エンディングノートの書き方完全ガイド|項目例から注意点、選び方まで専門家が徹底解説

「終活」という言葉が一般的になり、その一環として「エンディングノート」に関心を持つ方が増えています。しかし、「何から書けばいいの?」「どんな種類があるの?」といった疑問から、なかなか一歩を踏み出せない方も少なくありません。

この記事では、終活の専門家がエンディングノートの基本的な役割から、具体的な書き方、選び方、そして注意点までを網羅的に解説します。この記事を読めば、あなたもきっと自分らしいエンディングノートを作成し、未来への不安を安心に変えることができるはずです。

エンディングノートとは?未来を豊かにする「自分だけの記録」

エンディングノートは、単なる「死の準備」のためのノートではありません。これまでの人生を振り返り、これからの人生をどう歩んでいきたいか、自分の思いを記すことで、今をより豊かに生きるためのツールです。

エンディングノートの目的と役割

エンディングノートの主な目的は、自分にもしものことがあった時(病気や事故、認知症、そして死)に備えて、家族や大切な人たちに自分の意思や必要な情報を伝えることです。具体的には、以下のような役割を果たします。

  • 家族の負担軽減:各種手続きや判断が必要な場面で、家族が迷わずスムーズに対応できるよう手助けします。
  • 意思の伝達:医療や介護、葬儀など、デリケートな問題に関する自分の希望を明確に伝えられます。
  • 人生の棚卸し:自分史や財産状況、人間関係を整理することで、人生を振り返り、今後の生き方を見つめ直すきっかけになります。
  • 備忘録:銀行口座や保険、パスワードなど、日常生活で必要な情報を一元管理する備忘録としても役立ちます。

エンディングノートは、残された家族のためだけでなく、これからの人生を楽しく悔いなく過ごすための「未来ノート」でもあるのです。

遺言書との決定的な違い:法的効力の有無

エンディングノートと遺言書は混同されがちですが、最も大きな違いは「法的効力の有無」です。

  • エンディングノート:法的効力はありません。書かれた内容はあくまで家族への「お願い」や「希望」であり、強制力はありません。その分、形式は自由で、どんな内容でも気軽に書き記すことができます。
  • 遺言書:民法で定められた形式で作成することで、法的な効力を持ちます。特に財産の相続(誰に何をどれだけ遺すか)については、遺言書で指定する必要があります。

財産分与など法的な手続きを確実に実行させたい場合は遺言書の作成が不可欠ですが、想いや希望を自由に伝え、家族の負担を軽くするためにはエンディングノートが非常に有効です。両方を併用することで、より万全な準備ができます。

なぜエンディングノートを書くべき?5つの大きなメリット

エンディングノートを作成することには、多くのメリットがあります。ここでは、特に重要な5つのメリットをご紹介します。

  1. 残された家族の負担を大幅に軽減できる
    もしもの時、家族は葬儀の手配、各種契約の解約、相続手続きなど、膨大な作業に追われます。どこに何があるのか、誰に連絡すればよいのかが記されていれば、家族の物理的・精神的な負担を大きく減らすことができます。
  2. 自分の希望を尊重してもらえる
    延命治療の希望、介護を受けたい場所、葬儀の形式など、自分の意思を明確に残しておくことで、家族はあなたの希望に沿った選択をしやすくなります。これは、家族が「これでよかったのだろうか」と後悔するのを防ぐことにも繋がります。
  3. 人生を振り返り、これからの生き方を考えるきっかけになる
    自分史や思い出を書き出す作業は、これまでの人生を客観的に見つめ直す良い機会です。自分の価値観や本当に大切にしたいことが明確になり、残りの人生をより充実させるための計画を立てるのに役立ちます。
  4. 心の整理と不安の軽減につながる
    漠然とした将来への不安や、普段は言えない感謝の気持ちを書き出すことで、心が整理され、精神的な安定を得られる効果があります。これは「筆記療法」にも通じる心理的効果です。
  5. 相続トラブルを未然に防ぐ助けになる
    財産リストを作成し、資産状況を明確にしておくことで、相続手続きがスムーズに進みます。また、財産分与に関する自分の考えを付記しておくことで、家族間の無用な争いを避ける一助となります。

いつから始める?終活の第一歩を踏み出す最適なタイミング

エンディングノートを書き始めるのに「早すぎる」ということはありません。一般的には定年退職を迎える60代や、親の介護・相続を経験する50代で始める方が多いですが、近年では30代、40代、さらには20代から関心を持つ人も増えています。

きっかけは人それぞれです。

  • 子どもの独立や結婚などのライフイベント
  • 自身の病気や健康への不安を感じた時
  • 親しい人の死に直面した時
  • ニュースやメディアで終活特集を見た時

大切なのは、「死の準備」と重く捉えるのではなく、「これからの人生をより良くするための活動」と前向きに考え、思い立った時に始めてみることです。

調査によると、終活をしたい理由として最も多いのは、全年代を通じて「家族に迷惑をかけたくないから」です。一方で、若い世代では「自分の人生の終わり方は自分で決めたい」という自己決定への意識も高い傾向が見られます。どの年代であっても、エンディングノートは自分と家族の双方にとって重要な意味を持つことがわかります。

【項目別】エンディングノートの書き方見本|これだけは押さえたい10大項目

エンディングノートに決まった形式はありませんが、残された家族が困らないために、また自分の想いを確実に伝えるために、押さえておきたい基本的な項目があります。ここでは、特に重要な10項目について、書き方のポイントと具体例を解説します。

1. 自分自身の基本情報

手続きの基本となる、あなた自身の情報をまとめます。誰が見ても分かるように正確に記入しましょう。

【記載内容の例】
・氏名、生年月日、血液型
・現住所、本籍地
・マイナンバー、パスポート番号、運転免許証番号
・健康保険証、年金手帳などの番号と保管場所
・家系図(法定相続人の確認に役立ちます
・自分史(学歴、職歴、思い出深い出来事など)

2. 財産に関する情報(資産と負債)

相続手続きで最も重要になる部分です。資産(プラスの財産)と負債(マイナスの財産)の両方を漏れなく記載することがトラブル防止の鍵です。

【記載内容の例】
預貯金:銀行名、支店名、口座種別、口座番号
不動産:所在地、名義、固定資産税の納税通知書の保管場所
有価証券:証券会社名、口座番号、銘柄、数量
保険:保険会社名、証券番号、受取人、連絡先
年金:年金手帳の保管場所、基礎年金番号
その他資産:自動車、貴金属、骨董品など
負債:住宅ローン、カードローン、奨学金などの借入先と残高
※通帳や証券の保管場所を明記し、暗証番号は直接書かず、別の方法で伝えるなどセキュリティに配慮しましょう。

3. 医療・介護に関する希望

万が一、自分の意思を伝えられなくなった時のために、医療や介護に関する希望を具体的に記しておきます。これは、家族が重い決断を迫られた際の大きな助けとなります。

【記載内容の例】
告知:病名や余命の告知を希望するかどうか
延命治療:人工呼吸器、胃ろうなどの延命措置を希望するかどうか
終末期(ターミナルケア):最期を迎えたい場所(自宅、病院、ホスピスなど)
臓器提供・献体:意思表示カードの有無と保管場所
かかりつけ医:病院名、担当医、連絡先
介護:希望する介護場所(自宅、施設など)、介護費用についての考え
※「延命治療は不要」とだけ書くのではなく、「意識がなく回復の見込みがないと複数の医師に診断された場合は、苦痛を取り除く治療に専念してほしい」など、具体的な状況を想定して書くと家族が判断しやすくなります。

4. 葬儀・お墓に関する希望

葬儀やお墓は、故人の遺志が尊重されやすい部分です。希望を書いておくことで、家族が葬儀社選びや形式で悩むのを防げます。

【記載内容の例】
葬儀の形式:一般葬、家族葬、直葬など
宗教・宗派:希望する宗教や無宗教など
規模・予算:おおよその参列者数や予算感
遺影写真:使用してほしい写真の指定と保管場所
連絡してほしい人:友人や知人の連絡先リスト
お墓:希望する埋葬方法(一般墓、樹木葬、散骨など)、菩提寺の情報
※生前に葬儀社と契約している場合は、その契約書類の場所も明記しましょう。

5. 大切な人たちの連絡先リスト

訃報を伝えてほしい親戚、友人、知人のリストを作成します。あなたとの関係性や連絡先(住所、電話番号、メールアドレス)をまとめておくと、家族が非常に助かります。

6. デジタル資産(デジタル終活)について

現代において見落とされがちなのがデジタル資産です。IDやパスワードが分からないと、家族は故人のデータにアクセスできず、有料サービスの解約も困難になります。

【記載内容の例】
パソコン・スマホ:ロック解除のパスワードやパターン
メール・SNS:主要なアカウントのIDとパスワード
ネットバンク・ネット証券:ID、パスワード、秘密の質問など
オンラインストレージ:写真やデータの保管場所とアクセス情報
有料サービス:利用しているサブスクリプションサービス一覧と解約方法
※パスワードを直接書くことに抵抗がある場合は、ヒントを記したり、パスワード管理アプリのマスターパスワードを信頼できる人にだけ伝えたりする方法もあります。

7. ペットに関する情報

ペットを飼っている場合、自分がお世話できなくなった後のことを託す必要があります。大切な家族の一員のために、必ず記載しておきましょう。

【記載内容の例】
・ペットの名前、種類、年齢、健康状態、性格
・かかりつけの動物病院
・普段食べているフードやアレルギー情報
・新しい飼い主としてお願いしたい人の名前と連絡先(事前に相談しておくことが重要)

8. 遺言書の有無と保管場所

法的な効力を持つ遺言書を作成している場合は、その有無と種類(自筆証書遺言、公正証書遺言など)、そしてどこに保管しているかを明確に記しておきます。これにより、相続手続きが円滑に開始されます。

9. 契約情報(サブスク等)

電気・ガス・水道といった公共料金のほか、新聞、携帯電話、インターネットプロバイダ、各種サブスクリプションサービスなど、月々支払いが発生している契約を一覧にしておくと、死後の解約手続きがスムーズになります。

10. 大切な人へのメッセージ

エンディングノートの最もパーソナルな部分です。事務的な情報だけでなく、家族や友人への感謝の気持ち、思い出、伝えたかった言葉などを自分の言葉で綴りましょう。このメッセージは、残された人々にとって何よりの宝物になります。

エンディングノートの選び方と入手方法|あなたに合う一冊は?

エンディングノートには様々な種類があり、それぞれに特徴があります。自分の目的や性格に合ったものを選ぶことが、長続きさせるコツです。

市販ノート・無料テンプレート・アプリの比較

主な入手方法は「市販のノート」「無料のテンプレート」「デジタルアプリ」の3つです。それぞれのメリット・デメリットを比較してみましょう。

種類 メリット デメリット こんな人におすすめ
市販ノート ・項目が整理されており書きやすい
・デザインが豊富
・手書きの温かみが伝わる
・費用がかかる(数百円~数千円)
・修正がしにくい
・保管場所に困ることがある
・何を書けばいいか分からない初心者
・パソコンが苦手な方
・手書きで想いを残したい方
無料テンプレート ・費用がかからない
・必要なページだけ印刷できる
・PCで入力・編集も可能
・自分で印刷・製本する必要がある
・デザインがシンプルなものが多い
・項目が合わない場合がある
・コストをかけたくない方
・自分なりにカスタマイズしたい方
・PC操作に慣れている方
デジタルアプリ/クラウド ・スマホやPCで手軽に始められる
・修正や更新が簡単
・写真や動画も保存できる場合がある
・データ消失のリスクがある
・サービス終了の可能性がある
・家族がデータにアクセスできない恐れ
・デジタル機器の操作に慣れている方
・頻繁に内容を見直したい方
・20代~40代の若い世代

市販のノートは書店や文具店、オンラインストアで購入できます。無料テンプレートは、法務省や多くの自治体、企業サイトで配布されています。アプリも様々な種類がリリースされており、無料で始められるものも多いです。

失敗しないための5つのポイントと注意点

せっかく書き始めたエンディングノートを無駄にしないために、作成時と作成後に気をつけたいポイントを5つ紹介します。

  1. 完璧を目指さず、書けるところから始める
    すべての項目を一度に埋めようとすると、負担になって挫折しがちです。まずは自分史や好きなことなど、楽しく書ける項目から手をつけてみましょう。「完璧でなくてもいい」という気持ちが大切です。
  2. 具体的かつ分かりやすい言葉で書く
    「葬儀は質素に」といった曖昧な表現は、かえって家族を混乱させます。「家族葬で、参列者は親族と親しい友人〇〇さんまで。予算は〇〇円程度で」のように、誰が読んでも解釈に困らないよう具体的に書きましょう。
  3. 定期的に内容を見直して更新する
    資産状況や人間関係、心境は時間とともに変化します。年に一度、自分の誕生日や年末年始など、時期を決めて内容を見直す習慣をつけましょう。古い情報のままでは、かえって混乱を招く可能性があります。
  4. 保管場所を決め、必ず家族に伝えておく
    最も重要なポイントです。どんなに素晴らしいノートを書いても、いざという時に見つけてもらえなければ意味がありません。鍵のかかる引き出しや耐火金庫などが安全ですが、必ず信頼できる家族に「エンディングノートを書いていて、〇〇に保管してある」と伝えておきましょう。
  5. 法的効力がないことを理解しておく
    繰り返しになりますが、エンディングノートには遺言書のような法的効力はありません。財産の分配などで法的な拘束力を持たせたい場合は、別途、正式な遺言書を作成することが必須です。

よくある質問(Q&A)

Q1. 家族に「縁起でもない」と反対されたらどうすればいいですか?

A1. 「死の準備」という側面だけでなく、「自分が倒れたり認知症になったりした時に、みんなが困らないようにするための備忘録だよ」と、残される家族の負担を軽くするためのものだと伝えてみましょう。「長生きしてほしいからこそ、今の元気なうちに一緒に考えておきたい」というアプローチも有効です。

Q2. 途中で書くのが面倒になってしまいました。

A2. 無理に続ける必要はありません。一度書くのをやめて、数ヶ月後、数年後にまた開いてみてください。気持ちが変わって、以前は書けなかった項目がすらすら書けることもあります。エンディングノートは「完成させること」が目的ではなく、「自分と向き合うプロセス」そのものに価値があります。

Q3. 個人情報をたくさん書くのが不安です。

A3. その不安はもっともです。金融機関の暗証番号やWebサービスのパスワードなどは、ノートに直接書くのではなく、「パスワードは〇〇のアプリで管理。マスターパスワードは妻にだけ口頭で伝えてある」のように、情報のありかを示す形にするのが安全です。保管場所も、家族以外の人目に触れない場所を慎重に選びましょう。


エンディングノートは、あなたの人生の物語であり、大切な人への最後の贈り物です。それは決して後ろ向きな活動ではなく、未来への不安を安心に変え、今この瞬間をより大切に、そして豊かに生きるための道しるべとなります。

この記事を参考に、まずはペンを取り、書けるところから始めてみませんか。あなたの想いが詰まった一冊が、あなた自身と、あなたの愛する人たちの未来を、きっと明るく照らしてくれるはずです。

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