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ディグニクス技術革新の秘密!Spring Sponge X開発ストーリー

開発の背景と目標

卓球ラバーの最高峰シリーズ「ディグニクス」は、バタフライ社が9年間にわたる研究開発の末に完成させた新時代のラバーです。開発の背景には、2008年発売の「テナジー」シリーズ以来の進化を目指す意欲と、2020年東京オリンピックで世界のトップ選手に最高性能のラバーを提供したいという使命感がありました。テナジーシリーズが世界標準となった中で、バタフライは「今までにない最強のラバー」をコンセプトに、ティモ・ボル選手ら契約選手の協力を得て新ラバーの開発に着手しました。目標は、プラスチックボール時代においても飛距離・回転・安定性を高次元で両立し、選手の技術を引き上げることのできるラバーを生み出すことでした。特に、テンション系ラバーに劣らない弾み粘着ラバー並みの高い回転性能を両立させることが掲げられ、高い回転をかけつつも威力ある打球を可能にすることが目指されました。

この開発プロジェクトにはティモ・ボル選手が深く関わり、開発コード「No.09C」と名付けられた試作ラバーを2015年秋に試打した際、彼は「これは素晴らしいラバーになる」と即座にその可能性を感じました。その瞬間をきっかけにボール選手は開発パートナーとなり、以降は彼のフィードバックをもとに目標性能に近づけるために試行錯誤が繰り返されました。このようにトップ選手との協働のもと、バタフライは従来にない新境地のラバー開発に挑戦したのです。

開発スタートから約9年後の2019年4月、まず「ディグニクス05」が発売され、東京五輪に向けて正式にディグニクスシリーズが誕生しました。その後、同年11月には「ディグニクス64」「ディグニクス80」がラインナップに加わり、2020年4月にはシリーズ唯一の粘着性ハイテンションラバーとして「ディグニクス09C」が発売されています。こうして完成したディグニクスシリーズは、テナジーシリーズを凌駕する性能を備えた新時代のラバーとして、世界のトップ選手からも高い評価を得ることになりました。

技術的課題とブレークスルー

ディグニクス開発の中核にあったのが、「Spring Sponge X(スプリングスポンジX)」と呼ばれる新開発スポンジ技術です。従来のテナジーシリーズで採用された「スプリングスポンジ」をさらに進化させたこのスポンジは、開発チームが抱えていた技術的課題を解決するブレークスルーとなりました。最大の課題は、スポンジの硬さと柔らかさのトレードオフでした。一般に、スポンジを硬くすると弾性(反発力)は高まりますがボールをしっかり捉えにくくなり、逆に柔らかいスポンジはボールを捉えやすいものの反発力が弱く威力が出にくいという二律背反がありました。テナジーシリーズのスプリングスポンジはこの課題に対して変形しやすさと高弾性を両立させる画期的な技術でしたが、ディグニクスではそれをさらに上回る「変形しやすさと弾みの良さ」を実現することが目標とされました。

この目標達成のため、開発チームはスポンジの材質と構造に革新的な工夫を凝らしました。その結果生まれたのがSpring Sponge Xで、硬度40度(Butterfly基準)と従来のスプリングスポンジよりも4度も硬いにもかかわらず、なおかつ変形しやすさが14%向上しています。硬度を上げたことで反発弾力も3%向上し、高い威力を発揮できるようになりました。このように「硬さ」と「柔らかさ」を両立させたスポンジは、従来の常識を覆すブレークスルーであり、Spring Sponge Xがディグニクスシリーズの高性能化を支える要となったのです。

さらに技術的課題として挙げられたのが、ハイテンションシートと粘着性の両立でした。ディグニクス09Cでは、高いテンションをかけたシートによる強い弾みと、粘着性ラバーならではの強烈な回転性能を両立させることが目指されました。しかし一般にシートに高いテンションをかけると粘着力が低下しやすく、粘着ラバーの特性が発揮されにくいという難題がありました。バタフライは独自の配合技術によってこの問題を解決し、ハイテンション効果を大幅にアップしつつも粘着性ラバーの特長が発揮されるシートを開発することに成功しました。この独自配合のシートはディグニクス09Cの核心技術であり、高いテンションによる威力と粘着性による回転を高次元で両立させる画期的な成果です。

また、ディグニクスシリーズではシート表面の摩耗耐久性も飛躍的に向上しています。従来のラバーでは頻繁な打球によってシート表面が早期に摩耗し、回転性能が落ちてしまうという課題がありました。ディグニクスではこれに対し、開発過程で培った耐久性向上の配合技術を応用し、シートの摩耗耐久性を従来比で2倍以上に高めることに成功しました。実際、同じ箇所に一定回数ボールを当て続けた実験では、従来ラバーでは表面が激しく荒れていたのに対し、ディグニクスの表面はほとんど荒れずに済みました。このようなミクロな視点での耐久性実証により、ディグニクスのシート表面の強度向上が裏付けられています。

以上のように、ディグニクス開発においては「硬さと柔らかさの両立」「ハイテンションと粘着性の両立」「シート耐久性の向上」といった技術的課題がクリアされました。Spring Sponge Xの登場はその象徴であり、変形しやすさと弾みの良さを両立させたスポンジ技術によって、従来ラバーでは困難だった高性能の両立を実現したのです。

従来技術との比較(Spring Sponge Xの進化)

ディグニクスシリーズに搭載されたSpring Sponge Xは、従来のテナジーシリーズのスプリングスポンジと比較して明確な進化を遂げています。硬度に関しては、テナジーシリーズのスプリングスポンジが約36度(Butterfly基準)であったのに対し、Spring Sponge Xは40度と約4度硬く設計されています。一般にスポンジを硬くすると重量が増えてしまいますが、Spring Sponge Xは硬度を上げながらも重量はテナジーのスプリングスポンジと同等に抑えられています。実際、同じ硬度・厚さのスポンジで比較するとSpring Sponge Xは約3%軽量化されており、ラケット両面に貼っても重くなりすぎず、パワーの小さい選手でも負担なく使用できるよう配慮されています。

性能面では、Spring Sponge Xは従来のスプリングスポンジに比べて変形しやすさが14%向上し、反発弾力が3%向上しています。この結果、ボールをラバーに深く食い込ませて捉えることがより容易になり、強い回転をかけやすくなっています。また、反発弾力の向上によりボールの飛距離やスピードも増し、中後陣でのドライブ戦でも相手より先に打ち込むことができる威力が得られます。さらに硬度を上げたことでカウンター時の安定性も高まり、相手の強烈なドライブに対してもパワー負けせずに高精度のカウンターを返すことが可能になりました。このようにSpring Sponge Xは、従来のスプリングスポンジを凌駕する柔軟性と弾性を兼ね備えており、ディグニクスシリーズがテナジーシリーズ以上の性能を発揮する原動力となっています。

シート(トップシート)についても、ディグニクスではテナジーシリーズと比べて改良が加えられています。テナジーでは高いテンションによる威力を追求した結果、表面の粘着性や耐久性に課題が指摘されることがありました。しかしディグニクスでは、前述の通り独自配合による高機能シートを採用し、ハイテンション効果を高めつつも粘着性ラバー並みの回転性能を引き出すことに成功しています。またシートの球持ち(ボールを捉える時間)も向上しており、Spring Sponge Xの変形しやすさと相まってより弧線を描きやすく安定した打球が可能になっています。特にカウンターやチキータといったボールを薄く捉える技術でその効果が顕著で、スイングを前方向へ導きやすくなることで安定した威力ある返球が実現しています。

総じて、ディグニクスシリーズはテナジーシリーズを凌駕する「より強い回転」「より速いスピード」「より安定したコントロール」を備えています。テナジーシリーズが世界標準となった背景には、スプリングスポンジによる変形しやすさと高弾性の両立という技術革新がありました。ディグニクスシリーズはその流れを汲みつつも、Spring Sponge Xと進化したシート技術によってさらなる性能向上を達成しているのです。

製品の性能データと実測値

ディグニクスシリーズの高性能さは、バタフライ社が公表する性能指数や実測データからも裏付けられています。バタフライは各ラバーについて「スピード」「スピン」「弧線」の3項目で性能を数値化しており、その指標によればディグニクスシリーズはテナジーシリーズを上回るスピードとスピン性能を示しています。例えばシリーズの旗艦モデルである「ディグニクス05」はスピード指数13.5、スピン指数12.0と、テナジー05(スピード13.0、スピン11.5)よりも両方の項目で高い数値を記録しています。また「ディグニクス64」はスピード14.0とシリーズ中最高のスピード性能を誇り、これはバタフライ史上最速級のラバーであるブライスハイスピードに次ぐ値です。一方でスピン指数は11.0とやや低めですが、それでもテナジー05と同程度であり、スピードとのバランスを重視したモデルと言えます。「ディグニクス80」はスピード13.75、スピン11.75という中間的な数値を示し、シリーズの中では最もバランスの取れた性能を備えています。さらに「ディグニクス09C」はスピード13.0、スピン13.0という特徴的な指数で、粘着性ラバーとしては異例の高いスピード性能を発揮する一方で、ハイテンションラバーとしても突出したスピン性能を示しています。このように各モデルの性能指数を見ると、ディグニクスシリーズはテナジーシリーズに比べてスピード・スピンともに同等以上の水準にあり、特にディグニクス05や09Cは両面で高いバランスを達成していることがわかります。

各モデルの公表性能値とスポンジ硬度を比較すると、その特徴がより明確になります。

Data Source:

実際のプレーヤーによる実測データでも、ディグニクスシリーズの高性能さが裏付けられています。卓球レポート誌の試験では、日本代表の上田仁選手がディグニクスラバーを使用した際、ボールのスピード80km/h・スピン149回転/秒という驚異的な威力指数99のドライブを記録しました。同じ試験で松平健太選手もスピード79・スピン154というほぼ同水準の威力を発揮しており、これらはテナジーシリーズ時代と比べても際立った数値です。また別の比較試打では、ディグニクス09Cと従来の粘着ラバー「スピンアート」を比較した際、ディグニクス09Cの方がスピードは約5%、スピンは約15%も高い数値を示したとの報告があります。これらのデータは、ディグニクスシリーズがテナジーシリーズを凌駕する飛距離・回転量・安定性を備えていることを示しています。

さらに、耐久性の面でも定量的な向上が確認されています。前述の通り、シートの摩耗耐久性は従来比で2倍以上になっており、実際にトップ選手が使用した場合でもラバー交換の頻度が半減しています。水谷隼選手の談では、かつては3日に一度程度がラバー貼り替えの目安でしたが、ディグニクス80を使うようになってからは約1週間持つようになったといいます。このように長時間にわたり性能を維持できる点も、ディグニクスシリーズの魅力の一つです。

以下の表に、ディグニクスシリーズ主要モデルとテナジー05の性能指数と硬度をまとめます。

ラバー名 スピード指数 スピン指数 スポンジ硬度
ディグニクス05 13.5 12.0 40度
ディグニクス64 14.0 11.0 40度
ディグニクス80 13.75 11.75 40度
ディグニクス09C 13.0 13.0 44度
テナジー05 13.0 11.5 36度

(※スピード・スピン指数はバタフライ社の公表値。スポンジ硬度はButterfly基準)

表より、ディグニクスシリーズはテナジー05に比べてスピード・スピンともに高い数値を示しており、特にディグニクス05・09Cは両面で優れたバランスを誇っていることがわかります。ディグニクス64はスピード重視でシリーズ最高速を達成しており、ディグニクス80はスピードとスピンの中間点を狙った設計になっています。またスポンジ硬度はディグニクスシリーズ(40度/44度)の方がテナジー05(36度)より硬く設定されており、それによって高い反発弾力を実現しています。一方で前述のようにSpring Sponge Xの採用により硬さを感じにくくなっており、実打感としてはテナジーに遜色ないソフトなフィーリングを維持しています。

まとめ:ディグニクスシリーズとSpring Sponge Xの意義

ディグニクスシリーズの開発ストーリーは、卓球ラバー技術の歴史に新たな一頁を刻む物語です。9年間の歳月をかけて克服された技術的課題と、Spring Sponge Xという画期的スポンジ技術の登場によって、テナジーシリーズ以来の大進化が実現しました。ディグニクスはテナジーを凌駕する「より強い回転」「より速いスピード」「より安定したコントロール」を備え、プラスチックボール時代の卓球において選手の技術を最大限引き出す最高峰ラバーとなりました。その核心にあるSpring Sponge Xは、硬さと柔らかさという二律背反を打破し、ボールを捉える力と弾き出す力を両立させた点で画期的です。さらに、独自配合のシート技術によってハイテンションと粘着性の融合を果たし、シート耐久性も飛躍的に向上したことで、ラバーとしての総合力を高めています。

ディグニクスシリーズの登場は、世界の卓球界にも大きなインパクトを与えました。東京オリンピックでは多くのトップ選手がディグニクスを愛用し、その性能を実証しました。また、ティモ・ボル選手が長年のラバー使用をテナジーからディグニクス09Cへ移行したことは象徴的であり、彼の「これは素晴らしいラバーになる」という当初の期待が実を結んだと言えるでしょう。ディグニクスはテナジーを超える存在として現在も世界中で支持されており、新たな「世界標準ラバー」の地位を確立しつつあります。

Spring Sponge X開発ストーリーは、バタフライ社の技術者たちとトップ選手たちの協働による挑戦と創造の物語です。「今までにないものを」「選手により良いラバーを」という使命感のもと続けられた長年の研究開発が結実し、生まれたのがSpring Sponge Xとディグニクスシリーズです。その結果、卓球はよりダイナミックで魅力的なスポーツへと進化しました。ディグニクス技術革新の秘密――それは最新の材料科学とトップ選手の知見が融合した成果であり、今後の卓球用具開発にも大きな示唆を与えるものと言えるでしょう。

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