「もう明日から会社に行きたくない…」そう思い詰めたとき、退職代行サービスは心強い味方になります。しかし、実際に利用するとなると、「依頼してから本当に辞めるまで、一体何日かかるのだろう?」という疑問が浮かぶのではないでしょうか。
この記事では、退職代行を利用した場合の期間について、法律上の原則から即日退職が可能になる仕組み、具体的な手続きの流れ、そしてサービス選びのポイントまで、網羅的に解説します。この記事を読めば、退職代行にかかる日数の全体像を正確に理解し、安心して次の一歩を踏み出せるようになるでしょう。
結論:退職代行は「即日~2週間」で完了する
結論から言うと、退職代行サービスを利用してから退職が完了するまでの期間は、「依頼した当日から2週間後」が最も一般的です。
日本の法律(民法第627条)では、期間の定めのない雇用契約(正社員など)の場合、労働者は退職の意思を伝えてから2週間が経過すれば、会社の合意がなくても労働契約を終了できると定められています。これは就業規則で「退職は1ヶ月前に申し出ること」などと定められていても、法律が優先されます。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
そのため、退職代行業者があなたに代わって会社に退職の意思を伝えた日が「申入れの日」となり、その2週間後が法的な退職日となります。しかし、多くの人が期待する「即日退職」、つまり「依頼した日から二度と出社しない」ことも、多くの場合で可能です。これは、残っている有給休暇を消化したり、会社が即日退職に合意したりすることで実現します。詳細な仕組みは後ほど詳しく解説します。
相談から退職完了までの5ステップと期間
退職代行を利用した場合、手続きはどのような流れで進むのでしょうか。相談から退職が法的に完了するまでの一般的な5つのステップと、それぞれの所要期間の目安を見ていきましょう。
ステップ1:業者への相談・申し込み(当日)
まずは、利用したい退職代行業者にLINEやメール、電話で連絡を取ります。多くの業者は24時間365日、無料相談を受け付けているため、深夜や休日でも連絡可能です。現在の状況(雇用形態、勤続年数、有給残日数、退職希望日など)を伝え、サービス内容や料金に納得できれば正式に申し込みます。このステップは、早ければ数十分で完了します。
ステップ2:打ち合わせと支払い(当日)
申し込み後、担当者と具体的な打ち合わせを行います。退職希望日、有給消化の希望、会社への伝達事項(私物の郵送依頼など)を詳細に伝えます。業者によっては、専用のヒアリングシートに記入する形式の場合もあります。打ち合わせが完了したら、指定された方法で料金を支払います。支払い方法はクレジットカードや銀行振込が一般的で、後払いに対応している業者もあります。
ステップ3:業者から会社へ退職連絡(依頼当日)
支払いが確認されると、退職代行業者があなたの代理として会社に連絡します。通常、依頼当日の朝(会社の始業時間)に、人事部や直属の上司宛に電話で退職の意思を伝えます。この際、以下の内容も併せて伝達されます。
- 本人が退職を希望していること
- 本日以降は出社しないこと
- 有給休暇の消化を申請すること
- 今後の連絡はすべて代行業者を通すこと(本人への直接連絡を控えるよう要請)
この連絡が完了した時点で、あなたはもう会社の人と直接やり取りする必要はなくなります。業者から「退職連絡が完了し、会社側も了承しました」という報告を受ければ、実質的な退職が確定します。
ステップ4:退職届の郵送と貸与品の返却(連絡後~)
業者からの指示に従い、退職届を作成して会社に郵送します。退職届は、会社からフォーマットの指定がなければ、代行業者が用意したテンプレートを使うのが一般的です。後々のトラブルを避けるため、内容証明郵便や簡易書留など、送付記録が残る方法で郵送しましょう。
同時に、健康保険証、社員証、PC、制服などの会社からの貸与品もまとめて郵送で返却します。私物が会社に残っている場合は、このタイミングで郵送してもらうよう業者経由で依頼します。
ステップ5:退職関連書類の受け取り(退職日以降)
法的な退職日(退職連絡から2週間後、または有給消化最終日)が過ぎると、会社から退職関連の重要書類が郵送されてきます。主な書類は以下の通りです。
- 離職票:失業保険の給付手続きに必要。
- 源泉徴収票:転職先での年末調整や確定申告に必要。
- 雇用保険被保険者証:転職先で雇用保険を引き継ぐ際に必要。
- 年金手帳(または基礎年金番号通知書):転職先で厚生年金の手続きに必要。
書類の到着時期は、離職票が退職日から1~3週間後、源泉徴収票は最終給与の支払日以降が目安です。もし書類がなかなか届かない場合は、代行業者に連絡すれば会社へ督促してくれます。これらの書類をすべて受け取った時点で、一連の退職手続きは完全に完了となります。
なぜ「即日退職」が可能?法律と3つの方法
多くの退職代行サービスが「即日退職可能」と謳っていますが、法律では「2週間前の申し入れ」が原則です。では、なぜ依頼したその日から出社せずに済むのでしょうか。その仕組みを3つの方法から解説します。
原則は民法が定める「2週間ルール」
前述の通り、民法第627条は、正社員などの無期雇用労働者が退職する場合、退職の意思表示から2週間が経過すれば雇用契約が終了することを定めています。これは労働者に与えられた権利であり、会社側はこれを拒否できません。退職代行サービスは、この法律を根拠に退職手続きを進めます。
方法1:有給休暇を消化して実質的に即日退職
即日退職を実現する最も一般的な方法が、残っている有給休暇の消化です。例えば、有給休暇が10日以上残っていれば、退職を申し出た日から退職日までの2週間(実労働日10日)をすべて有給休暇に充てることができます。これにより、法的には在籍しているものの、実際には一日も出社することなく退職日を迎えることができます。
会社側には、事業の正常な運営を妨げる場合に有給取得の時期を変更させる「時季変更権」がありますが、退職予定日を超えて時季を変更することはできないため、退職時の有給消化申請を会社は拒否できません。これは労働者の正当な権利です。
方法2:有給がない場合は「欠勤扱い」で対応
有給休暇が残っていない、または足りない場合でも、即日出社しないことは可能です。その場合、退職日までの期間は「欠勤扱い」となります。欠勤なのでその期間の給与は支払われませんが、「出社しなくてもよい」という目的は達成できます。会社側も、出社意思のない従業員を無理に在籍させるより、手続きを進める方が合理的と判断することがほとんどです。
方法3:会社の合意または「やむを得ない事由」
法律の原則にかかわらず、会社側が「本日付での退職」に合意すれば、その日に退職が成立します。退職代行業者からの連絡を受け、会社が即時退職を了承するケースも少なくありません。
また、民法第628条では、ハラスメントを受けている、心身の不調で就労が困難であるといった「やむを得ない事由」がある場合、労働者は即時に雇用契約を解除できると定められています。この場合、2週間の期間を待つ必要すらありません。退職代行の依頼を検討している人の中には、こうした状況に当てはまるケースも多く、即時退職の正当な理由となり得ます。
期間だけじゃない!運営元で変わる費用とサービス内容
退職代行サービスを選ぶ際、期間と並んで重要なのが「費用」と「サービス内容」です。これらはサービスの運営元によって大きく異なります。自分の状況に合ったサービスを選ぶために、それぞれの特徴を理解しておきましょう。
運営元は3種類:民間企業・労働組合・弁護士
退職代行サービスの運営元は、大きく分けて「民間企業」「労働組合」「弁護士」の3つに分類されます。対応できる業務範囲と費用相場が異なるため、注意が必要です。
- 民間企業運営
- 費用相場:約2万円~3万円
- 特徴:最も安価で手軽に利用できます。主な業務は「退職意思の伝達」のみです。有給消化や退職日の調整といった「交渉」は、弁護士法で禁止されている非弁行為にあたるため行えません。「とにかく辞める意思だけ伝えてほしい」という場合に適しています。
- 労働組合運営
- 費用相場:約2.5万円~3万円
- 特徴:労働組合法に基づく「団体交渉権」を持っているため、会社との交渉が可能です。有給消化の申請や退職日の調整、未払い給与の請求(交渉)など、民間企業ではできない範囲まで対応できます。費用とサービス内容のバランスが良く、多くのケースに対応できるため人気があります。
- 弁護士運営
- 費用相場:約5万円~10万円以上
- 特徴:最も費用は高くなりますが、法律の専門家として最も広範な対応が可能です。退職手続きの代理はもちろん、未払い残業代の法的な請求、損害賠償請求への対応、万が一の訴訟に発展した場合の代理など、あらゆる法的トラブルに対応できます。会社との間に深刻なトラブルを抱えている場合に最も安心できる選択肢です。
単純に費用だけで選ぶのではなく、「会社と交渉してほしいことがあるか」「法的なトラブルに発展する可能性があるか」を基準に、自分の状況に合った運営元を選ぶことが重要です。
追加料金はかかる?注意すべきポイント
多くの退職代行サービスは「追加料金一切なし」を掲げており、基本料金のみで退職完了までサポートしてくれます。しかし、一部のサービスでは以下のような追加料金が発生する可能性があるため、契約前に確認しておきましょう。
- 労働組合への加入費:労働組合運営のサービスを利用する場合、組合への一時的な加入が必要となり、数千円程度の組合費が別途かかることがあります。
- 成功報酬:弁護士に依頼して未払い残業代などを請求した場合、回収額の20~30%程度が成功報酬として発生することがあります。
- オプション料金:「即日対応」をオプションとして別料金に設定している格安業者も稀に存在します。
料金体系が明瞭で、何が含まれていて何が含まれていないのかを公式サイトでしっかり確認することが、後々のトラブルを防ぐ鍵となります。
退職完了後の手続きチェックリスト
退職代行業者から「退職確定」の連絡を受けた後も、あなた自身で行うべき手続きがいくつかあります。スムーズに次のステップへ進むために、やるべきことを確認しておきましょう。
会社へ返却するもの
以下の貸与品は、速やかに会社へ郵送で返却しましょう。梱包は丁寧に行い、記録が残る方法(宅配便や簡易書留など)で発送するのが基本です。
- 健康保険証(退職日の翌日以降は使用不可)
- 社員証、IDカード、社章
- 会社から貸与されたPC、スマートフォン
- 制服、作業着
- 経費で購入した備品
- 会社の名刺
会社から受け取る重要書類
退職後、会社から以下の書類が郵送されてきます。これらは転職や失業保険の受給に不可欠なものなので、届いたら内容を確認し、大切に保管してください。
離職票(1・2)
失業保険(基本手当)をハローワークで申請する際に必要です。退職者から希望がないと発行しない会社もあるため、代行業者を通じて事前に発行を依頼しておくのが確実です。通常、退職日から10日~2週間程度で届きます。
源泉徴収票
その年に支払われた給与総額と、徴収された所得税額が記載された書類です。転職先企業での年末調整、または自身での確定申告に必要となります。最終給与の計算が終わった後に発行されるため、退職後1ヶ月以内を目安に届きます。
雇用保険被保険者証
雇用保険に加入していた証明書です。転職先に提出し、雇用保険の加入期間を引き継ぐために使います。会社が保管している場合が多いので、退職時に返却してもらいます。
年金手帳(または基礎年金番号通知書)
こちらも会社が預かっている場合、退職時に返却されます。転職先での厚生年金手続きに必要です。
これらの書類が予定を過ぎても届かない場合は、手続きが漏れている可能性があります。すぐに退職代行の担当者に連絡し、会社への督促を依頼しましょう。多くのアフターフォロー付きサービスが対応してくれます。
よくある質問(Q&A)
- Q1. 即日退職したい場合、いつまでに依頼すればいいですか?
- A1. あなたの出勤時間(始業時間)より前に依頼するのがベストです。多くの業者は早朝や深夜でも対応していますが、確実に当日の欠勤連絡に間に合わせるためには、始業時間の1~2時間前までには相談・依頼を完了させておくと安心です。始業時間を過ぎてしまうと、会社からあなたに欠勤確認の連絡が入ってしまう可能性があります。
- Q2. 退職代行を使ったら、会社から直接連絡が来ませんか?
- A2. 基本的には来ません。退職代行業者は、会社への初回連絡時に「今後の連絡はすべて代行業者を窓口とし、本人や家族には直接連絡しないように」と明確に伝えます。法的な強制力はありませんが、ほとんどの企業はこの要請に従います。万が一連絡があった場合も、自分で対応せず、すぐに代行業者に報告すれば対処してもらえます。
- Q3. 会社に置いてきた私物はどうなりますか?
- A3. 郵送してもらうよう依頼できます。代行業者との打ち合わせの際に、「私物を着払いで郵送してほしい」と伝えれば、業者が会社にその旨を伝えてくれます。どこに何があるかを具体的に伝えておくとスムーズです。ただし、トラブル防止のため、貴重品や大切なものは事前に持ち帰っておくことをお勧めします。
- Q4. アルバイトやパートでも利用できますか?
- A4. はい、利用できます。ほとんどの退職代行サービスは、正社員、契約社員、派遣社員、アルバイト・パートなど、あらゆる雇用形態に対応しています。業者によっては、アルバイト・パート向けの割引料金を設定している場合もあります。
まとめ
退職代行サービスを利用した場合にかかる日数は、法律上の手続きと個人の状況によって変動しますが、要点は以下の通りです。
- 法的な退職日は、退職の意思を伝えてから2週間後が原則。
- 有給休暇の消化や欠勤扱いを組み合わせることで、依頼した当日から出社しない「実質的な即日退職」が可能。
- 手続きの全期間は、相談から退職書類の受け取りまで含めると約1ヶ月程度が目安。有給消化が長い場合は2ヶ月以上かかることも。
- かかる日数だけでなく、運営元(民間・労組・弁護士)によるサービス範囲と費用の違いを理解し、自分の状況に最適な業者を選ぶことが成功の鍵。
退職は、次のキャリアへ進むための重要な転機です。心身ともに限界を感じているなら、退職代行サービスをうまく活用し、スムーズかつ確実に退職手続きを進めることは、自分自身を守るための賢明な選択と言えるでしょう。

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