止まるというリスクを低減し、組織全体の業務効率が向上します。

自動化はどの業務から?RPAが得意な定型業務の例

RPAは万能ではありません。創造的な判断や複雑なコミュニケーションが求められる業務は苦手です。一方で、以下のような「ルールが明確」「繰り返し発生する」「PC上で完結する」業務は、RPAによる自動化の効果が非常に高い領域です。

中小企業におけるRPAの主な活用業務と自動化適合度

経理・財務:請求書・納品書の作成、経費精算データのチェック、入金消込作業
人事・総務:勤怠データの集計、給与計算システムへの入力、各種申請書の処理
営業・マーケティング:競合の価格調査、Webからのリスト作成、顧客データ管理システムへの入力
製造・卸売:受発注データのシステム入力、在庫データの更新、出荷指示書の作成

これらの業務は多くの企業に共通しており、自動化によるインパクトを実感しやすい最初のステップとして最適です。

中小企業がRPA導入を成功させるための4つのステップ

RPA導入のメリットは大きいものの、やみくもに進めては失敗に終わる可能性もあります。成功のためには、計画的なアプローチが不可欠です。

ステップ1:スモールスタートで成功体験を積む

最初から全社的な大規模導入を目指すのはリスクが高いです。まずは、特定の部署の、最も手間がかかっている単純な業務一つから始めてみましょう。「毎日1時間かかっていた作業が5分で終わるようになった」といった小さな成功体験を積み重ねることが、社内の理解を得て、次の展開に繋げるための鍵となります。

ステップ2:現場を巻き込み、課題を明確化する

自動化の対象となる業務を最もよく知っているのは、日々の業務を担当している現場の従業員です。経営層だけで決めるのではなく、現場のヒアリングを通じて「本当に困っていること」「時間がかかっていること」を洗い出すことが、効果的な自動化に繋がります。現場を巻き込むことで、導入後の抵抗感を減らし、主体的な活用を促す効果も期待できます。

ステップ3:費用対効果(ROI)を意識したツール選定

RPAツールには、月額数万円で利用できるものから高機能なものまで様々です。自社の目的と予算に合わせて、最適なツールを選ぶことが重要です。導入前に「どの業務を自動化すれば、何時間削減でき、人件費に換算するといくらの効果があるか」という費用対効果(ROI)を試算しましょう。この試算が、経営判断の明確な根拠となります。

ステップ4:外部の専門家も視野に入れた体制構築

中小企業では「ITに詳しい人材がいない」ことが導入の大きな障壁となります。無理に自社内だけで完結させようとせず、外部の専門家やコンサルティング会社のサポートを活用するのも有効な選択肢です。専門家は、業務の洗い出しからツール選定、導入後の運用サポートまでを支援し、失敗のリスクを最小限に抑えながら、最短距離での成果創出を後押ししてくれます。

まとめ:採用競争から抜け出し、持続可能な成長を目指す

深刻化する人手不足は、企業にとって大きな脅威であると同時に、旧来の働き方や業務プロセスを見直す絶好の機会でもあります。採用市場での消耗戦を続けるのではなく、「定型業務の自動化」によって社内の生産性を最大化する。このシフトチェンジこそが、これからの時代を生き抜く中小企業の新たな成長戦略です。

自動化は、単に人を機械に置き換えることではありません。人を、人にしかできない付加価値の高い仕事へと解放するための手段です。今いる従業員の力を最大限に引き出し、変化に強いしなやかな組織を構築するために、まずは身近な定型業務の自動化から、その第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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