市民の暮らしを豊かにする静岡市の図書館ネットワーク
静岡市には、葵区、駿河区、清水区の3区にわたり、市民の知的好奇心と生涯学習を支えるための図書館ネットワークが張り巡らされています。中央図書館を筆頭に、各地域に根差した12の館と分館、市内を巡回する移動図書館、そして時間や場所を選ばずに利用できる電子図書館が、市民一人ひとりの多様なニーズに応えています。これらの図書館は、単に本を貸し出す場所にとどまらず、情報収集の拠点、地域文化の継承、そして人々が集う交流の場として、重要な役割を担っています。
特色豊かな主要図書館ガイド
静岡市内には、それぞれが独自の強みを持つ図書館が点在しています。ここでは、特に中心的な役割を担う4つの図書館を紹介します。
中央図書館:市の知の中枢
葵区大岩本町に位置する静岡市立中央図書館は、市の図書館ネットワークの中核をなす存在です。幅広い分野の資料を所蔵し、市民のあらゆる調査研究のニーズに応える体制を整えています。平日は夜7時まで開館しており、仕事帰りにも立ち寄りやすいのが魅力です。また、静岡市に関する郷土資料も充実しており、地域の歴史や文化を深く知るための貴重な情報源となっています。
御幸町図書館:ビジネスと国際交流の最前線
葵区御幸町のペガサートビル内にある御幸町図書館は、ビジネス支援と多言語サービスに特化した先進的な図書館です。2004年の開館当初からこれらのサービスを重点的に展開し、その取り組みが評価され、2007年には「Library of the Year」の優秀賞を受賞しました。館内には、利用者が無料でアクセスできる商用データベースを備えたパソコンが多数設置されており、起業や中小企業の活動を力強くサポートしています。また、併設されている静岡市産学交流センターとの連携により、専門的なビジネス情報へのアクセス拠点としての役割も果たしています。
南部図書館:家族みんなで楽しめる地域の拠点
駿河区の拠点館である南部図書館は、登呂遺跡の復元家屋をモチーフにした特徴的な外観を持つ図書館です。静岡市立図書館12館の中でトップの登録者数・貸出点数を誇り、多くの市民に親しまれています。特に子育て世代や若い世代の利用者が多く、親子向けの読み聞かせ会が頻繁に開催されるほか、中高生向けのYA(ヤング・アダルト)コーナーや就職活動に役立つコーナーも充実しています。誰もが気軽に文化的な楽しみに触れられる、地域に開かれた図書館です。
清水中央図書館:歴史と文化を未来へつなぐ
清水区の拠点館である清水中央図書館は、約50万冊という豊富な蔵書数を誇ります。特筆すべきは、江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜公ゆかりの貴重な書籍群『徳川文庫』を所蔵している点です。また、海洋、港湾、サッカーなど、清水ならではのテーマに関する郷土資料が充実しており、地域の歴史や文化を深く探求するための重要な拠点となっています。子ども向けのおはなし会から古文書講座まで、幅広い世代が楽しめるイベントも定期的に開催されています。
静岡市の図書館が提供する多様なサービス
静岡市の図書館では、従来の図書貸出にとどまらない、時代に即した多様なサービスを展開しています。
デジタル時代の情報アクセス:電子図書館とオンラインサービス
静岡市では、24時間いつでもどこでも読書を楽しめるを運営しています。スマートフォンやタブレットから電子書籍を借りることができ、毎月新しい本が追加されています。しかし、令和6年度の市民意識調査によると、その認知度はまだ十分とは言えず、約8割の市民が「知らない」と回答しています。図書館ではYouTubeでの使い方解説動画を公開するなど、周知と利用促進に力を入れています。
「しずおかし電子図書館について、当てはまるものを選んでください。」という問いに対し、「知らない」と回答した人が80.9%となり、認知度が低いことがわかりました。
このほか、インターネットを通じて貸出・予約状況の確認や貸出期間の延長ができる「マイライブラリ」サービスも提供されており、利用者の利便性向上に貢献しています。
専門的な学びと調査を支えるサービス
静岡市の図書館では、市民の「知りたい」「調べたい」という要望に応えるレファレンスサービスに力を入れています。図書館員が資料探しを手伝い、必要な情報源を効率よく見つけるためのサポートを行います。特に前述の御幸町図書館では、ビジネスに関する専門的な調査相談にも対応しています。また、中央図書館や清水中央図書館では、地域の歴史や産業に関する詳細な調査が可能です。
すべての市民に開かれたサービス
図書館は、あらゆる世代や状況の市民が利用できる施設です。各館では、赤ちゃんから参加できるおはなし会や、児童書コーナーの充実を図り、子どもの読書活動を推進しています。また、目の不自由な方向けの対面朗読や録音図書の貸出など、障害のある方へのサービスも提供しています。
さらに、図書館から遠い地域に住む人々のために、移動図書館「ぶっくる」が市内18か所のステーションを巡回しています。しかし、現在、車両の老朽化により山間地への訪問が困難になるという課題に直面しており、サービスの継続のために企業版ふるさと納税による寄付を募っています。
各区の図書館一覧とアクセス
静岡市内には、以下の図書館・分館があります。開館時間や休館日は各館で異なるため、詳細は公式サイトの開館カレンダーをご確認ください。
葵区の図書館
- 中央図書館: 静岡市葵区大岩本町29-1
- 御幸町図書館: 静岡市葵区御幸町3-21 ペガサートビル4・5F
- 藁科図書館: 静岡市葵区羽鳥本町5-9
- 西奈図書館: 静岡市葵区瀬名二丁目32-43
- 北部図書館: 静岡市葵区与一六丁目17-10
- 中央図書館麻機分館: 静岡市葵区有永町2-43
- 中央図書館美和分館: 静岡市葵区安倍口団地5-1
駿河区の図書館
- 南部図書館: 静岡市駿河区南八幡町3-1
- 長田図書館: 静岡市駿河区上川原13-1
清水区の図書館
- 清水中央図書館: 静岡市清水区入江岡町15-23
- 清水興津図書館: 静岡市清水区興津本町829
- 蒲原図書館: 静岡市清水区蒲原新田一丁目22-22
まとめ:進化し続ける静岡市の図書館
静岡市の図書館は、伝統的な本の貸出機関としての役割を果たしつつ、ビジネス支援、デジタル化、地域交流の促進といった現代社会の要請に柔軟に対応し、進化を続けています。各館が持つユニークな特色と、それを支える多様なサービスは、市民の学びや活動、そして日々の暮らしに欠かせない知的インフラとなっています。今後も、すべての市民にとってより身近で、頼りになる存在として、その価値を高めていくことが期待されます。
コメント