なぜ今、伝説のラバー「マークV」なのか?
卓球というスポーツの歴史を語る上で、決して避けては通れない一枚のラバーがあります。その名は「ヤサカ マークV」。1969年の発売以来、実に半世紀以上もの長きにわたり、世界中の卓球プレイヤーに愛され、数え切れないほどの栄光を支えてきました。その鮮やかな赤と黒のパッケージは、多くのプレイヤーにとって卓球の原体験と深く結びついていることでしょう。
しかし、現代の卓球界は「テンションラバー」が主流です。ラバー自体が持つ高い反発力(テンション)によって、以前とは比較にならないほどのスピードとスピンが生まれる時代。用具の進化は、卓球という競技そのものを、よりスピーディーでダイナミックなものへと変貌させました。
このような時代において、一つの疑問が浮かび上がります。なぜ、50年以上前に開発された「高弾性ラバー」であるマークVが、今なお多くのプレイヤーに選ばれ、卓球界の「レジェンド」として、あるいは「生きた化石」としてではなく、現役の選択肢として君臨し続けているのでしょうか。
それは、マークVが単なる「古いラバー」ではないからです。マークVには、時代の潮流に左右されない不変の価値、そして現代のプレイヤーが忘れかけているかもしれない、卓球というスポーツの本質的な喜びを再発見させてくれる力が秘められています。本記事では、この伝説のラバーが持つロングセラーの秘密を、歴史的背景、性能特性、そして使用者からの声など、あらゆる角度から徹底的に解剖します。さらに、あなたのプレースタイルやレベルに最適な一枚を見つけるための「マークVシリーズ完全ガイド」として、その奥深い世界へとご案内します。
マークVとは?― 卓球の歴史を変えた「チャンピオンラバー」
マークVの価値を理解するためには、まずその誕生の背景と、卓球界に与えたインパクトを知る必要があります。それは、単なる一つの製品の登場ではなく、卓球という競技の技術体系そのものを根底から変えた「事件」でした。
歴史と功績:卓球の近代化を牽引した革命児
1969年、日本の卓球メーカーであるヤサカは、世界で初めて「高弾性高摩擦裏ソフトラバー」としてマークVを世に送り出しました。それ以前のラバー(例えば、ヤサカが1953年に発売した日本初の裏ソフトラバー『オリジナル』)と比較して、マークVは天然ゴムと合成ゴムの配合技術により、弾性と回転性能を飛躍的に向上させた画期的な製品でした。
その性能はあまりにも衝撃的で、発売当初、日本のトップ選手たちからは「弾みすぎてコントロールできない」と敬遠されるほどでした。当時の選手たちは、ボールをコントロールすることに主眼を置いたプレースタイルに慣れていたため、マークVが持つ未知のパワーを持て余してしまったのです。
しかし、この新しい武器の可能性にいち早く気づいたのは、ヨーロッパの選手たちでした。特にスウェーデンの選手たちは果敢にマークVに挑戦し、その高い弾性を活かした新しい技術、すなわち「ループドライブ」を開発・進化させていきました。ボールに強烈なトップスピンをかけ、山なりの軌道で相手コートに深く突き刺さるこの技術は、卓球の攻撃スタイルを根底から変えました。マークVの登場は、守備主戦から攻撃主戦へ、そしてラリーの主導権を握るためのドライブ打法の時代へと、卓球を近代化させる引き金となったのです。
やがてその性能は世界中で認められ、ガシアン(フランス)をはじめとする数多くの世界チャンピオンや五輪メダリストを支えました。その輝かしい功績から、マークVはいつしか「チャンピオンラバー」という異名で呼ばれるようになり、卓球史にその名を刻み込んだのです。
現代における位置づけ:基準となる「ものさし」
テンションラバーが市場を席巻する現代において、マークVの立ち位置は変化しました。かつての「最先端の攻撃兵器」から、現代では「卓球の基本を教えてくれる教科書」あるいは「用具性能の基準となるものさし」として再評価されています。
多くのテンションラバーが「スピード性能〇〇%アップ(マークV比)」といった形で性能をアピールすることからも、マークVが依然として業界の性能基準点(ベンチマーク)であることがわかります。その理由は、マークVが持つ「素直さ」にあります。自分のスイングやインパクトの強弱が、良くも悪くも正直にボールに反映されるため、プレイヤーは自身の技術レベルや調子を客観的に把握することができます。
「最近、テンションラバーでオーバーミスが多い」「自分の力で打っている感覚が薄い」と感じる中級者・上級者が、基本に立ち返るためにマークVを選ぶケースは後を絶ちません。また、これから卓球を始める初心者にとっては、ボールを「掴む」感覚や、自らの力で回転を「かける」感覚を養うための最高のパートナーとなります。このように、マークVは時代と共にその役割を変えながらも、初心者から世界のトップレベルまで、あらゆる層のプレイヤーにとって普遍的な価値を提供し続けているのです。
【本記事の核心】なぜマークVは50年以上も愛され続けるのか?ロングセラーの5つの秘密
マークVが単なるノスタルジーの対象ではなく、現代においても実用的な選択肢として生き続けている理由は、その設計思想に根差す普遍的な強みにあります。ここでは、半世紀を超えるロングセラーを支える5つの核心的な秘密を深く掘り下げていきます。
秘密1:奇跡的な「黄金バランス」
マークVが持つ最大の特性であり、ロングセラーの根幹をなすのが、スピード・スピン・コントロールというラバーに求められる3大要素の「奇跡的なバランス」です。ヤサカの公式性能値では、これら3つの要素がすべて「10」とされており、性能チャートを描くと最も美しい正三角形を描くとされています。これは、特定の性能に突出するのではなく、あらゆる性能が極めて高いレベルで調和していることを示しています。
この「黄金バランス」がもたらす最大の恩恵は、その圧倒的な「万能性」です。ドライブ、スマッシュ、ブロック、ツッツキ、ストップ、サービス…卓球で要求されるあらゆる技術を、高い水準でそつなくこなすことができます。例えば、スピードに特化したラバーはブロックが難しくなったり、スピンに特化したラバーは相手の回転の影響を受けやすくなったりと、一長一短であることが多い中、マークVはどんな状況でもプレイヤーの意図に応えようとしてくれます。
この万能性により、世代や戦型を問わず、あらゆるプレイヤーが安心して使用できるのです。自分のプレースタイルがまだ確立していない初心者から、攻守のバランスを重視するオールラウンダー、そして相手によって戦術を変える技巧派の選手まで、マークVは誰の手にも馴染む懐の深さを持っています。この「何でもできる」という安心感が、プレイヤーに精神的な余裕を与え、プレーの質を向上させるのです。
秘密2:絶対的な「安定感」と「コントロール性能」
現代のテンションラバーに慣れたプレイヤーがマークVを初めて使うと、まず「弾まない」と感じるかもしれません。しかし、それはネガティブな特性ではなく、マークVが持つ最大の美点の一つ、「自分の力でボールを飛ばす」感覚の現れです。テンションラバーが持つ、意図しない場面での過剰な飛び出し(オーバーミス)がマークVにはありません。インパクトの強さに応じて、ボールは素直に飛んでいきます。強く打てば速く、弱く触れば短く。このリニアな反応性が、驚異的なコントロール性能を生み出します。
この特性が最も活かされるのが、ブロックやカウンター、レシーブといった守備的な、あるいは守備から攻撃へ転じる際の技術です。相手の強烈なドライブに対して、マークVはボールの威力を吸収し、自分の意図したコースへと確実にボールを運ぶことができます。多くのユーザーレビューで「ブロックが楽しくなる」「狙った場所にピンポイントで決まる」といった声が挙がるのは、この絶対的な安定感があるからです。
「なんですか?この安定感は!楽しくなる。」
「テンションラバーで特殊素材ラケットだと、なんか振りぬくとオーバーするな、とんでっちゃうな、という悩みが長らく続いていた。ふと、昔愛用していたマークVを貼ってみたところ、ことのほか、悪くない。結論、振りぬいてもドライブは入るし、レシーブは安定して返せる。」
試合において、ミスを減らすことは勝利への絶対条件です。特に、相手の攻撃を凌ぎ、ラリーの主導権を奪い返す局面での安定性は、勝敗を分ける重要な要素となります。マークVが提供するこの「何があっても台には収まる」という絶大な信頼感は、プレイヤーに自信を与え、より大胆かつ緻密な戦術の実行を可能にするのです。
秘密3:基本技術を習得するための「最高の教科書」
マークVは、しばしば「卓球の教科書」と形容されます。それは、このラバーが正しい技術を習得するための最適なフィードバックを提供してくれるからです。マークVのトップシートはグリップ力に優れ、ボールをしっかりと「掴む」感覚をプレイヤーに教えてくれます。この「掴む」感覚こそ、ボールに回転をかける上で最も重要な要素です。
テンションラバーの中には、ラバー自体の性能が高すぎるため、ラケットの面に当てるだけでボールが勝手に回転して飛んでいってしまうものもあります。これでは、プレイヤーは「自分で回転をかけた」という本質的な感覚を養うことができません。一方、マークVは、正しいスイング軌道とインパクトでボールを擦ったときにはしっかりと回転がかかり、手打ちになったり当てただけになったりすると回転量の少ない棒ダマになる、という非常に正直な反応を返します。
つまり、良い打球と悪い打球の結果が明確に現れるため、プレイヤーは自分のフォームのどこが良くてどこが悪いのかを、打球を通じて学ぶことができるのです。ドライブの練習を始めたばかりの初心者が、回転をかける感覚を掴むのにこれほど適したラバーはありません。この「教科書」としての役割が、全国の卓球スクールや部活動で、指導者が初心者にマークVを推奨する大きな理由となっています。
秘密4:テンションラバーにはない独自の「球質」
マークVの弱点として挙げられる「スピードが出にくい」という点は、見方を変えれば、現代卓球において強力な武器となり得ます。絶対的なスピードで相手を打ち抜くことが難しい代わりに、マークVはテンションラバーにはない独自の「球質」を生み出すことができるのです。
特にその真価が発揮されるのが、ラケットに「しなり」のある木材合板(5枚合板や7枚合板など)と組み合わせた時です。ラケットがしなることでボールとの接触時間(dwell time)が長くなり、マークVの優れたグリップ力と相まって、ボールに強烈な摩擦を加えることができます。これにより生まれるのが、「ねっとりとした重いドライブ」です。
現代のテンションラバーが生み出すドライブは、高い弧線を描き、バウンド後も高く跳ね上がる傾向にあります。多くのプレイヤーは、この球質に対応することに慣れています。しかし、マークVと木材ラケットの組み合わせから放たれるドライブは、比較的低い弾道で相手コートに到達し、着地してから「グッ」と沈み込むように低く伸びていきます。この慣れない球質は、相手の打球点を狂わせ、タイミングを外して空振りを誘ったり、詰まらせてミスを誘発したりします。「嫌な球」という印象を相手に与え、リズムを崩すことができるのです。
パワーで圧倒するのではなく、球質とコースのコンビネーションで相手を崩す。これは、卓球の奥深い戦術性を体現するプレースタイルであり、マークVはその実現を可能にする数少ないラバーの一つと言えるでしょう。
秘密5:信頼の「日本製」と優れた「コストパフォーマンス」
最後の秘密は、製品としての信頼性と経済性です。マークVは発売当初から一貫して「Made in Japan」。半世紀以上にわたって培われてきた製造技術と厳格な品質管理は、製品の個体差が少なく、常に安定した性能を発揮するという絶大な信頼につながっています。いつ、どこで買っても、同じ「マークV」の性能が手に入るという安心感は、用具を頻繁に変えたくないプレイヤーにとって非常に重要です。
加えて、その優れたコストパフォーマンスも大きな魅力です。近年、高性能なテンションラバーは価格が高騰し、一枚5,000円以上、中には10,000円に迫る製品も珍しくありません。その中で、マークVは定価3,520円(税込)、実売価格では2,000円台半ばから購入可能です。これは、特に消耗が激しく定期的な交換が必要な学生プレイヤーや、趣味で卓球を楽しむ一般プレイヤーにとって、非常に大きなメリットです。
「安価だから性能が低い」のではなく、「最高の基本性能を持つラバーが、手頃な価格で手に入る」。この卓越したコストパフォーマンスが、マークVを卓球市場における揺るぎない定番商品たらしめているのです。
あなたに合う一枚はこれだ!マークVシリーズ徹底比較ガイド
ヤサカは、元祖マークVの持つ卓越した基本性能を核としながら、時代の変化やプレイヤーの多様なニーズに応えるため、スポンジの硬度やトップシートの特性を調整した豊富なバリエーションを展開しています。ここでは、各モデルの特徴を徹底的に比較し、あなたのレベルやプレースタイルに最適な「マイ・マークV」を見つけるための手助けをします。
比較表:マークVシリーズ性能一覧
まずは、主要なマークVシリーズの性能を一覧で確認しましょう。数値はヤサカ公式の性能値を基にしており、元祖マークVを「10」とした場合の相対的な評価です。スポンジ硬度は、数値が小さいほど柔らかくなります。
モデル名 | スポンジ硬度 | スピード | スピン | コントロール | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
マークV | 40~45° | 10 | 10 | 10 | 全ての基準となる元祖。究極のバランス型。 |
マークV AD | 35~40° | 10- | 10+ | 10+ | ソフトスポンジで安定性・食い込み向上。 |
マークV 30° | 30~35° | 9 | 11 | 11 | シリーズ最軟。抜群のコントロールと食い込み。 |
マークV M2 | 45~50° | 11 | 10- | 9 | ハードスポンジでスピード強化。攻撃型向け。 |
マークV XS | 40~45° | 9+ | 11 | 10+ | 微粘着シートでスピン性能を極限まで強化。 |
マークV HPS | 40~45° | 12 | 10 | 10 | HPS搭載。元祖の打球感に反発力をプラス。 |
マークV HPS ソフト | 35~40° | 11+ | 10+ | 10+ | HPSのソフト版。扱いやすさと威力を両立。 |
シリーズ選択の基本方針
基本的に、マークVシリーズは元祖「マークV」と同じトップシートを使用しています(XS、HPSなどを除く)。性能の違いは主に「スポンジの硬さ」によって生まれます。
- 柔らかいスポンジ:ボールが食い込みやすく、コントロール性能と安定性が向上。回転もかけやすいが、強打時にパワーロスしやすい。
- 硬いスポンジ:ボールの弾きが良くなり、スピードが出やすい。パワーをボールに伝えやすいが、コントロールは難しくなる。
この原則を頭に入れて、各モデルの詳細を見ていきましょう。
【基準となる元祖】マークV
特徴
全てのマークVシリーズの原点にして、完成形。スピード、スピン、コントロールの「黄金バランス」を体現したモデルです。攻守にわたって高いパフォーマンスを発揮し、プレイヤーの技術を素直に反映します。癖がなく、どんな戦型にもフィットする万能性が最大の武器です。
おすすめプレイヤー
- これから卓球を始め、正しい基本技術を身につけたい初心者。
- 攻守のバランスを重視するオールラウンドスタイルの選手。
- 使用する用具に迷ったとき、まず基準として試してみたい全てのプレイヤー。
【安定性・コントロール重視派へ】ソフトスポンジ系
マークV AD
特徴: 元祖マークVのトップシートはそのままに、スポンジを柔らかく(硬度35~40°)することで、ボールの食い込みを向上させたモデルです。ボールがラバーに深く食い込むため、コントロール性能が格段にアップし、安定したラリーが可能になります。スピン性能も若干向上しており、回転をかけやすいのも特徴です。
おすすめプレイヤー:
- 卓球を始めたばかりで、まずは安定してボールを台に入れることを目標としたい小学生や女性プレイヤー。
- 強打よりも、安定したラリーとコース取りで試合を組み立てたい選手。
- テンションラバーの飛びすぎに悩んでいる中級者。
マークV 30°
特徴: マークV ADよりもさらに柔らかい、シリーズで最もソフトなスポンジ(硬度30~35°)を採用したモデル。その抜群の食い込みは、非力なプレイヤーでもボールをしっかり掴んで回転をかけることを容易にします。コントロール性能はシリーズ最高レベルで、まさに「置くだけで入る」ような感覚を得られます。スピードは控えめですが、その分、究極の安定性を求めるプレイヤーにとっては最高の選択肢となります。
おすすめプレイヤー:
- 筋力がまだ発達していない、卓球入門期のジュニア選手。
- とにかくミスを減らし、安定性を最優先したいプレイヤー。
- カットマンのバック面など、守備技術に特化して使用したい選手。
【威力・攻撃力重視派へ】ハードスポンジ&スピン強化系
マークV M2
特徴: 元祖マークVとは対照的に、スポンジを硬く(硬度45~50°)することで、スピード性能を追求した攻撃的なモデルです。硬いスポンジがボールを強く弾き出すため、スマッシュやスピードドライブで威力を発揮します。自分のパワーをロスなくボールに伝えたい、ハードヒッター向けの仕様です。その分、コントロールはシビアになります。
おすすめプレイヤー:
- 十分なパワーとスイングスピードを持つ、中級者以上の攻撃型選手。
- マークVの打球感は好きだが、より速いボールで相手を圧倒したいプレイヤー。
マークV XS
特徴: トップシートに微粘着性を持たせるという、ユニークなアプローチでスピン性能を強化したモデルです。マークVの使いやすさをベースにしながら、ボールを薄く擦った際の回転量が大幅に向上。ループドライブやツッツキで、相手が持ち上げにくい強烈な下回転を生み出せます。粘着ラバー特有のクセは少ないため、初めて粘着系ラバーを試すプレイヤーにも適しています。
おすすめプレイヤー:
- ドライブの回転量で勝負したい選手。
- サービスやレシーブで、多彩な回転の変化をつけたい技巧派プレイヤー。
- 高弾性ラバーから粘着性ラバーへの移行を考えている選手。
【現代卓球への進化版】HPS(ハイブリッドパワースポンジ)搭載系
HPS(ハイブリッドパワースポンジ)は、ヤサカが開発した新しい技術です。従来のスポンジにテンション効果を内蔵させることで、マークVの優れた打球感を損なうことなく、反発力を高めることに成功しました。クラシックなフィーリングと現代的なスピードを両立させた、まさに「進化版マークV」と言えるシリーズです。
マークV HPS
特徴: 元祖マークVと同じ硬度(40~45°)のスポンジにHPS技術を搭載。これにより、スピード性能が「10」から「12」へと大幅に向上しています。打球感はオリジナルのマークVに近いため、違和感なく移行できるのが大きなメリット。現代のスピード卓球にも十分に対応できる威力を持ちながら、マークVならではの安定感も維持しています。
おすすめプレイヤー:
- 長年マークVを愛用してきたが、プラスチックボール時代になり、もう少し威力が欲しいと感じている中〜上級者。
- テンションラバーのスピードは魅力だが、コントロールの難しさに悩んでいる選手。
マークV HPS ソフト
特徴: HPS搭載スポンジを柔らかく(硬度35~40°)したモデル。マークV ADの安定感と、HPSの反発力を融合させた、非常にバランスの取れたラバーです。柔らかいスポンジがボールをしっかり掴むためコントロールしやすく、それでいてHPSの効果で十分な威力のボールを放つことができます。パワーに自信がないプレイヤーでも、楽にスピードボールを打てるのが魅力です。
おすすめプレイヤー:
- 威力と安定性の両方を高いレベルで求める、欲張りなオールラウンドプレイヤー。
- 女子選手やジュニア選手で、攻撃的なプレーを目指したいが、硬いラバーは扱いきれないと感じる場合。
マークVの性能を最大限に引き出すプレースタイルと用具の組み合わせ
マークVシリーズの中から自分に合う一枚を選んだら、次はそれをどう活かすかを考える段階です。ラバーの性能は、プレイヤーの戦術や組み合わせるラケットによって大きく変わります。ここでは、マークVのポテンシャルを100%引き出すための方法論を探ります。
長所と短所の再確認:光と影
まず、マークVの特性を戦略的な視点から整理しましょう。
- 長所(光):
- 圧倒的な安定性: あらゆる技術(特に守備系)においてミスが少なく、ラリーが継続する。
- 卓越したコントロール性能: 狙ったコースにボールを運びやすく、戦術の実行精度が高まる。
- 優れたフィードバック: ボールを掴む感覚が明確で、基本技術の習得と修正に最適。
- 独自の球質: 木材ラケットと組み合わせることで、相手が嫌がる重く低いドライブを生み出せる。
- 短所(影):
- 絶対的なスピード不足: 現代のトップテンションラバーと比較すると、一発で打ち抜く威力に欠ける。
- パワーへの依存: 威力を出すためには、ラバーの性能に頼るのではなく、プレイヤー自身のスイングスピードや体全体の力が必要。
この光と影を理解することが、マークVを使いこなす第一歩です。つまり、スピードで圧倒するのではなく、安定性とコントロール、そして独自の球質を武器に、いかにして相手を崩し、自分の得意な展開に持ち込むかを考える必要があります。
おすすめのプレースタイル:マークVで輝く戦術
上記の特性を踏まえると、マークVは以下のようなプレースタイルで特に輝きを放ちます。
1. 攻守バランス型のオールラウンダー
前陣から中陣に陣取り、安定したドライブやブロックでラリーを組み立て、チャンスボールを確実にスマッシュで決める。特定の技術に頼るのではなく、多彩な技術を駆使してコースの厳しさで勝負するスタイルです。マークVの万能性とコントロール性能が、この戦術の精度を極限まで高めてくれます。
2. カウンター・ブロック主戦型
相手の強打を待って、安定したブロックでコースを突き、相手を揺さぶります。そして、甘くなった返球を鋭いカウンターで狙い撃つ。相手の力を利用するこのスタイルにおいて、マークVのボール吸収能力とコントロール性能は不可欠な武器となります。自ら強打するリスクを冒さず、相手のミスを誘いながら得点を重ねる、クレバーな戦術です。
3. 粘り強い守備からの展開
基本は守備に徹し、相手の攻撃を粘り強く拾い続けます。そして、相手が根負けして甘いボールを送ってきたところを、前述した「重いドライブ」で反撃に転じる。派手さはありませんが、相手の精神力を削り、試合の主導権をじわじわと奪っていく、玄人好みのプレースタイルです。
最適なラケットの組み合わせ:相乗効果を生むペアリング
ラバーの性能は、組み合わせるラケット(ブレード)によって大きく変化します。マークVのポテンシャルを最大限に引き出すための、最適なラケットの組み合わせは以下の通りです。
最良のパートナー:木材合板ラケット(5枚または7枚)
マークVと最も相性が良いとされるのが、特殊素材(カーボンやアリレートカーボンなど)を含まない、純粋な木材のみで構成されたラケットです。木材ラケットは、ボールを打った際に適度な「しなり」を生み出します。このしなりがボールとの接触時間を長くし、マークVの優れたグリップ力と相まって、ボールを深く掴む感覚を増幅させます。これにより、回転をかけやすく、コントロールも安定し、マークV特有の「重いドライブ」も打ちやすくなります。
「元々弾まないラバーであるため、しなるラケットと組み合わせることで、“ねっとりとした球質”の重いドライブが打てるようになります。」
注意が必要な組み合わせ:高反発な特殊素材ラケット
弾みが非常に強い特殊素材ラケットとマークVを組み合わせることも可能ですが、注意が必要です。ラケットの反発力が強すぎると、ボールがラバーに食い込む前に飛び出していってしまい、マークVの最大の長所である「ボールを掴む感覚」や「コントロール性能」が損なわれてしまう可能性があります。もし上級者が威力不足を補う目的で特殊素材ラケットと組み合わせる場合は、その特性を十分に理解した上で、繊細なボールタッチが求められます。
結論として、これからマークVを試すのであれば、まずは木材5枚合板のような、標準的な弾みとコントロール性能を持つラケットと組み合わせることを強く推奨します。それが、マークVの真価を最も体感できる王道のセッティングと言えるでしょう。
まとめ:時代を超えて輝くマークVの価値
本記事を通じて、ヤサカ マークVが半世紀以上にわたり愛され続ける理由を多角的に探求してきました。マークVは、単なる「古いラバー」や「初心者向けのラバー」という言葉で片付けられる存在ではありません。それは、卓球というスポーツの根幹をなす「自らの意思でボールをコントロールする楽しさ」と「基本技術の重要性」を、いつの時代もプレイヤーに教え続けてくれる不朽の名作です。
その核心にあるのは、スピード・スピン・コントロールという相反する要素を奇跡的なレベルで調和させた「黄金バランス」。このバランスが、絶対的な安定感と、プレイヤーの技術を素直に反映する誠実なフィードバックを生み出します。
テンションラバーの高性能化が加速し、用具の力でプレーが左右されがちな現代において、マークVの価値はむしろ高まっていると言えるかもしれません。自分の力でボールを操る感覚、ラリーを組み立てる戦術の奥深さ、そしてミスなくプレーを継続する信頼性。これらは、流行に左右されない卓球の普遍的な魅力であり、マークVはそのすべてを体感させてくれます。
上達への道は、必ずしも最新・最強の用具を追い求めることだけではありません。時には立ち止まり、自分のプレースタイルや目指す卓球を見つめ直し、それに真に合った用具を選ぶことが、ブレークスルーのきっかけとなることもあります。マークVとその多彩なシリーズは、そのための最も信頼できる選択肢の一つとして、これからも世界中の卓球プレイヤーの傍らにあり続けることでしょう。
記事の執筆・監修:合同会社KUREBAについて
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