バドミントンは、子供から大人まで幅広い世代に親しまれているスポーツです。シャトルのスピード感と戦略的なラリーの応酬が魅力ですが、その面白さを最大限に引き出すには、適切なコート環境が欠かせません。公式戦で使われるコートには厳密な規格がありますが、自宅の庭や公園で気軽に楽しむための簡易的なコートも作ることができます。
この記事では、バドミントンコートの公式な寸法やラインの意味といった基本情報から、床材や照明などの周辺環境、さらにはAmazonなどで手軽に購入できるグッズを使った簡易コートの設営方法まで、網羅的に解説します。
バドミントンコートの基本:公式寸法とラインの役割
バドミントンコートは長方形で、そのサイズやラインの配置は世界バドミントン連盟(BWF)によって厳密に定められています。ここでは、公式コートの基本的な構造を見ていきましょう。
コート全体の寸法と面積
公式なバドミントンコートの全長は13.4m(44フィート)です。一方、幅はプレー形式によって異なります。ダブルスでは6.1m(20フィート)、シングルスでは5.18m(17フィート)と、ダブルスよりも両サイドが約46cmずつ狭くなります。この違いは、コートに引かれたラインによって区別されます。
コートの総面積は、ダブルスコートで約81.74平方メートル、シングルスコートで約69.41平方メートルとなります。これは、日本の畳で換算するとそれぞれ約45畳と約38畳に相当し、想像以上に広いスペースが必要であることがわかります。
また、安全なプレーのためには、コートの周囲に十分なクリアランス(障害物のない空間)が必要です。BWFの国際大会基準では、コートのベースライン後方に最低2m、サイドラインの外側に最低1.5mのスペースが求められています。隣接するコート間にも最低1.5mの間隔が必要です。
各ラインの名称と意味
コートに引かれた線はすべて幅40mmで、色は白または黄色など、床面と見分けやすい色が推奨されています。それぞれのラインには重要な役割があります。
- サイドライン:コートの長辺を定める線。内側の線がシングルス用、外側の線がダブルス用です。
- バックバウンダリーライン:コートの短辺(最も後ろ)を定める線。シングルスでは、この線がサーブの有効範囲の限界(ロングサービスライン)も兼ねます。
- ショートサービスライン:ネットから1.98mの位置に引かれた線。サーブはこの線より奥に打たなければなりません。
- ロングサービスライン(ダブルス用):ダブルスのサーブ時にのみ使用される線で、バックバウンダリーラインから内側に76cmの位置にあります。ダブルスのサーブはこの線より手前に打つ必要があります。
- センターライン:コートを左右に分割する線。サーブを入れるべきサービスコート(右か左か)を区切ります。
これらのラインによって、コートは4つのサービスコートに分割されます。各サービスコートは、長さ3.88m、幅2.53mの長方形です。
ネットと支柱の公式規格
コートの中央に張られるネットと、それを支える支柱にも細かい規定があります。これらはプレーの公平性を保つために不可欠な要素です。
ネットの高さと幅
バドミントンネットの高さは、床面から測定して、両端の支柱部分で1.55m(5フィート1インチ)、中央部分で1.524m(5フィート)と定められています。中央がわずかに低くなるのが特徴です。
ネットの幅は、ダブルスコートの幅全体をカバーする最低6.1mが必要で、奥行き(上下の幅)は760mmです。素材は、視認性を妨げないように、暗い色の細い紐で作られるのが一般的です。
支柱の設置場所
ネットを支える支柱は、シングルスの試合であっても、常にダブルス用のサイドライン上に設置されます。高さは床面から1.55mで、ネットを張ったときに垂直を保つ必要があります。支柱やその支持具がコートの内側に入り込むことは認められていません。
快適なプレー環境を整える:コート以外の重要要素
公式の寸法だけでなく、床材、天井の高さ、照明といった周辺環境も、プレーの質と安全性に大きく影響します。
床材(サーフェス)の種類と選び方
バドミントンコートの床材は、プレーヤーの足への負担を軽減し、安定したフットワークをサポートする性能が求められます。主な選択肢は以下の通りです。
- 木製(ソリッドハードウッド):プロの試合や多目的スポーツホールで最も評価が高い選択肢です。優れた衝撃吸収性と耐久性を持ち、均一なプレー感を提供します。BWFは国際基準の施設において、木製のスプリングフロアまたは同等の床を要件としています。
- 合成ビニール(PVC):専用のバドミントン施設でよく採用されます。クッション性が高く、メンテナンスが容易な点がメリットですが、木材に比べて耐久性は劣る場合があります。
- モジュラータイル:設置や撤去が簡単なため、仮設コートや屋外での使用に適しています。さまざまな下地の上に設置できる柔軟性があります。
施設の用途、予算、メンテナンス体制などを考慮して、最適な床材を選ぶことが重要です。Junckers Hardwoodなどの専門メーカーは、EN 14904といった国際的なスポーツフロア基準を満たす製品を提供しています。
天井の高さ:レベル別推奨値
高く打ち上げられたシャトルが天井に当たらないよう、十分な高さの確保が不可欠です。推奨される天井高は、プレーのレベルによって異なります。
- レクリエーションレベル:最低でも24〜29フィート(約7.3〜8.8m)の高さが望ましいとされています。これより低いと、特にダブルスで高くクリアを上げた際に天井に当たってしまう可能性があります。
- トーナメントレベル:BWFが定める国際大会の基準では、最低39フィート(約12m)の天井高が要求されます。
自宅や施設にコートを設ける際は、用途に合わせて必要な天井高を確認することが大切です。
照明(ライティング)の基準
照明は、シャトルの視認性やプレーヤーの快適性に直結する重要な要素です。適切な照明設計は、プレーの質を高め、目の疲労を軽減します。
照明の基準には、明るさ(照度)、均一性、グレア(眩しさ)の抑制などが含まれます。
- 照度(ルクス):プレーのレベルに応じて推奨される明るさが異なります。
- レクリエーション:200〜300ルクス
- トレーニング・学校:300〜500ルクス
- プロの試合:750〜2000ルクス
- 均一性:コート全体で明るさが均一であることが重要です。明るい場所と暗い場所が混在すると、シャトルを見失いやすくなります。均一性を示す指標は0.7以上が推奨されます。
- グレア制御:プレーヤーの視界に直接強い光が入らないよう、照明器具の角度や配置を工夫する必要があります。統一グレア評価(UGR)は19未満が理想的です。
近年では、省エネで長寿命なLED照明が主流となっています。色温度(光の色味)も選択可能で、リラックスした雰囲気の温白色(3000K-4000K)から、集中力を高める昼光色(5000K-6000K)まで、用途に応じて調整できます。
自宅や屋外で楽しむ!簡易バドミントンコートの作り方
体育館のような本格的な施設がなくても、工夫次第でバドミントンを楽しむことは可能です。ここでは、Amazonなどで手に入るアイテムを使って、自宅の庭や公園に簡易コートを設営する方法を紹介します。
必要なもの:ポータブルネットとラインテープ
簡易コートを作るために最低限必要なのは、「ポータブルネット」と「コートマーキング用のテープ」です。
- ポータブルネット:支柱とネットが一体になった組み立て式の製品です。工具不要で数分で設置できるものが多く、持ち運び用のバッグが付属しているため、どこへでも手軽に持っていけます。高さ調節が可能なモデルを選べば、バドミントンだけでなく、キッズ用テニスやピックルボールなど他のスポーツにも活用できます。
- ラインテープ:屋外の地面や体育館の床に一時的にラインを引くためのテープです。粘着性がありながら、剥がしたときに跡が残りにくい製品が便利です。正確な長方形を描くために、メジャーも用意しましょう。
ラインを引く際は、まず公式寸法(全長13.4m、幅6.1m)を参考に、設置したいスペースに合わせてサイズを調整します。すべてのラインを引くのが大変な場合は、四隅とサービスラインだけでも十分にゲームを楽しめます。
Amazonで見つかる!おすすめ簡易コート設営グッズ
Amazonでは、簡易コートの設営に役立つ様々な商品が販売されています。以下に代表的なカテゴリを紹介します。
ヒント:やなどのキーワードで検索すると、多くの選択肢が見つかります。
- オールインワン・バドミントンセット:ポータブルネット、ラケット、シャトル、キャリーバッグがすべて揃ったセットです。購入後すぐにプレーを始められるため、初心者や家族でのレクリエーションに最適です。FBSPORTやFranklin Sportsなどのブランドから、様々な価格帯の製品が提供されています。
- 多目的スポーツネット:前述の通り、高さ調節機能によりバドミントン以外のスポーツにも対応できるネットです。1台で複数のアクティビティを楽しみたい方におすすめです。
- コートマーキングキット:ラインテープだけでなく、コーナーマーカーや砂袋がセットになった商品もあります。風の強い屋外でもラインを固定しやすく、より正確なコート設営が可能です。
- 簡易フローリングタイル:屋外の地面が不均一な場合や、より本格的なプレー感を求める方向けに、連結式のプラスチックタイルも販売されています。耐候性があり、水はけの良い設計になっているものが多く、快適なプレー環境を作り出せます。
まとめ
バドミントンコートは、単なる長方形のスペースではありません。その寸法、ライン、ネットの高さから、床材や照明に至るまで、すべての要素がプレーの質と安全性に深く関わっています。公式規格を理解することは、競技への理解を深める第一歩です。
同時に、厳格なルールに縛られる必要もありません。ポータブルネットやラインテープといった便利なグッズを活用すれば、自宅の庭や近くの公園が、いつでも手軽なプレーグラウンドに変わります。本記事で紹介した情報を参考に、ぜひあなたに合ったスタイルでバドミントンを楽しんでみてください。

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